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王宮では50
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「お時間ありがとうございます」
敬われ、礼をされているのはアルフレッド。言葉も態度もそれを表している。しかし、そう単純ではない。目の前の人物には独特の何かがあるとアルフレッドは思わざるを得なかった。スカーレットが婚約者だった時には感じなくて良かった何かが。
身内ならば有り難いが、そうではなくなってしまった今はただただ厄介な人物としか言いようがない。訪問伺いには尤もらしいことが書いてあったが、本当のところどういう要件なのか…。
探る、尋ねる、誘導する、どれが正解で、どれならアルフレッドが出来ることなのか、そしてどこまでならばキャストール侯爵はそれを許し応えてくれるのだろうか。
相手は決まりきった挨拶しかしていない。だから先に進む切っ掛けはアルフレッドが作り、その様子から本当の訪問理由を窺わなければならないだろう。
「隣国の珍しい茶葉が手に入ったので、どうだろうか侯爵、味わってみては」
「ありがとうございます」
アルフレッドは視線で侍従に指示を出すと、再びキャストール侯爵を見た。表情を変えないところを見ると、茶は飲むということだ。即ちダニエルに関しての礼程度ではなく、話をするのだろう。しかし手紙には、忙しいアルフレッドに余計な移動時間を使わせない為に執務室を訪問したいと書いてあった。それはジョイスが居ても構わないということだ。
「殿下、もしお許しいただけるならばどのような茶葉か拝見しても」
「勿論だ」
アルフレッドはもう一人の侍従に今度は茶葉の入れ物を持ってくるよう伝えた。
何だろう、この一つ一つが試験のような緊張感は。合否は何によってきまるのか、その基準を先に知りたいとアルフレッドは思ってしまった。
直ぐに戻ってきた侍従はアルフレッドの指示に従い、茶葉の入った缶筒をトレイのまま侯爵の前に置くと再び扉横まで下がった。音を立てることもなく、王宮で働く者として十分な立ち居振る舞い。しかし、侯爵が侍従の動きを確認しに来たとは考え難い。もっと言ってしまうと、本当に茶葉を見たいと思ったのかもだ。
「ありがとうございます、殿下。では、拝見させていただきます」
侯爵はそう言うと流れるような所作で服の内ポケットからハンカチを取り出し手を拭き、缶筒に触れた。缶の装飾、次に蓋を開けて香を楽しむと、また元の状態に戻したのだった。しかし一点だけ違うことがあった。
缶筒の下に封筒が置いてあるのだ。
目の前にいるアルフレッドですらこうなのだ、扉横の侍従もこの部屋にいるジョイスもこの手紙の存在には気付けてはいないだろう。
何も言わずに置かれた手紙。答えは簡単だ。誰にも気付かれることなく、受け取れということ。
「殿下はこの茶筒のデザインをどう思われますか?」
しかも見事な助け舟を出してくれた。侯爵に異国の茶を出すと事前には伝えていない。だから全てはその場で侯爵が行っていること。ここまでお膳立てしてくれたのは、この手紙が重要だからだ。
「キャストール侯爵、ダニエルの報告内容に質問があるのだが執務机の引き出しにしまってある。少しここで待っていてくれ」
「申し訳ございません。愚息な故、至らぬ点ばかりで」
「否、良くやってくれた」
そう言うとアルフレッドは執務机に戻り、引き出しから書類を数枚取り出した。そして何食わぬ顔で封筒から手紙を抜き取り、書類の一番上に置き目を通したのだった。
敬われ、礼をされているのはアルフレッド。言葉も態度もそれを表している。しかし、そう単純ではない。目の前の人物には独特の何かがあるとアルフレッドは思わざるを得なかった。スカーレットが婚約者だった時には感じなくて良かった何かが。
身内ならば有り難いが、そうではなくなってしまった今はただただ厄介な人物としか言いようがない。訪問伺いには尤もらしいことが書いてあったが、本当のところどういう要件なのか…。
探る、尋ねる、誘導する、どれが正解で、どれならアルフレッドが出来ることなのか、そしてどこまでならばキャストール侯爵はそれを許し応えてくれるのだろうか。
相手は決まりきった挨拶しかしていない。だから先に進む切っ掛けはアルフレッドが作り、その様子から本当の訪問理由を窺わなければならないだろう。
「隣国の珍しい茶葉が手に入ったので、どうだろうか侯爵、味わってみては」
「ありがとうございます」
アルフレッドは視線で侍従に指示を出すと、再びキャストール侯爵を見た。表情を変えないところを見ると、茶は飲むということだ。即ちダニエルに関しての礼程度ではなく、話をするのだろう。しかし手紙には、忙しいアルフレッドに余計な移動時間を使わせない為に執務室を訪問したいと書いてあった。それはジョイスが居ても構わないということだ。
「殿下、もしお許しいただけるならばどのような茶葉か拝見しても」
「勿論だ」
アルフレッドはもう一人の侍従に今度は茶葉の入れ物を持ってくるよう伝えた。
何だろう、この一つ一つが試験のような緊張感は。合否は何によってきまるのか、その基準を先に知りたいとアルフレッドは思ってしまった。
直ぐに戻ってきた侍従はアルフレッドの指示に従い、茶葉の入った缶筒をトレイのまま侯爵の前に置くと再び扉横まで下がった。音を立てることもなく、王宮で働く者として十分な立ち居振る舞い。しかし、侯爵が侍従の動きを確認しに来たとは考え難い。もっと言ってしまうと、本当に茶葉を見たいと思ったのかもだ。
「ありがとうございます、殿下。では、拝見させていただきます」
侯爵はそう言うと流れるような所作で服の内ポケットからハンカチを取り出し手を拭き、缶筒に触れた。缶の装飾、次に蓋を開けて香を楽しむと、また元の状態に戻したのだった。しかし一点だけ違うことがあった。
缶筒の下に封筒が置いてあるのだ。
目の前にいるアルフレッドですらこうなのだ、扉横の侍従もこの部屋にいるジョイスもこの手紙の存在には気付けてはいないだろう。
何も言わずに置かれた手紙。答えは簡単だ。誰にも気付かれることなく、受け取れということ。
「殿下はこの茶筒のデザインをどう思われますか?」
しかも見事な助け舟を出してくれた。侯爵に異国の茶を出すと事前には伝えていない。だから全てはその場で侯爵が行っていること。ここまでお膳立てしてくれたのは、この手紙が重要だからだ。
「キャストール侯爵、ダニエルの報告内容に質問があるのだが執務机の引き出しにしまってある。少しここで待っていてくれ」
「申し訳ございません。愚息な故、至らぬ点ばかりで」
「否、良くやってくれた」
そう言うとアルフレッドは執務机に戻り、引き出しから書類を数枚取り出した。そして何食わぬ顔で封筒から手紙を抜き取り、書類の一番上に置き目を通したのだった。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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