407 / 586
222
しおりを挟む
ナーサはやはり侯爵家の、しかも未来の王子妃になるスカーレットの侍女だった。やる時はやる、出来る侍女だったのだ。絵心があるのも、スカーレットをどう着飾るか思い付いたアイデアを残しておく為。勿論薫は髪型の絵しか見ていないから気付かなくて当然だが、動物の絵などは全く描けない。そう、ナーサは髪型、ドレスやワンピース姿、花の飾り方のみを上手に描くことが出来る侍女だったのだ。
更にイメージしたことを形にすることにも長けていた。
なんと何の資料もなく、ただ薫のイケていない絵からナーサは見事にサブリナを変身させたのだ。その見事な腕前に、薫は前世の変身番組を思い出さずにはいられなかった。
「どうでしょう?」
「いいわ、ナーサ!サビィがまるで妖精のよう。背中に羽を付けたいくらい」
「首元がすっきり見えるので、これからは服装も今までとは替えるといいかもしれませんね」
「ありがとう、ナーサ。そうね、伯爵家から持ってきた服は全部解いて生地やレースに戻して売るか、作り直すかにしてしまうわ」
薫に夫婦間のことまでは分からないが、きっとジャスティンが触れたであろう髪。そして伯爵家で用意された服。サブリナはこうして一つ一つ決別していくのだろう。
「そうだ、ナーサ。この間わたしに着せてくれたような服をサビィに着せてみてはどうかしら。ブラウスの襟ぐりが深めだったから、似合うと思う。それで、髪には幅の広い布で襟足から覆って、頭の頂点から少し右か左にずらしたところでリボン結びにするの。どう思う?」
「良いと思います!ツェルカさんがいる今のうちにサラと二人で作ってみます」
「だったら尚更、わたしの持ってきた服は全部使ってちょうだい。ナーサ達が思うように好きに使って。それであなた達の分も作って」
薫はふと思った。ちょっとした前世の服のアイデアをナーサに伝えることで、それは素晴らしいデザイン画になる。そして、ツェルカがいる今ならば型紙を起こしてもらい、服として仕上がっていく。前リッジウェイ子爵夫妻がファルコールを訪れる前までに、下着を含め色々試してみる価値はあると。
「折角だからツェルカとサラも加えて服作りの話をしましょう。わたしも持ってきたけど着そうにない服が沢山あるから、これを機に再利用してもらいたいわ」
「でも、キャロルの服は…」
「仕舞っているだけだもの。それでは服としての意味がない」
ナーサは渋々頷いたが、その理由は勿論分かる。どれも王都の服飾デザイナーの作品で、皆が未来の王子妃に着てもらおうと作成したものだ。しかしファルコールでは着る機会が全くないものが多いのも事実。それだったら生まれ変わって、日の目を見るほうがいいだろう。なにせ生地もレースも使われているものは超一流なのだ。
「それと今夜は食事にデズとリアムを呼びましょう。あの二人にサビィの髪型の感想を聞かないと。女性と男性では感覚が違うから」
「別にいいわよ、そんなことをしなくても」
「駄目よ。だって、サビィはこれから活発になるんでしょ。そこにはわたし同様恋も含まれるでしょうから。女性を間近で沢山見てきた二人の意見は重要だわ」
このファルコールの館にいる隣国から来た騎士達やスコット、そしてケビンとノーマンには申し訳ないが、女性に関してはやはりデズモンドだろうと薫は思ったのだった。
更にイメージしたことを形にすることにも長けていた。
なんと何の資料もなく、ただ薫のイケていない絵からナーサは見事にサブリナを変身させたのだ。その見事な腕前に、薫は前世の変身番組を思い出さずにはいられなかった。
「どうでしょう?」
「いいわ、ナーサ!サビィがまるで妖精のよう。背中に羽を付けたいくらい」
「首元がすっきり見えるので、これからは服装も今までとは替えるといいかもしれませんね」
「ありがとう、ナーサ。そうね、伯爵家から持ってきた服は全部解いて生地やレースに戻して売るか、作り直すかにしてしまうわ」
薫に夫婦間のことまでは分からないが、きっとジャスティンが触れたであろう髪。そして伯爵家で用意された服。サブリナはこうして一つ一つ決別していくのだろう。
「そうだ、ナーサ。この間わたしに着せてくれたような服をサビィに着せてみてはどうかしら。ブラウスの襟ぐりが深めだったから、似合うと思う。それで、髪には幅の広い布で襟足から覆って、頭の頂点から少し右か左にずらしたところでリボン結びにするの。どう思う?」
「良いと思います!ツェルカさんがいる今のうちにサラと二人で作ってみます」
「だったら尚更、わたしの持ってきた服は全部使ってちょうだい。ナーサ達が思うように好きに使って。それであなた達の分も作って」
薫はふと思った。ちょっとした前世の服のアイデアをナーサに伝えることで、それは素晴らしいデザイン画になる。そして、ツェルカがいる今ならば型紙を起こしてもらい、服として仕上がっていく。前リッジウェイ子爵夫妻がファルコールを訪れる前までに、下着を含め色々試してみる価値はあると。
「折角だからツェルカとサラも加えて服作りの話をしましょう。わたしも持ってきたけど着そうにない服が沢山あるから、これを機に再利用してもらいたいわ」
「でも、キャロルの服は…」
「仕舞っているだけだもの。それでは服としての意味がない」
ナーサは渋々頷いたが、その理由は勿論分かる。どれも王都の服飾デザイナーの作品で、皆が未来の王子妃に着てもらおうと作成したものだ。しかしファルコールでは着る機会が全くないものが多いのも事実。それだったら生まれ変わって、日の目を見るほうがいいだろう。なにせ生地もレースも使われているものは超一流なのだ。
「それと今夜は食事にデズとリアムを呼びましょう。あの二人にサビィの髪型の感想を聞かないと。女性と男性では感覚が違うから」
「別にいいわよ、そんなことをしなくても」
「駄目よ。だって、サビィはこれから活発になるんでしょ。そこにはわたし同様恋も含まれるでしょうから。女性を間近で沢山見てきた二人の意見は重要だわ」
このファルコールの館にいる隣国から来た騎士達やスコット、そしてケビンとノーマンには申し訳ないが、女性に関してはやはりデズモンドだろうと薫は思ったのだった。
39
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
「きみは強いからひとりでも平気だよね」と婚約破棄された令嬢、本当に強かったのでモンスターを倒して生きています
猫屋ちゃき
恋愛
侯爵令嬢イリメルは、ある日婚約者であるエーリクに「きみは強いからひとりでも平気だよね?」と婚約破棄される。彼は、平民のレーナとの真実の愛に目覚めてしまったのだという。
ショックを受けたイリメルは、強さとは何かについて考えた。そして悩んだ末、己の強さを確かめるためにモンスター討伐の旅に出ることにした。
旅の最中、イリメルはディータという剣士の青年と出会う。
彼の助けによってピンチを脱したことで、共に冒険をすることになるのだが、強さを求めるためのイリメルの旅は、やがて国家の、世界の存亡を賭けた問題へと直結していくのだった。
婚約破棄から始まる(?)パワー系令嬢の冒険と恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる