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王宮では46
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「アル、すまない。少し外させてくれ」
今までのジョイスならばこんなあからさまなことはしなかっただろう。退室したダニエルの後を追うと誰もが分かるようなことを。断りを入れられたアルフレッドだって驚いたはずだ。しかし、スカーレットを知りたいというジョイスの欲求は、それまでの姿を簡単に打ち崩した。
それどころか大切なものの為に、周囲の目など気にすることなくジョイスは動きだしていたのだ。王宮内だというのに、アルフレッドの執務室を出るや否やジョイスはダニエルを速足で追った。少しでも早くダニエルからスカーレットについて話を聞く為に。
「ダニエル、待ってくれ。少し時間をくれないか」
「ジョイス様、報告は全て致しましたが」
「ああ、分かっている。でも、どうしても知りたいことがあるんだ」
「知りたいことですか、ジョイス様が?」
ダニエルが訝しむのは尤もだ。何故ならダニエルがアルフレッドにすべき報告は全て終わっている。そうでなければ、アルフレッドの執務室を去ることなど出来ようがない。それなのに、ジョイスがわざわざ追って来て、更に何かを知りたいと言っているのだから。
「中庭のベンチで話したい。時間を貰えないだろうか」
「…分かりました」
立ち話ではなく座ってゆっくり話したいというジョイスの意を汲み取ったようで、渋々ながらダニエルは頷いてくれた。
中庭に着くまで、二人は無言で歩き続けた。友達でもなければ、仕事の同僚でもない。スカーレットを軸に嘗ての幼馴染と弟という二人なのだから、これと言って話すことがないのは当然だろう。しかし、その軸の周囲に二人はいるのだ、何かの力が働けばこうして引き寄せられることもある。
中庭に到着すると、ジョイスは中央にあるベンチへ向かった。どのベンチも空いていたが、敢えて誰の視界にも入り易い中央のものを選んだのだった。それはダニエルに警戒されない為。外れや人目に付きにくいベンチを選んでは、変な圧を与えかねないと思ったのだ。
それに、人目に付き易いということは、こちらからも良く見えるということ。変に近付く誰かがいれば、立ち聞きしていますと言っているようなものだ。他者に聞かれたくない話をしようとしているジョイスとしては最善の選択だった。
「先ずは礼を言いたい。時間を割いてくれてありがとう。そして断っておく、俺個人として知りたいことがあるからダニエルと話したいんだ」
「ジョイス様が個人的にですか?」
「それと、あと少ししたら俺はここを去るんだが、その後はキャストール侯爵家の私兵としてファルコールへ向かう予定だ。立場的には俺がダニエル様と、そして君が俺のことをジョイスと呼ぶべきではないかと思う」
「急にそう言われましても、無理です。ジョイス様はジョイス様ですから。それにわたしのことも今まで通りダニエルで構いません。それより、今の話、父が許可したのでしょうか」
「閣下は俺を許してはいないと思う。でも未来への可能性を閉じることまではしなかったのだろう。正直、許可なのか情けなのか、それとも俺の父からの申し出に断り切れなかったのかは分からない」
「すみません、話が良く見えないのですが。詳しく説明してもらえませんか」
ジョイスはファルコールでスカーレットに助けられたことに始まり、時系列に沿って全てをダニエルに話した。更には、幼い頃にスカーレットが好きだったことも。そして話が見えないとダニエルがジョイスに説明を求めたこと同様、ジョイスもアルフレッドの執務室でダニエルが話した内容に不明点がありそこをどうしても知りたかったと伝えたのだった。
今までのジョイスならばこんなあからさまなことはしなかっただろう。退室したダニエルの後を追うと誰もが分かるようなことを。断りを入れられたアルフレッドだって驚いたはずだ。しかし、スカーレットを知りたいというジョイスの欲求は、それまでの姿を簡単に打ち崩した。
それどころか大切なものの為に、周囲の目など気にすることなくジョイスは動きだしていたのだ。王宮内だというのに、アルフレッドの執務室を出るや否やジョイスはダニエルを速足で追った。少しでも早くダニエルからスカーレットについて話を聞く為に。
「ダニエル、待ってくれ。少し時間をくれないか」
「ジョイス様、報告は全て致しましたが」
「ああ、分かっている。でも、どうしても知りたいことがあるんだ」
「知りたいことですか、ジョイス様が?」
ダニエルが訝しむのは尤もだ。何故ならダニエルがアルフレッドにすべき報告は全て終わっている。そうでなければ、アルフレッドの執務室を去ることなど出来ようがない。それなのに、ジョイスがわざわざ追って来て、更に何かを知りたいと言っているのだから。
「中庭のベンチで話したい。時間を貰えないだろうか」
「…分かりました」
立ち話ではなく座ってゆっくり話したいというジョイスの意を汲み取ったようで、渋々ながらダニエルは頷いてくれた。
中庭に着くまで、二人は無言で歩き続けた。友達でもなければ、仕事の同僚でもない。スカーレットを軸に嘗ての幼馴染と弟という二人なのだから、これと言って話すことがないのは当然だろう。しかし、その軸の周囲に二人はいるのだ、何かの力が働けばこうして引き寄せられることもある。
中庭に到着すると、ジョイスは中央にあるベンチへ向かった。どのベンチも空いていたが、敢えて誰の視界にも入り易い中央のものを選んだのだった。それはダニエルに警戒されない為。外れや人目に付きにくいベンチを選んでは、変な圧を与えかねないと思ったのだ。
それに、人目に付き易いということは、こちらからも良く見えるということ。変に近付く誰かがいれば、立ち聞きしていますと言っているようなものだ。他者に聞かれたくない話をしようとしているジョイスとしては最善の選択だった。
「先ずは礼を言いたい。時間を割いてくれてありがとう。そして断っておく、俺個人として知りたいことがあるからダニエルと話したいんだ」
「ジョイス様が個人的にですか?」
「それと、あと少ししたら俺はここを去るんだが、その後はキャストール侯爵家の私兵としてファルコールへ向かう予定だ。立場的には俺がダニエル様と、そして君が俺のことをジョイスと呼ぶべきではないかと思う」
「急にそう言われましても、無理です。ジョイス様はジョイス様ですから。それにわたしのことも今まで通りダニエルで構いません。それより、今の話、父が許可したのでしょうか」
「閣下は俺を許してはいないと思う。でも未来への可能性を閉じることまではしなかったのだろう。正直、許可なのか情けなのか、それとも俺の父からの申し出に断り切れなかったのかは分からない」
「すみません、話が良く見えないのですが。詳しく説明してもらえませんか」
ジョイスはファルコールでスカーレットに助けられたことに始まり、時系列に沿って全てをダニエルに話した。更には、幼い頃にスカーレットが好きだったことも。そして話が見えないとダニエルがジョイスに説明を求めたこと同様、ジョイスもアルフレッドの執務室でダニエルが話した内容に不明点がありそこをどうしても知りたかったと伝えたのだった。
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