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王都オランデール伯爵家21
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ジャスティンは他者からみれば都合の良いだけの、稚拙などうしようもない筋書きを思い描いていた。貧しい男爵家のアイリスを事実上の妻にするという。サブリナとアイリスを引き合わせていたのもその為だ。
顔を合わせることで、アイリスはサブリナの優しさを、サブリナは控えめで気遣いが出来るアイリスの為人を知っていく。勿論、双方にそれぞれの良さをジャスティンは囁き続けた。そして、時折アイリスにはサブリナが子を生せないことを気に病んでいると、サブリナには貧しい男爵家なのでアイリスは結婚を諦めているようだと呟やきもした。
そうすることで、ジャスティンはいつかやって来る重要な瞬間に備えていたのだ。
その重要な瞬間とは…。そう、ジャスティンが二人に伯爵家の後継問題を相談するその時だ。
ジャスティンの筋書きでは、賢いサブリナは伯爵家の嫁として最善の選択をすることになっていた。サブリナを心から愛し大切にしてくれるジャスティンに、子を産む以外で貢献するという。肝心な後継を生すという仕事が出来ないのだ、それ以外の全てはサブリナが自ら進んで行うはずだった。既にその基盤は出来上がり、サブリナはジャスティンの為にと様々なことを寝る間も惜しんで、否、現状を深く考えることが出来ないよう寝る時間をあまり与えないよう働かせ続けた。
困ったことに、サブリナは賢い。だから母親にも伯爵家の仕事を全て回すよう依頼した。言い訳は簡単だった、子を生さないサブリナが伯爵家を追いだされないよう協力して欲しいと言えばいいのだから。そして最初の内はわざと間違えるよう仕向け続けた。母もメイド長も間違った書類を手渡していたのだ。
『事前に精査しないとは、あなたの仕事の姿勢はどうなっているの』
『奥様、ここは伯爵家です。子爵家と同じように考えないで下さい』
本来は最後に内容を確かめサインをすればいいような書類まで、サブリナは資料集めから何から何まで一人で行うこととなった。いつか伯爵家の家政を担う者として、現伯爵夫人とメイド長からの信頼を得る為に。
姑と女性使用人達の長と接することで疲弊するサブリナ。そんなサブリナにジャスティンは愛を囁き続けた。邸の中ではとにかくサブリナを甘やかし、邸という世界の中でサブリナの唯一になったのだ。そしてその姿は、伯爵家の者達へサブリナがどんなに出来が悪くてもジャスティンは愛しているのだという印象を植え付けることにも繋がった。また、事前に理由を伝えてあってもオリアナはサブリナを妬み、同じ子爵家出身のメイド長は厳しい態度を取るというジャスティンには都合の良い方へばかりことは進んだのだ。
様々な要因が絡み合い、最近ではジャスティンに尽くすというサブリナ像はほぼ出来上がっていた。そして気遣いが出来るアイリスもサブリナが何を悩み気分が沈みがちなのかよく理解していた。だから、サブリナの為に代わりに子を産んで欲しいとジャスティンが願えば、どうせ結婚しないならとアイリスが自らを犠牲にしても良いと思う未来も近かったはずだ。
それが…今まで掛けた時間が…、離縁申請が受理されたなど全て水の泡ではないか。それに長い時間を掛けてきたのだ、サブリナから仕事の報告は受けているものの適当に聞き流してきたジャスティンには同様のことを行う自信がなかった。それは母とて同じだろう。数か月離れるだけでも仕事自体の状況や条件が変わる上、自分自身の勘も鈍る。
ジャスティンは今からでも受理された書類の差し止め、若しくは差し戻しが出来ないものかと考えた。誰か知り合いに貴族院内で力を持つ者はいないのかを。
顔を合わせることで、アイリスはサブリナの優しさを、サブリナは控えめで気遣いが出来るアイリスの為人を知っていく。勿論、双方にそれぞれの良さをジャスティンは囁き続けた。そして、時折アイリスにはサブリナが子を生せないことを気に病んでいると、サブリナには貧しい男爵家なのでアイリスは結婚を諦めているようだと呟やきもした。
そうすることで、ジャスティンはいつかやって来る重要な瞬間に備えていたのだ。
その重要な瞬間とは…。そう、ジャスティンが二人に伯爵家の後継問題を相談するその時だ。
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困ったことに、サブリナは賢い。だから母親にも伯爵家の仕事を全て回すよう依頼した。言い訳は簡単だった、子を生さないサブリナが伯爵家を追いだされないよう協力して欲しいと言えばいいのだから。そして最初の内はわざと間違えるよう仕向け続けた。母もメイド長も間違った書類を手渡していたのだ。
『事前に精査しないとは、あなたの仕事の姿勢はどうなっているの』
『奥様、ここは伯爵家です。子爵家と同じように考えないで下さい』
本来は最後に内容を確かめサインをすればいいような書類まで、サブリナは資料集めから何から何まで一人で行うこととなった。いつか伯爵家の家政を担う者として、現伯爵夫人とメイド長からの信頼を得る為に。
姑と女性使用人達の長と接することで疲弊するサブリナ。そんなサブリナにジャスティンは愛を囁き続けた。邸の中ではとにかくサブリナを甘やかし、邸という世界の中でサブリナの唯一になったのだ。そしてその姿は、伯爵家の者達へサブリナがどんなに出来が悪くてもジャスティンは愛しているのだという印象を植え付けることにも繋がった。また、事前に理由を伝えてあってもオリアナはサブリナを妬み、同じ子爵家出身のメイド長は厳しい態度を取るというジャスティンには都合の良い方へばかりことは進んだのだ。
様々な要因が絡み合い、最近ではジャスティンに尽くすというサブリナ像はほぼ出来上がっていた。そして気遣いが出来るアイリスもサブリナが何を悩み気分が沈みがちなのかよく理解していた。だから、サブリナの為に代わりに子を産んで欲しいとジャスティンが願えば、どうせ結婚しないならとアイリスが自らを犠牲にしても良いと思う未来も近かったはずだ。
それが…今まで掛けた時間が…、離縁申請が受理されたなど全て水の泡ではないか。それに長い時間を掛けてきたのだ、サブリナから仕事の報告は受けているものの適当に聞き流してきたジャスティンには同様のことを行う自信がなかった。それは母とて同じだろう。数か月離れるだけでも仕事自体の状況や条件が変わる上、自分自身の勘も鈍る。
ジャスティンは今からでも受理された書類の差し止め、若しくは差し戻しが出来ないものかと考えた。誰か知り合いに貴族院内で力を持つ者はいないのかを。
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