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王都リプセット公爵家別邸1 エラルリーナとイシュタルの茶会:ジョイスの勝算を考える
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「本当に残念なところが似てしまって…。ジェストは最近どう?」
「はい、ジェスト様は、その…」
「気にしないで、イシュタル、本当のことを話してちょうだい」
「お義父様やジョイス様のお話を伺うと、旦那様は良い方ではないかと…」
「まあ似たり寄ったりということね」
リプセット公爵家の敷地は広い。大きな本邸に、二つの別邸。そしてそれぞれに庭園が設けられているだけではなく、菜園、厩舎、私設騎士団用の施設まである。
その二つある別邸の一つを使用しているのが次期リプセット公爵となるジェストとその妻イシュタル。そしてこの日はリプセット公爵夫人のエラルリーナと嫁であるイシュタルの茶会だった。
「それで体調はどう?」
「はい、食欲もありますし、散歩も問題なく出来ています」
「初産は時間が掛かると言われているから、しっかり体力をつけるようにね」
イシュタルは秋口に第一子の出産を控えている。最近では夫のジェストが生まれてくる子供の為にと、イシュタルに贈り物をするのだが…。
年頃の女性に馬を贈ると言った父親に、その考えが素晴らしいと思う息子の血族だけあってジェストの贈り物センスも微妙なものだった。
「そうそう、ジョイスがまともなことを言っていたわ。ファルコールには品質の良い羊毛があるから、それでブーティを作ってもらいあなたに贈るそうよ。あの子ったら、可愛いものを注文するって言っていたわ。問題はその可愛いね。あの子のセンスでいう可愛いってどんなかしら?」
「まあ、お義母様、きっと本当に可愛い素敵なものが届くのではないでしょうか。注文する時までに、ジョイス様がスカーレット様に相談が出来るようになっていれば。そしてジョイス様はそうなるべく努力するでしょうから」
「どうかしら…。あの子、女性との接し方も贈り物センス同様酷いから。失敗を糧に成長してくれるといいのだけれど。イシュタルに話したかしら、あの子が自分の瞳の色と同じアイスブルーダイヤをスカーレットに贈ることにしたと」
「はい、伺いました。素敵なアピール方法ではないでしょうか」
「アピールなら良かったのだけれど…。あなたがそう言うということは、わたくしは理由までは話していなかったようね。あの子、アイスブルーダイヤがスカーレットの胸元で揺れる長さのネックレスを贈りたいのですって。常にスカーレットの命を守るよう目を光らせているという意を込め。かなり重い贈り物よね…」
「贈る理由は伏せておいたほうが…」
「ええ、それはもう聞いた瞬間に伝えたわ。顔には出さないけれど、あの子なりに焦っているのでしょう。スカーレットの傍にはマーカム子爵がいるから。ねえ、イシュタルはジョイスにどれくらい勝算があると思う?」
「五分五分でしょうか」
「ふふ、リプセット公爵家の嫁でなかったらどう思う?」
「八対二でマーカム子爵かと」
「そうよね。ジョイスが女性に対して上手く立ち回れるようならば、本当はスカーレットを妻に迎え王都に連れ戻ってもらいたいのだけれど…、難しいわよね」
顔を合わせてもあまり話したことがない義弟を思い出しながら、イシュタルはエラルリーナの言葉に『はい』という代わりに曖昧な笑みを浮かべたのだった。
「はい、ジェスト様は、その…」
「気にしないで、イシュタル、本当のことを話してちょうだい」
「お義父様やジョイス様のお話を伺うと、旦那様は良い方ではないかと…」
「まあ似たり寄ったりということね」
リプセット公爵家の敷地は広い。大きな本邸に、二つの別邸。そしてそれぞれに庭園が設けられているだけではなく、菜園、厩舎、私設騎士団用の施設まである。
その二つある別邸の一つを使用しているのが次期リプセット公爵となるジェストとその妻イシュタル。そしてこの日はリプセット公爵夫人のエラルリーナと嫁であるイシュタルの茶会だった。
「それで体調はどう?」
「はい、食欲もありますし、散歩も問題なく出来ています」
「初産は時間が掛かると言われているから、しっかり体力をつけるようにね」
イシュタルは秋口に第一子の出産を控えている。最近では夫のジェストが生まれてくる子供の為にと、イシュタルに贈り物をするのだが…。
年頃の女性に馬を贈ると言った父親に、その考えが素晴らしいと思う息子の血族だけあってジェストの贈り物センスも微妙なものだった。
「そうそう、ジョイスがまともなことを言っていたわ。ファルコールには品質の良い羊毛があるから、それでブーティを作ってもらいあなたに贈るそうよ。あの子ったら、可愛いものを注文するって言っていたわ。問題はその可愛いね。あの子のセンスでいう可愛いってどんなかしら?」
「まあ、お義母様、きっと本当に可愛い素敵なものが届くのではないでしょうか。注文する時までに、ジョイス様がスカーレット様に相談が出来るようになっていれば。そしてジョイス様はそうなるべく努力するでしょうから」
「どうかしら…。あの子、女性との接し方も贈り物センス同様酷いから。失敗を糧に成長してくれるといいのだけれど。イシュタルに話したかしら、あの子が自分の瞳の色と同じアイスブルーダイヤをスカーレットに贈ることにしたと」
「はい、伺いました。素敵なアピール方法ではないでしょうか」
「アピールなら良かったのだけれど…。あなたがそう言うということは、わたくしは理由までは話していなかったようね。あの子、アイスブルーダイヤがスカーレットの胸元で揺れる長さのネックレスを贈りたいのですって。常にスカーレットの命を守るよう目を光らせているという意を込め。かなり重い贈り物よね…」
「贈る理由は伏せておいたほうが…」
「ええ、それはもう聞いた瞬間に伝えたわ。顔には出さないけれど、あの子なりに焦っているのでしょう。スカーレットの傍にはマーカム子爵がいるから。ねえ、イシュタルはジョイスにどれくらい勝算があると思う?」
「五分五分でしょうか」
「ふふ、リプセット公爵家の嫁でなかったらどう思う?」
「八対二でマーカム子爵かと」
「そうよね。ジョイスが女性に対して上手く立ち回れるようならば、本当はスカーレットを妻に迎え王都に連れ戻ってもらいたいのだけれど…、難しいわよね」
顔を合わせてもあまり話したことがない義弟を思い出しながら、イシュタルはエラルリーナの言葉に『はい』という代わりに曖昧な笑みを浮かべたのだった。
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