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王宮では41
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テレンスの婚約発表などの筋書きが決まると、アルフレッドは国王への報告に向かった。ジョイスがその場で纏め上げた報告書を携えて。
「そうか。婿になれるか分かるのは二年後だと言うのだな」
「はい。ですので、この結果をまずは最大限に利用します」
アルフレッドの役割はテレンスが今出来る最大のことに対し、更にそれが良く見えるよう装飾を施すこと。
自分は大きく失うことをしてしまったというのに、他者は大きく得る為の駒として装飾するのは傲慢に思える。しかし、アルフレッドはそうしなければならない。次期国王なのだから。そういう行動が取れなければ、友達想いの王子止まりとなるだけ。失態に対し穴埋めでは済まされない、それが小さいことに思えるくらいの大きなものを得なければならないのがアルフレッドの立場なのだ。
だから大切な幼馴染だろうとテレンスを利用すると国王にはっきり伝えた。為政者として自覚しているということを示す為に。
そしてそれは目の前の人物も同じ。アルフレッドの失態をある程度何らかの方法で収めてくれていたに違いない。収める為に、どういう手段を講じたのかは分からないが。
だから気になる。手渡した報告書に目を通し、アルフレッドとは数段も経験値が違う国王はどう思うのだろうかと。
「いかがでしょうか?」
「全てはおまえに任せたこと。特に言うことはない。ただし、結果は最善にしなければならないということを忘れるな」
アルフレッドの頭の中に『選ぶ以上は最善でなければならない。決めたのならば、その選択を最善にしろ』、『スカーレットが何を国にもたらす予定だったか、それを取りそこなったおまえなら良く分かるだろう』という目の前にいる父の国王としての言葉が思い出された。決めた以上はお伺いを立てるのではなく、そうなるようにするしかないということだ。
「はい、その所存でございます。大切な持ち駒を切ったのですから、大きく取りにいきます」
「そうか。テレンスの婚約話はわかった。それで、おまえはどうなんだ。王妃からも言われているだろう」
テレンスの婚約の話を出せば、当然この話題を振られることをアルフレッドは理解していた。しかしどんなに理解していようと、答えがまだ見つからないのも事実。これに関しては、現状を国王に伝えるしかない。
「国内外の両方で考えていますが、適齢期の有力な家門のご令嬢には既に婚約者がおります。ある程度の年の差を含め検討しようと考え始めたところです」
「それも一つの方法だ。おまえよりだいぶ若いならば、結婚は遅れるが王子妃、そして王妃教育の時間は取れる。こちらも国にとって最善になるよう心掛けよ」
アルフレッドの婚姻は仕事。しかしスカーレットを妻として迎えていれば、仕事だけではなく夫婦、そして家族になれたことだっただろう。
国王の執務室からの長い渡り廊下を歩きながら、アルフレッドはどうしてあの時シシリアを王子妃として迎えようとしていたのか自分のことながら理解に苦しんだ。
シシリアが向けてくれたのは純粋な愛情。それがこの王宮でどれだけ役に立つものなのか、テレンスを駒に出来た今のアルフレッドなら良く分かる。
何故王妃になるべく育てられたスカーレットの意見に耳を貸さなかったのか。同じく国王になるべく育てられたアルフレッドこそスカーレットの言葉を一番理解すべきだったのに。
違約金の三倍、それは金額だけ聞けば高額だ。しかし、その金額がたいしたことのないように思えるだけの価値がスカーレットにはある。だからといって…。
母である王妃の鬱々とした表情を思い出しながら、アルフレッドは婚姻という仕事にもしっかりとりくまなければならないと執務室へ向かった。
「そうか。婿になれるか分かるのは二年後だと言うのだな」
「はい。ですので、この結果をまずは最大限に利用します」
アルフレッドの役割はテレンスが今出来る最大のことに対し、更にそれが良く見えるよう装飾を施すこと。
自分は大きく失うことをしてしまったというのに、他者は大きく得る為の駒として装飾するのは傲慢に思える。しかし、アルフレッドはそうしなければならない。次期国王なのだから。そういう行動が取れなければ、友達想いの王子止まりとなるだけ。失態に対し穴埋めでは済まされない、それが小さいことに思えるくらいの大きなものを得なければならないのがアルフレッドの立場なのだ。
だから大切な幼馴染だろうとテレンスを利用すると国王にはっきり伝えた。為政者として自覚しているということを示す為に。
そしてそれは目の前の人物も同じ。アルフレッドの失態をある程度何らかの方法で収めてくれていたに違いない。収める為に、どういう手段を講じたのかは分からないが。
だから気になる。手渡した報告書に目を通し、アルフレッドとは数段も経験値が違う国王はどう思うのだろうかと。
「いかがでしょうか?」
「全てはおまえに任せたこと。特に言うことはない。ただし、結果は最善にしなければならないということを忘れるな」
アルフレッドの頭の中に『選ぶ以上は最善でなければならない。決めたのならば、その選択を最善にしろ』、『スカーレットが何を国にもたらす予定だったか、それを取りそこなったおまえなら良く分かるだろう』という目の前にいる父の国王としての言葉が思い出された。決めた以上はお伺いを立てるのではなく、そうなるようにするしかないということだ。
「はい、その所存でございます。大切な持ち駒を切ったのですから、大きく取りにいきます」
「そうか。テレンスの婚約話はわかった。それで、おまえはどうなんだ。王妃からも言われているだろう」
テレンスの婚約の話を出せば、当然この話題を振られることをアルフレッドは理解していた。しかしどんなに理解していようと、答えがまだ見つからないのも事実。これに関しては、現状を国王に伝えるしかない。
「国内外の両方で考えていますが、適齢期の有力な家門のご令嬢には既に婚約者がおります。ある程度の年の差を含め検討しようと考え始めたところです」
「それも一つの方法だ。おまえよりだいぶ若いならば、結婚は遅れるが王子妃、そして王妃教育の時間は取れる。こちらも国にとって最善になるよう心掛けよ」
アルフレッドの婚姻は仕事。しかしスカーレットを妻として迎えていれば、仕事だけではなく夫婦、そして家族になれたことだっただろう。
国王の執務室からの長い渡り廊下を歩きながら、アルフレッドはどうしてあの時シシリアを王子妃として迎えようとしていたのか自分のことながら理解に苦しんだ。
シシリアが向けてくれたのは純粋な愛情。それがこの王宮でどれだけ役に立つものなのか、テレンスを駒に出来た今のアルフレッドなら良く分かる。
何故王妃になるべく育てられたスカーレットの意見に耳を貸さなかったのか。同じく国王になるべく育てられたアルフレッドこそスカーレットの言葉を一番理解すべきだったのに。
違約金の三倍、それは金額だけ聞けば高額だ。しかし、その金額がたいしたことのないように思えるだけの価値がスカーレットにはある。だからといって…。
母である王妃の鬱々とした表情を思い出しながら、アルフレッドは婚姻という仕事にもしっかりとりくまなければならないと執務室へ向かった。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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