342 / 586
192
しおりを挟む
テーブルの上にあるだけで、その存在を主張する荷物。ラッピングもリボンも送り主のクリスタルを表すかのようだった。
「この荷物はサビィへの贈り物よね、リボンも含めて。でも、心なしかこのリボン、クリスタル様を彷彿とさせるわ。部屋に届けるよりはここで開けてもらった方がいいかもしれない。ナーサ、サビィとツェルカを呼んできてくれる?」
薫の感覚では贈り物は相手のことを考えて行うこと。会社間の付き合いでのお中元に、人数の多い事業所へは入り数の多い缶ジュース。お歳暮は温かい飲み物に合いそうなお茶菓子等と。それに男女比も考えてお菓子も選んでいた。社内で流石お節介おばさんと言われようと、相手に喜ばれることを重視していた。
しかし目の前にあるサブリナへの贈り物であろう荷物はどうだろうか。見た目だけで判断してはいけないが、そこにクリスタルの心遣いではなく何かの意図を感じてしまうのは何故だろう。
別の見方をすれば、プライドの高いクリスタルだから包みもこうなったと考えられる。もしかしたら中身にはちゃんとサブリナへの気遣いが入っている可能性も。けれど頭の中の記憶が薫に警鐘を鳴らす以上、気を付けた方がいいだろう。
待つこと数分、ナーサがサブリナとツェルカを連れてきた。そしてサブリナはその荷物を目にするや否や大きく息を吐き出したのだった。
その仕草が意味することなど考える必要はないだろう。サブリナは贈り物に喜んでいない、中にクリスタルの気遣いなど入っていないということだ。
思い起こしてみれば、サブリナは自分の荷物だけでやって来た。暫しの別れを惜しむはずの夫であるジャスティンからの贈り物など持ってもいなかった。勿論義妹のクリスタルも、ジャスティン同様大切なサブリナと言っている義母からも。
今回サブリナがファルコールへやって来たのはスカーレットの話し相手として。その原因を作ったのはクリスタルだというのに、オランデール伯爵家の誰も遠く離れるサブリナへの気遣いの品も手紙も渡していない。
そしてこのタイミングでクリスタルからの贈り物。薫は自分の勘に従って良かったと思った。贈り物をするならばクリスタルこそサブリナの出発前に用意し馬車に乗せるべき人だったのだ。
「サビィ、良ければここでオランデール伯爵令嬢からの贈り物を開けてくれないかしら?わたしも一緒に中身を見たいの」
「勿論構わないわ」
「それと…、このリボン、あなたの好み?」
「勿論。流石ねキャロル、もう頭の中で全てが繋がっているのかしら?」
「あなたこそ開けなくても中身が分かっているのでは?」
「何が入っているかまでは確実に分かるわけではないけれど、お願いという命令が入っていることは分かるわ。だってそれはリボンではなく、わたしを飼っているとでも主張する首輪のようなものだから」
サブリナがジャスティンとの婚姻関係を続けるならば、このクリスタルからの贈り物にも喜ばなければいけなかったのだろう。どんな贈り物だとしても。
でも今のサブリナは違う。リボンを解くと『捨てるには忍びないわね、売ってしまいましょう。お金にくらいなってもらわないと』と笑みを見せたのだった。
「そうだ、リボンは不要な髪型にしたいわ。もう既婚女性として髪を結い上げる必要が無くなるのだから、短くしてしまおうかしら」
サブリナがショートカット。薫は妖精のような女優が出ていたあの有名映画を思い出さずにはいられなかった。しかも目の前で笑みを見せるサブリナの髪質ならばあの前髪を自然につくることが出来るはずと。
「いいわ、サビィ!きっと似合う!早速、あ、でも、その前に包みを開いてしまいましょう」
「ふふ、そうね。そうだ、中に何が入っているか当て合わない?」
「この荷物はサビィへの贈り物よね、リボンも含めて。でも、心なしかこのリボン、クリスタル様を彷彿とさせるわ。部屋に届けるよりはここで開けてもらった方がいいかもしれない。ナーサ、サビィとツェルカを呼んできてくれる?」
薫の感覚では贈り物は相手のことを考えて行うこと。会社間の付き合いでのお中元に、人数の多い事業所へは入り数の多い缶ジュース。お歳暮は温かい飲み物に合いそうなお茶菓子等と。それに男女比も考えてお菓子も選んでいた。社内で流石お節介おばさんと言われようと、相手に喜ばれることを重視していた。
しかし目の前にあるサブリナへの贈り物であろう荷物はどうだろうか。見た目だけで判断してはいけないが、そこにクリスタルの心遣いではなく何かの意図を感じてしまうのは何故だろう。
別の見方をすれば、プライドの高いクリスタルだから包みもこうなったと考えられる。もしかしたら中身にはちゃんとサブリナへの気遣いが入っている可能性も。けれど頭の中の記憶が薫に警鐘を鳴らす以上、気を付けた方がいいだろう。
待つこと数分、ナーサがサブリナとツェルカを連れてきた。そしてサブリナはその荷物を目にするや否や大きく息を吐き出したのだった。
その仕草が意味することなど考える必要はないだろう。サブリナは贈り物に喜んでいない、中にクリスタルの気遣いなど入っていないということだ。
思い起こしてみれば、サブリナは自分の荷物だけでやって来た。暫しの別れを惜しむはずの夫であるジャスティンからの贈り物など持ってもいなかった。勿論義妹のクリスタルも、ジャスティン同様大切なサブリナと言っている義母からも。
今回サブリナがファルコールへやって来たのはスカーレットの話し相手として。その原因を作ったのはクリスタルだというのに、オランデール伯爵家の誰も遠く離れるサブリナへの気遣いの品も手紙も渡していない。
そしてこのタイミングでクリスタルからの贈り物。薫は自分の勘に従って良かったと思った。贈り物をするならばクリスタルこそサブリナの出発前に用意し馬車に乗せるべき人だったのだ。
「サビィ、良ければここでオランデール伯爵令嬢からの贈り物を開けてくれないかしら?わたしも一緒に中身を見たいの」
「勿論構わないわ」
「それと…、このリボン、あなたの好み?」
「勿論。流石ねキャロル、もう頭の中で全てが繋がっているのかしら?」
「あなたこそ開けなくても中身が分かっているのでは?」
「何が入っているかまでは確実に分かるわけではないけれど、お願いという命令が入っていることは分かるわ。だってそれはリボンではなく、わたしを飼っているとでも主張する首輪のようなものだから」
サブリナがジャスティンとの婚姻関係を続けるならば、このクリスタルからの贈り物にも喜ばなければいけなかったのだろう。どんな贈り物だとしても。
でも今のサブリナは違う。リボンを解くと『捨てるには忍びないわね、売ってしまいましょう。お金にくらいなってもらわないと』と笑みを見せたのだった。
「そうだ、リボンは不要な髪型にしたいわ。もう既婚女性として髪を結い上げる必要が無くなるのだから、短くしてしまおうかしら」
サブリナがショートカット。薫は妖精のような女優が出ていたあの有名映画を思い出さずにはいられなかった。しかも目の前で笑みを見せるサブリナの髪質ならばあの前髪を自然につくることが出来るはずと。
「いいわ、サビィ!きっと似合う!早速、あ、でも、その前に包みを開いてしまいましょう」
「ふふ、そうね。そうだ、中に何が入っているか当て合わない?」
38
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる