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ファルコール手前の町7

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ダニエルが食事を終わらせるまでに聞こえてきた内容は多岐に渡った。仕事、天候等の生活に直結することもあれば、結婚式が行われるという話まで。そして案外多かったのが最近のファルコールのこと。違う町の食堂で話に上る回数が多いとは、それだけ話のタネがあるということだ。

食堂の席に着いてから聞こえてきた温泉以外にも、土木や建設絡みの仕事に、新たなキノコ栽培と、町が潤い活気付いているのが分かる。しかし、食堂の客達はそんなことを大々的に行えるのはキャストール侯爵しかいないと分かっていても、本人が一度もファルコールへ向かっていないことを不思議がっていた。

そこでダニエルは情報というモノは本当に大切だと感じた。
様々な側面を知るダニエルならば、ファルコールが何故活気付いているかなど火を見るよりも明らか。客達が話す、代官所と国境検問所が別々の貴族に任されるようになったからという曖昧な憶測ではなく真実に辿り着ける。
父は姉をサポートはしているが、ファルコールの発展を主導してはいない。プレストン子爵は今までファルコールをきっちり治めてくれていたが、国境検問所の仕事が減ったからといって急に新たなことを始めるのは不可能。ただ、新たなことを始める手にはなりえる。そうかと言って、誰の手にでもなることはない。キャストール侯爵に代わりファルコールを治めるプレストン子爵が手になったのは、そのブレインがキャストール侯爵家の者だからだ。

客達の疑問を解消するならば、キャストール侯爵家の人間がそこにいるからだとダニエルが言えばいい。けれどその人物は公には療養中。しかも、貴族学院を出たばかりの王子から婚約破棄をされた令嬢に過ぎない。

不意にアルフレッドの『では、夕食は労働者が集まるような食堂で取ることも追加させてくれ。そこで、平民達の声を拾って欲しい』という言葉がダニエルの脳裏に蘇った。
アルフレッドは何をどこまで知っているのか。キャストール侯爵家との今の関係性から、侯爵家の領地に干渉することは憚られる。けれどキャストール侯爵家の正当な継承者であるダニエルにその役割を担わせ、平民達の声を拾うことに何ら問題はない。

『キャストール侯爵家が整備した街道周辺に暮らす者達の生活に変化はないはずだが、今後のことで不安等を抱いていないかは分からないからな』
あの時ダニエルはアルフレッドがスカーレットの婚約破棄がファルコールまでの街道周辺に暮らす者達の生活を暗くはしていないか気に掛けているのだと感じた。話は川の水が上流から下流に流れていくように自然だった。しかし本当にそうだろうか。その川の流れ自体がアルフレッドの思い描いたものだったら、話は違う。
しかも、客達から聞こえてきた話はダニエルだけが聞いているのではない。事務官に御者、更には護衛。彼らは皆、アルフレッドに忠実な者達だ。

大切な情報をダニエルは報告する時にどのように包みアルフレッドに献上するべきか。

スカーレットに会いたいという気持ち。会ってもらえるのかという不安。そして、何かを壊してはしまわないかという恐怖。
この役割が振られた時から、ダニエルは次期キャストール侯爵として家族を守る役割が課せられていたのだ。けれど下手な守り方は領民達を苦しめる。机上の理論だけでなく、実践には思惑や感情、そしてタイミングが付き纏う。

「時折聞こえてくる話からファルコールは暮らし易そうですね。そんな環境の中ならば、姉上も心が晴れるといいのですが…。でも、邸で聞こえてきた限りでは姉上はファルコールの館の外にすら出ないようなので、難しいかもしれませんね」

ダニエルは仮令それが薄い紙一枚だとしても、情報を包むことにした。スカーレットに似たこの顔を活用し、悲しそうな表情を浮かべることで、ここにいる者達の心証操作を少しでも出来ればいいと。


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バイトに精を出しておりましたが、何か熱の出るものを頂いてきてしまい。。。。
間があいて申し訳ございません。
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