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とある国の離宮4

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何とも言いようのない晩餐会から二晩明けて、いよいよテレンスがマリア・アマーリエと共に時間を過ごす順番がやって来た。指定されたのは中庭の一角にある洒落た造りの茶を楽しむスペース。敷かれた優しい色合いのテラコッタタイルが、ゆったりとした空間を演出する心休まりそうな場所だった。

しかし指定された時間に到着したテレンスが心休まるかと言えば、残念ながら答えはノー。待ち時間が経過すると共に、マリア・アマーリエの拒絶を感じ心の中は慌ただしくなった。

「テレンス様、お待たせいたしました。殿下がご到着でございます」
侍従長からマリア・アマーリエの到着を告げられると、テレンスは遅れようと来てくれたことには感謝しなければいけないと気持ちを切り替え起立した。

「お待たせしました。どうぞ、お掛けになって」
「はい、ありがとうございます」

テレンスが着席するのを確認すると、マリア・アマーリエは何やら侍従長に耳打ちした。それを皮切りにメイド達が茶と菓子をテーブルに運び出したのだった。

「テレンス様、だったかしら。気に入って下さるといいのだけれど。どうぞ召し上がって」
「ありがとうございます」
「そのまま耳だけ傾けて、わたくしの話を良く聞いて下さい」

マリア・アマーリエは今までの求婚者全員に同じことを言っていたのだろう、スラスラとこの婚姻で得られることを話し出した。結婚してもテレンスに爵位は与えられないこと。代わりに住む場所としてこの離宮が与えられ、住むと同時に管理をする仕事とそれに伴う予算が得られると。
更には婚約期間が二年。その後双方が合意した場合にのみ結婚に至るという説明も付け加えられたのだった。

「どちらかが合意しなければ結婚は無くなります。またその二年間、あなたには禁欲を強いることになる。そうまでして、この結婚をしたいと思いますか?」

そういうことかとテレンスはマリア・アマーリエの言葉に様々なことを理解した。マリア・アマーリエはテレンスだけではなく、全ての求婚者に対し同じような態度を取ってきたのだろう。それは、求婚者が断り易いようにという親切心からだ。
テレンスもそうであるように、他国の王族の配偶者になるのであれば通常その家の後継者はやって来ない。求婚者の大多数を占めるのは次男以降。皆、王族との婚姻で何らかの爵位を授けられると考えているからだ。

「殿下はお優しい方ですね」
「えっ、わたくしが優しい?」
「はい。でもお気遣いは不要です。わたしはここに爵位を貰いにやって来たのではありません。あなたに求婚にやって来たのです」

アルフレッドの命令はマリア・アマーリエの婿になること。外国の爵位を貰ってこいではなかった。だから自分の言葉は正しいとテレンスは思ったのだった。
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