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その日の夕食メニューはスープ、キッシュ、サラダ、それにセルフサービスのサンドイッチ。キッチンの改装が本格的に始まったので、使えそうな時に作っておけるものばかりにしたらガッツリ感のない食事内容になってしまった。
騎士三人は勿論のことケビンとノーマンも体はしっかりしている。お節介おばちゃん気質な薫としては、このメニューで彼らがお腹を空かせないか心配になるところだ。
そこで、男性陣に隣の騎士宿舎へ食事に行ったらどうかと提案したのだが、全員から見事に断られた。それも迷いのない視線で、ここでの食事が好きだからと。普通なら良かれと思った提案を拒否されることは悲しい。けれど、今回に限って言えば男性陣の言葉は薫を非常に喜ばせた。そう、薫は男性陣もこの大家族のような食事を楽しんでいるのだと理解したのだ。そこに食事に満足し楽しんでいる以外に、態々男ばかりの中で食べたくないという理由があることに気付かず。
双方の認識のずれは兎も角、スコットは不在だがいつもと同じ全員での食事はサブリナにも良かったようだ。楽しい雰囲気は日中不安定になった感情を回復させ、騎士達と食べることでつられて食事量が増える。そんなサブリナの様子に安堵しながら、薫はこれからのことを考えた。ファルコールと王都で距離がある以上、助けが必要だと。
そして助けを求めるなら早い方が良い。食事の片付けが終わり、騎士達が居なくなると薫はツェルカにサブリナを部屋へ送り届けたら戻って来て欲しいと告げたのだった。目礼で感謝を示したツェルカの姿が見えなくなると、今度はケビンが『何か進展があったんですね』と薫に声を掛けた。なんて有能なんだろう。
「分かり易かった?」
「分かり易くはありませんが、分かります」
「進展があったにはあったのだけど、あまり良いことじゃないの。それにサビィの事だから、ケビン達に相談する前にツェルカに了承を得たいと思って」
「俺達に相談が必要ということは、手が要るということですね?」
「ご名答。でも、先ずはツェルカの意見を聞きましょう。わたしがする提案は良いことじゃないから」
薫は石女を理由にサブリナを支配しているジャスティンに、石女を理由にサブリナと離縁させたいと考えたのだ。爵位主義のオランデール伯爵家ならば、子供を産めない子爵家出身のサブリナなど本当は切り捨てたいだろうから。
ただサブリナという甘い汁を吸い過ぎているジャスティンは納得しないと分かる。サブリナの立場を守るためと言い、とんでもない方法をこれから取ろうとしているくらいだ。
夢の中のサブリナがレスターを嫌うのは当然のことだった。
騎士三人は勿論のことケビンとノーマンも体はしっかりしている。お節介おばちゃん気質な薫としては、このメニューで彼らがお腹を空かせないか心配になるところだ。
そこで、男性陣に隣の騎士宿舎へ食事に行ったらどうかと提案したのだが、全員から見事に断られた。それも迷いのない視線で、ここでの食事が好きだからと。普通なら良かれと思った提案を拒否されることは悲しい。けれど、今回に限って言えば男性陣の言葉は薫を非常に喜ばせた。そう、薫は男性陣もこの大家族のような食事を楽しんでいるのだと理解したのだ。そこに食事に満足し楽しんでいる以外に、態々男ばかりの中で食べたくないという理由があることに気付かず。
双方の認識のずれは兎も角、スコットは不在だがいつもと同じ全員での食事はサブリナにも良かったようだ。楽しい雰囲気は日中不安定になった感情を回復させ、騎士達と食べることでつられて食事量が増える。そんなサブリナの様子に安堵しながら、薫はこれからのことを考えた。ファルコールと王都で距離がある以上、助けが必要だと。
そして助けを求めるなら早い方が良い。食事の片付けが終わり、騎士達が居なくなると薫はツェルカにサブリナを部屋へ送り届けたら戻って来て欲しいと告げたのだった。目礼で感謝を示したツェルカの姿が見えなくなると、今度はケビンが『何か進展があったんですね』と薫に声を掛けた。なんて有能なんだろう。
「分かり易かった?」
「分かり易くはありませんが、分かります」
「進展があったにはあったのだけど、あまり良いことじゃないの。それにサビィの事だから、ケビン達に相談する前にツェルカに了承を得たいと思って」
「俺達に相談が必要ということは、手が要るということですね?」
「ご名答。でも、先ずはツェルカの意見を聞きましょう。わたしがする提案は良いことじゃないから」
薫は石女を理由にサブリナを支配しているジャスティンに、石女を理由にサブリナと離縁させたいと考えたのだ。爵位主義のオランデール伯爵家ならば、子供を産めない子爵家出身のサブリナなど本当は切り捨てたいだろうから。
ただサブリナという甘い汁を吸い過ぎているジャスティンは納得しないと分かる。サブリナの立場を守るためと言い、とんでもない方法をこれから取ろうとしているくらいだ。
夢の中のサブリナがレスターを嫌うのは当然のことだった。
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