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とある国の離宮2
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離宮での初めての朝食に向かうと、既にテレンス以外の二人はそこにいた。特に会話をしていた雰囲気がないことから、この二人も顔を合わせてからまだ然程時間が経っていないということだろう。
それを裏付けるように、離宮の侍従長から婚約者候補が全員揃ったのでという前置きの後、三人の紹介がなされた。それも国名と名前のみの至って簡単なもの。年齢もそれぞれの家の爵位も伝えられない紹介は、全員を同じように扱うと宣言している。勿論テレンスはそのことに異存などない。そして、他の二人も無言で話を聞き続けているのは、同じく異を唱える気はないということだ。若しくは爵位を口にされない方が有り難いのかもしれないが。
「明日、マリア・アマーリエ王女殿下による歓迎晩餐会を行います。その翌日からこの離宮に到着された順番に一日ずつ午前中の時間を王女殿下とお過ごし下さい。晩餐会を含め、全てのドレスコードは皆様の世話係に連絡済みですので、その都度ご確認をお願いします。ご不明点、お困りのことがありましたら何なりとお申し付け下さい」
ここが王宮ではなく離宮だからなのか、到着した客をマリア・アマーリエが出迎えないのも不思議だった。テレンスの様に他国からの客は予想が出来た段階で、到着予定日や時間を早馬で伝える。いきなり到着して相手に迷惑を掛けないよう気遣うのが常識だ。勿論、テレンスも到着の二日前には連絡が届くよう同行している外交官と相談し手配した。その常識に、訪問された側も常識を返す、出迎えるという方法で。しかしマリア・アマーリエは出迎えることは無かった。どうしても外せない予定があるならば、代理人を立てメッセージカードを託すという方法もあるだろう。しかし、末姫で離宮にいるマリア・アマーリエにそのような喫緊の予定が入ることは考え難い。これも風習の違いから来るものなのか、テレンスが歓迎されていないのか…。最後に到着したことが、こんな風に小さな悩みを作っていくとはテレンスは思いもしなかった。
朝食と今後の説明が終わり与えられた部屋にテレンスが戻ってくると、丁度外交官達と扉の前で鉢合わせた。彼らは午後にも王宮へ向かい国王へ訪問の挨拶と献上品を届けに行くという。
「はい、昨日到着後にお伺いを立てましたところ、本日午後に時間を作っていただけることになりました」
「分かった。では、わたしも準備をしておく」
「ご予定は大丈夫でしょうか?王女殿下とお顔合わせがあるようでしたら、テレンス様は別の日でも」
「問題ない。恐らくそれを見越してくれたのだろう、王女殿下との顔合わせは明日の晩餐だ」
そうなのだ、最初に向かうように言われたのが離宮というのもおかしいとテレンスは思っていた。本来であれば、国王の下へ向かうべきなのに。しかしこれはこれで良いのかもしれない。移動を利用してこの国の王都を見ることが出来るとテレンスは考えた。
「では、移動中に昼食を取ることにしよう。わたしからサンドイッチ程度のものを人数分用意してもらうよう伝えておく。それに、夕食もいらないと。折角だ、この国の様子を見がてら外食をしよう」
テレンスは平民達の声を拾えるような食堂へ行きたいと思った。貴族が集まるような高級レストランではなく。だから、外交官達にはシャツの着替えを持つようにとも伝えたのだった。
それを裏付けるように、離宮の侍従長から婚約者候補が全員揃ったのでという前置きの後、三人の紹介がなされた。それも国名と名前のみの至って簡単なもの。年齢もそれぞれの家の爵位も伝えられない紹介は、全員を同じように扱うと宣言している。勿論テレンスはそのことに異存などない。そして、他の二人も無言で話を聞き続けているのは、同じく異を唱える気はないということだ。若しくは爵位を口にされない方が有り難いのかもしれないが。
「明日、マリア・アマーリエ王女殿下による歓迎晩餐会を行います。その翌日からこの離宮に到着された順番に一日ずつ午前中の時間を王女殿下とお過ごし下さい。晩餐会を含め、全てのドレスコードは皆様の世話係に連絡済みですので、その都度ご確認をお願いします。ご不明点、お困りのことがありましたら何なりとお申し付け下さい」
ここが王宮ではなく離宮だからなのか、到着した客をマリア・アマーリエが出迎えないのも不思議だった。テレンスの様に他国からの客は予想が出来た段階で、到着予定日や時間を早馬で伝える。いきなり到着して相手に迷惑を掛けないよう気遣うのが常識だ。勿論、テレンスも到着の二日前には連絡が届くよう同行している外交官と相談し手配した。その常識に、訪問された側も常識を返す、出迎えるという方法で。しかしマリア・アマーリエは出迎えることは無かった。どうしても外せない予定があるならば、代理人を立てメッセージカードを託すという方法もあるだろう。しかし、末姫で離宮にいるマリア・アマーリエにそのような喫緊の予定が入ることは考え難い。これも風習の違いから来るものなのか、テレンスが歓迎されていないのか…。最後に到着したことが、こんな風に小さな悩みを作っていくとはテレンスは思いもしなかった。
朝食と今後の説明が終わり与えられた部屋にテレンスが戻ってくると、丁度外交官達と扉の前で鉢合わせた。彼らは午後にも王宮へ向かい国王へ訪問の挨拶と献上品を届けに行くという。
「はい、昨日到着後にお伺いを立てましたところ、本日午後に時間を作っていただけることになりました」
「分かった。では、わたしも準備をしておく」
「ご予定は大丈夫でしょうか?王女殿下とお顔合わせがあるようでしたら、テレンス様は別の日でも」
「問題ない。恐らくそれを見越してくれたのだろう、王女殿下との顔合わせは明日の晩餐だ」
そうなのだ、最初に向かうように言われたのが離宮というのもおかしいとテレンスは思っていた。本来であれば、国王の下へ向かうべきなのに。しかしこれはこれで良いのかもしれない。移動を利用してこの国の王都を見ることが出来るとテレンスは考えた。
「では、移動中に昼食を取ることにしよう。わたしからサンドイッチ程度のものを人数分用意してもらうよう伝えておく。それに、夕食もいらないと。折角だ、この国の様子を見がてら外食をしよう」
テレンスは平民達の声を拾えるような食堂へ行きたいと思った。貴族が集まるような高級レストランではなく。だから、外交官達にはシャツの着替えを持つようにとも伝えたのだった。
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