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ベーコン、サラミ、コーン、タマネギ、ピーマン、ダイストマト、序にマッシュルームの代わりのポルチーニ茸のスライスも。ファルコールで手に入る食材を用意して、いよいよピザ作りが始まった。と言っても、既に生地の上にトマトソースは塗られている。残るはその上に好きなものを乗せるだけ。
サブリナにとっては昨日のベーコンが焼けるのを見ているだけから、今日は具材をバランス良く乗せるという数歩踏み込んだ調理作業となった。
大所帯でどれくらい食べるか分からないピザ。クリスピー生地ではなく、もちもちナポリ風生地にしたが何枚焼けばいいのかは初めてなので見当が付かない。しかもデズモンドとリアムもやって来る。足りないよりは余ることを選んだ薫は、ナーサ達と何枚もピザを用意したのだった。
それに、余ったとしても騎士宿舎へ差し入れという名目で届けることが出来るので、食材が無駄になることもない。
「さあ、ノーマン、これはあなたに決めさせてあげる。好きなだけチーズを乗せていいわ」
早い段階で薫はノーマンがバターに目が無いと気付いたが、今ではチーズも好きなことを知っている。薫同様チーズ入りオムレツが大好物なのも。
そこで、ピザの仕上げ作業、チーズ乗せをノーマンに任せたのだった。
薫が作った見本を参考に、ノーマンがせっせとチーズを乗せる。その横で、ナーサとサブリナが作業を見守る光景は何だかとても可愛らしく薫には見えたのだった。
サラダにローストポテト、どこかのピザチェーンのサイドメニューのようなものをテーブルに並べていると丁度デズモンドとリアムがやって来た。
「いらっしゃい。今日は初めて作る料理なの。だから、是非食べてもらいたいと思って」
「嬉しいよ、キャロルの初めてを貰えるなんて」
デズモンドが言うと違う意味に聞こえるから本当に不思議だと思いながら、薫はサブリナを呼んだ。
「二人はどこかで顔を合わせたことがあるかもしれないけれど、わたしから、改めて紹介させて。こちらは、わたしが子供の頃にとてもお世話になったサビィ」
「サビィ、こちらはデズモンド・マーカム子爵とその従者のリアムよ」
「サブリナ夫…」
「デズ、ここではサビィと呼んで。わたしみたいに」
「ああ、そういうこと」
デズモンドはやはり人の心を読むのが上手いと薫は思った。『わたしみたいに』という一言で色々察してくれるとは。
「じゃあ、サビィとしては初めましてだね。俺のこともデズって呼んでくれると嬉しいな。折角近くにいるんだ、楽しくやろう」
「あっ…、こちらこそ、宜しくお願いします。デ、デ、デズさん」
「そんな風に一生懸命愛称を呼ばれると悪いことをしている気分になるなぁ。安心して、サビィ、可愛いからって俺は直ぐに悪さをするような男じゃないから。こっちのリアムはどうだか分からないけれど」
「止めろよ、デズモンド。俺の印象を悪くするのは。サビィ、安心して、俺は良いヤツだから」
「まあ、リアムさんたら」
三人の遣り取りを見ながら、薫はモヤモヤした。サブリナが微かに笑みを見せているのだ。それも、恥ずかしそうなはにかんだ笑みを。美し過ぎるデズモンドの威力は本当に凄い。
「ところで、夜会で見掛ける姿よりも、そのワンピース姿の方がサビィは可愛いね」
初めてワンピース姿を薫に見せた時のサブリナは不安そうだった。それがデズモンドの言葉に今度は頬を赤くしている。
美しいイケメンデズモンドから褒められるというのは本当に驚くべき威力だと薫は思った。きっと、この瞬間はサブリナの頭の中からジャスティンは消えてしまっているのだろう。
サブリナにとっては昨日のベーコンが焼けるのを見ているだけから、今日は具材をバランス良く乗せるという数歩踏み込んだ調理作業となった。
大所帯でどれくらい食べるか分からないピザ。クリスピー生地ではなく、もちもちナポリ風生地にしたが何枚焼けばいいのかは初めてなので見当が付かない。しかもデズモンドとリアムもやって来る。足りないよりは余ることを選んだ薫は、ナーサ達と何枚もピザを用意したのだった。
それに、余ったとしても騎士宿舎へ差し入れという名目で届けることが出来るので、食材が無駄になることもない。
「さあ、ノーマン、これはあなたに決めさせてあげる。好きなだけチーズを乗せていいわ」
早い段階で薫はノーマンがバターに目が無いと気付いたが、今ではチーズも好きなことを知っている。薫同様チーズ入りオムレツが大好物なのも。
そこで、ピザの仕上げ作業、チーズ乗せをノーマンに任せたのだった。
薫が作った見本を参考に、ノーマンがせっせとチーズを乗せる。その横で、ナーサとサブリナが作業を見守る光景は何だかとても可愛らしく薫には見えたのだった。
サラダにローストポテト、どこかのピザチェーンのサイドメニューのようなものをテーブルに並べていると丁度デズモンドとリアムがやって来た。
「いらっしゃい。今日は初めて作る料理なの。だから、是非食べてもらいたいと思って」
「嬉しいよ、キャロルの初めてを貰えるなんて」
デズモンドが言うと違う意味に聞こえるから本当に不思議だと思いながら、薫はサブリナを呼んだ。
「二人はどこかで顔を合わせたことがあるかもしれないけれど、わたしから、改めて紹介させて。こちらは、わたしが子供の頃にとてもお世話になったサビィ」
「サビィ、こちらはデズモンド・マーカム子爵とその従者のリアムよ」
「サブリナ夫…」
「デズ、ここではサビィと呼んで。わたしみたいに」
「ああ、そういうこと」
デズモンドはやはり人の心を読むのが上手いと薫は思った。『わたしみたいに』という一言で色々察してくれるとは。
「じゃあ、サビィとしては初めましてだね。俺のこともデズって呼んでくれると嬉しいな。折角近くにいるんだ、楽しくやろう」
「あっ…、こちらこそ、宜しくお願いします。デ、デ、デズさん」
「そんな風に一生懸命愛称を呼ばれると悪いことをしている気分になるなぁ。安心して、サビィ、可愛いからって俺は直ぐに悪さをするような男じゃないから。こっちのリアムはどうだか分からないけれど」
「止めろよ、デズモンド。俺の印象を悪くするのは。サビィ、安心して、俺は良いヤツだから」
「まあ、リアムさんたら」
三人の遣り取りを見ながら、薫はモヤモヤした。サブリナが微かに笑みを見せているのだ。それも、恥ずかしそうなはにかんだ笑みを。美し過ぎるデズモンドの威力は本当に凄い。
「ところで、夜会で見掛ける姿よりも、そのワンピース姿の方がサビィは可愛いね」
初めてワンピース姿を薫に見せた時のサブリナは不安そうだった。それがデズモンドの言葉に今度は頬を赤くしている。
美しいイケメンデズモンドから褒められるというのは本当に驚くべき威力だと薫は思った。きっと、この瞬間はサブリナの頭の中からジャスティンは消えてしまっているのだろう。
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