245 / 656
142
しおりを挟む
ベーコン、サラミ、コーン、タマネギ、ピーマン、ダイストマト、序にマッシュルームの代わりのポルチーニ茸のスライスも。ファルコールで手に入る食材を用意して、いよいよピザ作りが始まった。と言っても、既に生地の上にトマトソースは塗られている。残るはその上に好きなものを乗せるだけ。
サブリナにとっては昨日のベーコンが焼けるのを見ているだけから、今日は具材をバランス良く乗せるという数歩踏み込んだ調理作業となった。
大所帯でどれくらい食べるか分からないピザ。クリスピー生地ではなく、もちもちナポリ風生地にしたが何枚焼けばいいのかは初めてなので見当が付かない。しかもデズモンドとリアムもやって来る。足りないよりは余ることを選んだ薫は、ナーサ達と何枚もピザを用意したのだった。
それに、余ったとしても騎士宿舎へ差し入れという名目で届けることが出来るので、食材が無駄になることもない。
「さあ、ノーマン、これはあなたに決めさせてあげる。好きなだけチーズを乗せていいわ」
早い段階で薫はノーマンがバターに目が無いと気付いたが、今ではチーズも好きなことを知っている。薫同様チーズ入りオムレツが大好物なのも。
そこで、ピザの仕上げ作業、チーズ乗せをノーマンに任せたのだった。
薫が作った見本を参考に、ノーマンがせっせとチーズを乗せる。その横で、ナーサとサブリナが作業を見守る光景は何だかとても可愛らしく薫には見えたのだった。
サラダにローストポテト、どこかのピザチェーンのサイドメニューのようなものをテーブルに並べていると丁度デズモンドとリアムがやって来た。
「いらっしゃい。今日は初めて作る料理なの。だから、是非食べてもらいたいと思って」
「嬉しいよ、キャロルの初めてを貰えるなんて」
デズモンドが言うと違う意味に聞こえるから本当に不思議だと思いながら、薫はサブリナを呼んだ。
「二人はどこかで顔を合わせたことがあるかもしれないけれど、わたしから、改めて紹介させて。こちらは、わたしが子供の頃にとてもお世話になったサビィ」
「サビィ、こちらはデズモンド・マーカム子爵とその従者のリアムよ」
「サブリナ夫…」
「デズ、ここではサビィと呼んで。わたしみたいに」
「ああ、そういうこと」
デズモンドはやはり人の心を読むのが上手いと薫は思った。『わたしみたいに』という一言で色々察してくれるとは。
「じゃあ、サビィとしては初めましてだね。俺のこともデズって呼んでくれると嬉しいな。折角近くにいるんだ、楽しくやろう」
「あっ…、こちらこそ、宜しくお願いします。デ、デ、デズさん」
「そんな風に一生懸命愛称を呼ばれると悪いことをしている気分になるなぁ。安心して、サビィ、可愛いからって俺は直ぐに悪さをするような男じゃないから。こっちのリアムはどうだか分からないけれど」
「止めろよ、デズモンド。俺の印象を悪くするのは。サビィ、安心して、俺は良いヤツだから」
「まあ、リアムさんたら」
三人の遣り取りを見ながら、薫はモヤモヤした。サブリナが微かに笑みを見せているのだ。それも、恥ずかしそうなはにかんだ笑みを。美し過ぎるデズモンドの威力は本当に凄い。
「ところで、夜会で見掛ける姿よりも、そのワンピース姿の方がサビィは可愛いね」
初めてワンピース姿を薫に見せた時のサブリナは不安そうだった。それがデズモンドの言葉に今度は頬を赤くしている。
美しいイケメンデズモンドから褒められるというのは本当に驚くべき威力だと薫は思った。きっと、この瞬間はサブリナの頭の中からジャスティンは消えてしまっているのだろう。
サブリナにとっては昨日のベーコンが焼けるのを見ているだけから、今日は具材をバランス良く乗せるという数歩踏み込んだ調理作業となった。
大所帯でどれくらい食べるか分からないピザ。クリスピー生地ではなく、もちもちナポリ風生地にしたが何枚焼けばいいのかは初めてなので見当が付かない。しかもデズモンドとリアムもやって来る。足りないよりは余ることを選んだ薫は、ナーサ達と何枚もピザを用意したのだった。
それに、余ったとしても騎士宿舎へ差し入れという名目で届けることが出来るので、食材が無駄になることもない。
「さあ、ノーマン、これはあなたに決めさせてあげる。好きなだけチーズを乗せていいわ」
早い段階で薫はノーマンがバターに目が無いと気付いたが、今ではチーズも好きなことを知っている。薫同様チーズ入りオムレツが大好物なのも。
そこで、ピザの仕上げ作業、チーズ乗せをノーマンに任せたのだった。
薫が作った見本を参考に、ノーマンがせっせとチーズを乗せる。その横で、ナーサとサブリナが作業を見守る光景は何だかとても可愛らしく薫には見えたのだった。
サラダにローストポテト、どこかのピザチェーンのサイドメニューのようなものをテーブルに並べていると丁度デズモンドとリアムがやって来た。
「いらっしゃい。今日は初めて作る料理なの。だから、是非食べてもらいたいと思って」
「嬉しいよ、キャロルの初めてを貰えるなんて」
デズモンドが言うと違う意味に聞こえるから本当に不思議だと思いながら、薫はサブリナを呼んだ。
「二人はどこかで顔を合わせたことがあるかもしれないけれど、わたしから、改めて紹介させて。こちらは、わたしが子供の頃にとてもお世話になったサビィ」
「サビィ、こちらはデズモンド・マーカム子爵とその従者のリアムよ」
「サブリナ夫…」
「デズ、ここではサビィと呼んで。わたしみたいに」
「ああ、そういうこと」
デズモンドはやはり人の心を読むのが上手いと薫は思った。『わたしみたいに』という一言で色々察してくれるとは。
「じゃあ、サビィとしては初めましてだね。俺のこともデズって呼んでくれると嬉しいな。折角近くにいるんだ、楽しくやろう」
「あっ…、こちらこそ、宜しくお願いします。デ、デ、デズさん」
「そんな風に一生懸命愛称を呼ばれると悪いことをしている気分になるなぁ。安心して、サビィ、可愛いからって俺は直ぐに悪さをするような男じゃないから。こっちのリアムはどうだか分からないけれど」
「止めろよ、デズモンド。俺の印象を悪くするのは。サビィ、安心して、俺は良いヤツだから」
「まあ、リアムさんたら」
三人の遣り取りを見ながら、薫はモヤモヤした。サブリナが微かに笑みを見せているのだ。それも、恥ずかしそうなはにかんだ笑みを。美し過ぎるデズモンドの威力は本当に凄い。
「ところで、夜会で見掛ける姿よりも、そのワンピース姿の方がサビィは可愛いね」
初めてワンピース姿を薫に見せた時のサブリナは不安そうだった。それがデズモンドの言葉に今度は頬を赤くしている。
美しいイケメンデズモンドから褒められるというのは本当に驚くべき威力だと薫は思った。きっと、この瞬間はサブリナの頭の中からジャスティンは消えてしまっているのだろう。
15
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?
naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。
私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。
しかし、イレギュラーが起きた。
何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。

【完結】公女さまが殿下に婚約破棄された
杜野秋人
恋愛
突然始まった卒業記念パーティーでの婚約破棄と断罪劇。
責めるのはおつむが足りないと評判の王太子、責められるのはその婚約者で筆頭公爵家の公女さま。どっちも卒業生で、俺のひとつ歳上だ。
なんでも、下級生の男爵家令嬢に公女さまがずっと嫌がらせしてたんだと。
ホントかね?
公女さまは否定していたけれど、証拠や証言を積み上げられて公爵家の責任まで問われかねない事態になって、とうとう涙声で罪を認めて謝罪するところまで追い込まれた。
だというのに王太子殿下は許そうとせず、あろうことか独断で国外追放まで言い渡した。
ちょっとこれはやりすぎじゃねえかなあ。公爵家が黙ってるとも思えんし、将来の王太子妃として知性も教養も礼儀作法も完璧で、いつでも凛々しく一流の淑女だった公女さまを国外追放するとか、国家の損失だろこれ。
だけど陛下ご夫妻は外遊中で、バカ王太子を止められる者などこの場にはいない。
しょうがねえな、と俺は一緒に学園に通ってる幼馴染の使用人に指示をひとつ出した。
うまく行けば、公爵家に恩を売れるかも。その時はそんな程度しか考えていなかった。
それがまさか、とんでもない展開になるなんて⸺!?
◆衝動的に一晩で書き上げたありきたりのテンプレ婚約破棄です。例によって設定は何も作ってない(一部流用した)ので固有名詞はほぼ出てきません。どこの国かもきちんと決めてないです(爆)。
ただ視点がちょっとひと捻りしてあります。
◆全5話、およそ8500字程度でサラッと読めます。お気軽にどうぞ。
9/17、別視点の話を書いちゃったんで追加投稿します。全4話、約12000字………って元の話より長いやんけ!(爆)
◆感想欄は常に開放しています。ご意見ご感想ツッコミやダメ出しなど、何でもお待ちしています。ぶっちゃけ感想もらえるだけでも嬉しいので。
◆この物語も例によって小説家になろうでも公開しています。あちらも同じく全5話+4話。

幼なじみで私の友達だと主張してお茶会やパーティーに紛れ込む令嬢に困っていたら、他にも私を利用する気満々な方々がいたようです
珠宮さくら
恋愛
アンリエット・ノアイユは、母親同士が仲良くしていたからという理由で、初めて会った時に友達であり、幼なじみだと言い張るようになったただの顔なじみの侯爵令嬢に困り果てていた。
だが、そんな令嬢だけでなく、アンリエットの周りには厄介な人が他にもいたようで……。

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました
お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。

婚約者にざまぁしない話(ざまぁ有り)
しぎ
恋愛
「ガブリエーレ・グラオ!前に出てこい!」
卒業パーティーでの王子の突然の暴挙。
集められる三人の令嬢と婚約破棄。
「えぇ、喜んで婚約破棄いたしますわ。」
「ずっとこの日を待っていました。」
そして、最後に一人の令嬢は・・・
基本隔日更新予定です。

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します
もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる