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王宮では24

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「ダニエル、今日の会議の参加者達をどう思った?皆、思惑や感情を悟られない仮面を付けることに長けていただろう」
「はい」
「では、あの中にスカーレットを王子妃に今もなおしたいと思っている人間がどれだけいると思うか」
「それは…」
「未知数だ。自分達に都合良くなるのであれば、金が掛かろうと再びスカーレットを望むだろう。その金も国のもの。直接自分達が腹を痛めるわけではないからな。まあ、俺の次の婚約者候補に関してはキャリントン侯爵派の動向ははっきりしているが、他は日和見中だ」

アルフレッドはその後、何故国王がダニエルを側近に選ぶことを避けるように言ったのか理由を話しだした。ダニエルでキャストール侯爵家との関係をどうにかしようとするなと釘を刺されたと。
「しかし、それは表向きだ。父上もまたスカーレットの可能性を捨てきれていないということだろう。同じ侯爵家から一人は妃、一人は側近などということは出来ない。そんなことをすれば、貴族間のバランスが崩れてしまう。だからダニエルだけは選ぶなと言ったのではないだろうか」

この国の王子でありながら、国へ対し不利益を及ぼしたアルフレッド。あの五日間の会議の後は、それを少しでも何とかしなければという気持ちで過ごしてきた。小さな一歩の積み重ね。だが、失ったものが及ぼす影響が大きすぎて中には焼け石に水のようなこともある。だからこそアルフレッドにも見えてしまった、金は掛かるが大きく踏み出せる一歩があることを。

その『一歩』は小さい頃から共に未来を語り合った相手。『国の為』という言葉に誰よりも耳を傾けてしまう人物だ。
為政者であることを優先するならば、アルフレッドが取るべき手段は何らかの理由を付けてスカーレットを王都まで引っ張ってくること。そして、王宮の中で役職を付け国の為になる仕事をさせてしまえばいい。更には、何かの貢献に対し褒賞と称して、再び婚約者に戻す。

「俺は既に一度、貴族学院で為政者としての道を踏み外した。だから、今回も…、今回こそ踏み外すべきだろう。子供の頃から共に語り合った大切な友人の思い出からも消し去られるようなことはしたくない。スカーレットが選んだ今をせめて守りたい。だからダニエルを側近にしようと思った。ただし、おまえが仕事でミスをしようがものなら、誰よりも責められ側近を辞めるよう求められることになる。その失態を姉であるスカーレットに負わせる為に。その時点で俺が誰かと婚約していようとな」
「…」
「どうする、ダニエル、ある意味おまえは俺にとっても、そしてスカーレットにとっても諸刃の剣だ。今はまだ療養中という理由で押し切れるだろうが、世の貴族連中は令嬢一人の心よりは自分達の利を取るだろう」

キャストール侯爵領の中で最も王都から離れた国境の町ファルコールへスカーレットが向かった理由は色々あっただろう。アルフレッドは、その理由の中に政治や自分から離れたいというものがあったのではないかと考えている。そんなスカーレットを再び王都へ連れ戻しアルフレッドの傍に置くことは、今度は心の病どころではなく、心の死滅に繋がりかねないような気がしたのだ。過去の楽しかった思い出までもがスカーレットの心の中で全て消えてしまうような。

ダニエルが抱いているであろう罪悪感に付け込むことは分かっている。それでもアルフレッドはダニエルを利用し、せめてもの罪滅ぼしにスカーレットの今を守りたいと思ったのだった。
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