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王都キャストール侯爵家10
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『良かった』と思えるスカーレットのキャストール侯爵を悩ます行動。しかし、この日受け取った報告にある『二重国籍』とは…。
「お嬢様はファルコールからどこかへ行くつもりはないそうです。その為にこの二重国籍を手に入れたいとのこと。これは隣国のパートリッジ公爵の顔を立てることにも繋がるとお考えのようです」
遣いの者はケビンによって書かれた報告書を手渡しながら聞いてきた内容も侯爵へ伝えた。いつでも隣国に渡れるファルコールにいるスカーレットが二重国籍を得たら、確かに王家は迂闊なことなど出来なくなる。時折話題に出る、特別職をスカーレットに与え王宮に住まわすなど以ての外。
婚約破棄を受け入れる時の条件もそうだが、スカーレットは実に様々なことを考えるものだと侯爵は唸った。
「出来れば、閣下にもこれを取得していただきたいそうです。パートリッジ公爵が侯爵から侯爵夫人の生前の話を聞く機会を失わない為とすれば恐らく取得出来るだろうと」
侯爵は成る程と思わざるを得なかった。あまりスカーレットを守り過ぎると、何かの拍子に王家への忠誠がない、そんな侯爵が騎士団を管轄するのは問題だと言われかねない。確かに今はアルフレッドとスカーレットの一件があった後だから、このスタンスでいられるが、時間が経つにつれ面白くないと思う者は増える。
今ならば、隣国との関係を良好に保つ為の策と銘打ち、スカーレットと侯爵の二重国籍取得は押し通せると考えたのだろう。そしてその立場を得ることで自分達を守れると。
「丁度良い。二重国籍を取得した段階でわたしは騎士団のトップから降りよう。身軽になりたいと思っていたところだ」
「恐れながら、降ろしてもらうのは難しいのではないでしょうか」
「そうだろうか。まあ、良い。後で手紙を用意するから義兄殿へ届けてくれ」
「畏まりました」
「届けた後、帰りはファルコールで二泊くらいしてこい。これでも人遣いが荒いと反省しているのだ」
「いえ、わたしを含め誰もそんなことは思っておりません」
「では、スカーレットにこき使われているケビン達の愚痴でも聞いてくればいい」
「ケビン達は寧ろ毎日楽しんでいるかと」
「そうか。では、おまえも温泉とやらに浸かって、どういうものか実感してきてくれ。そして、わたしに報告して欲しい。だから二日は滞在してくるように」
「ありがとうございます」
侯爵は二重国籍の報告がまだ序の口だとは、この時思いもしなかった。
デズモンドとリアムの騎士宿舎での滞在、サブリナをファルコールの館へ招待することと、この後も報告は随時やってくることになろうとは。
更にハーヴァンの意見を聞き馬用施設。スコットがやって来ることによって温泉療養施設、更には医療補助係養成施設と箱物の計画案も出番を待っているだなんて。
そして何も悩みの種はスカーレットからだけではない。リプセット公爵の打診にも返事をしなくてはいけないのが、目下の急ぎ案件だ。
『あいつはクライドに断られたとしても、諦めないだろう、今度は絶対に』と公爵は言っていた。YESでもNOでも結果が同じになるのであれば、端から侯爵の配下としたほうが扱い易いのは分かっている。しかし、それはそれで癪に障るから侯爵は答えを出せないでいた。
「お嬢様はファルコールからどこかへ行くつもりはないそうです。その為にこの二重国籍を手に入れたいとのこと。これは隣国のパートリッジ公爵の顔を立てることにも繋がるとお考えのようです」
遣いの者はケビンによって書かれた報告書を手渡しながら聞いてきた内容も侯爵へ伝えた。いつでも隣国に渡れるファルコールにいるスカーレットが二重国籍を得たら、確かに王家は迂闊なことなど出来なくなる。時折話題に出る、特別職をスカーレットに与え王宮に住まわすなど以ての外。
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「出来れば、閣下にもこれを取得していただきたいそうです。パートリッジ公爵が侯爵から侯爵夫人の生前の話を聞く機会を失わない為とすれば恐らく取得出来るだろうと」
侯爵は成る程と思わざるを得なかった。あまりスカーレットを守り過ぎると、何かの拍子に王家への忠誠がない、そんな侯爵が騎士団を管轄するのは問題だと言われかねない。確かに今はアルフレッドとスカーレットの一件があった後だから、このスタンスでいられるが、時間が経つにつれ面白くないと思う者は増える。
今ならば、隣国との関係を良好に保つ為の策と銘打ち、スカーレットと侯爵の二重国籍取得は押し通せると考えたのだろう。そしてその立場を得ることで自分達を守れると。
「丁度良い。二重国籍を取得した段階でわたしは騎士団のトップから降りよう。身軽になりたいと思っていたところだ」
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「畏まりました」
「届けた後、帰りはファルコールで二泊くらいしてこい。これでも人遣いが荒いと反省しているのだ」
「いえ、わたしを含め誰もそんなことは思っておりません」
「では、スカーレットにこき使われているケビン達の愚痴でも聞いてくればいい」
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「そうか。では、おまえも温泉とやらに浸かって、どういうものか実感してきてくれ。そして、わたしに報告して欲しい。だから二日は滞在してくるように」
「ありがとうございます」
侯爵は二重国籍の報告がまだ序の口だとは、この時思いもしなかった。
デズモンドとリアムの騎士宿舎での滞在、サブリナをファルコールの館へ招待することと、この後も報告は随時やってくることになろうとは。
更にハーヴァンの意見を聞き馬用施設。スコットがやって来ることによって温泉療養施設、更には医療補助係養成施設と箱物の計画案も出番を待っているだなんて。
そして何も悩みの種はスカーレットからだけではない。リプセット公爵の打診にも返事をしなくてはいけないのが、目下の急ぎ案件だ。
『あいつはクライドに断られたとしても、諦めないだろう、今度は絶対に』と公爵は言っていた。YESでもNOでも結果が同じになるのであれば、端から侯爵の配下としたほうが扱い易いのは分かっている。しかし、それはそれで癪に障るから侯爵は答えを出せないでいた。
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