オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではございますが~

五十嵐

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王宮では16

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アルフレッドは先日渡された資料に再び目を通していた。選んだ答えが正しいのか自問自答をする為に。

その国の王は複数の妃を持ち、末姫の母親は第三側妃。四人いる妃の中で、第三側妃は一番身分が低く、一番王に愛された存在だった。過去形なのは、既に他界しているからだ。

資料には第三側妃の死因は記載されていない。けれど、四人もいる妃の中で一番身分が低いのに王の寵愛を一番に受けたとなると、考えたくはないがあまり良い死に方ではなかったと窺える。
死因が記載されていないのではなく、死因が公表されていないので記載は出来ないが正しいこの資料の読み取り方ということだ。
その証拠に末姫、マリア・アマーリエは王都の外れにある離宮で第三側妃亡き後は暮らしている。それに一番愛された妃に子が一人というのもおかしな気がする。仮令、子が時の運だとしてもだ。

マリア・アマーリエは王に愛された末姫。政治の道具としてどこかへ嫁すように命じられるのではなく、王は手元に残す為に婿探しをしているのだ。
では、婿の条件は?
簡単なことだ、マリア・アマーリエを心から愛し大切に出来る男。そしてマリア・アマーリエに日の当たらない部分を見させない為に薄暗い部分全てを引き受けられる男だろう。

アルフレッドは直ぐに送られてきた、白羽の矢を立てた家の当主からの返信を今度は見た。
『喜んで拝命いたします』と書かれた手紙。本当にこの選択で正しいのか、何度目かの不安がやって来た。

二者択一。選択肢は二つしかない。それなのにこんなに悩むとは。それも、既に片方の当主から許可を得た後だというのに。
ふと、父である国王ならどちらを選んだのかアルフレッドは知りたくなった。甘えなのは分かる、しかし答え合わせをしたいと思ったのだ。
候補者を決める時間は限られている。だからアルフレッドは侍従に直ぐに父の時間を確認するよう命じた。そして得た、大切な時間。アルフレッドは単刀直入に手紙を見せながら尋ねたのだった。

「これがわたしの答えです。でも、これが正解か分かりません」
「正解は誰にも分からん。それが分かれば世の中誰も苦労はしないだろう。おまえ達の婚約もそうだ。正解ではなく最善を選んだはずだった。しかし不正解に終わった」
「…」
「このカードを切るということは、おまえは個人の感情ではなく、利を考えた、そういうことだな?」
「それすらもう分からなくなりました。切らなかった方のカードがどう動くかでわたしの気持ちが救われる可能性があります。それは、個人の感情を優先させたことにはならないでしょうか」
「さあな。しかし、選ぶ以上は最善でなければならない。決めたのならば、その選択を最善にしろ。相手から婿として選ばれるよう、次は付加価値を考えなくてはならぬ。スカーレットが何を国にもたらす予定だったか、それを取りそこなったおまえなら良く分かるだろう。分かっていたからそのカードを切った、そう見えたが」
「…はい」
「それと、新たな側近探しも始めておけ。間違っても関係改善の為にとダニエル・ジュード・キャストールだけは選ぶなよ。そもそもまだ学院生だ、時間の制約があるだろうて」

正解がない答え探し。後は限りなく正解へ近付けるまで。アルフレッドはそれが答えなのだと理解した。
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