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世の中上手く出来ている。プラスがあればマイナスがあるし、上昇があれば下降がある。どちらか一方にずっと進むことはない。
それを言葉と態度で教えてくれるのは、スカーレットの傍にいる侍女ナーサ。
ハーヴァンの諸々の服を最低限揃えるようスカーレットに言われたナーサは、早速その役割を担ってくれた。
「ハーヴァンさん、下着や靴下も揃えますけど、どれくらい必要ですか?」
「ナーサさん、わたしのことはハーヴァンとお呼び下さい」
「わたしはしがない男爵家の三女ですもの、子爵家のハーヴァンサマをハーヴァンさんと呼ぶだけでも憚られるというのに…」
早速、ナーサがスカーレットのことをキャロルさんと呼べと釘を刺してきた。ハーヴァンは周囲にナーサしかいないことを確認すると、雰囲気も態度も変え話し出した。
「ねぇ、君も身分ある方の侍女が本職であっているよね。だったら主の意向をしっかり認識したら?」
「わたしは常に仕える方を思っています!」
「ナーサ、それは違うよ。仕える方がどうして欲しいか先回りしないと。それじゃあ確かに子爵家出の従者に、男爵家出の侍女はいつまでも敵わない」
ナーサの目は口程に物を言う、その視線は正しく『カチンときた』だった。しかし、ナーサとて侯爵家に仕える身、目力はコントロール出来なくてもアンガーマネジメントはやってのける。
「それではまるでハーヴァンサマが、わたしが心からお仕えする方のご意思を理解しているみたいですわね」
「100%かは分からないけれど、どうやらそのようだ」
「あなた、本当の性格は随分なのね」
「どうだろう?俺も馬の世話しか出来ないしがない子爵家の次男だから、上手く世の中を渡っていかないといけないだけさ。分かるだろ、世の中を渡るには先を読まなければいけないと。そこには仕える主の気持ちを先読みすることもあるって」
悔しいけれどハーヴァンの言っていることはなんとなく正しいとナーサは思ったのだろう、それすら目に浮かんでいる。
「キャロルはこの先もこのファルコールで楽しく暮らしていきたい。それも信用する君達と主従関係ではなく、家族のように。俺のその認識は合っている?」
「悔しいけれど、合っている」
「だったら、呼び方を変えてごらん。きっと、彼女は喜ぶはず。君にとっては大変なことだろうけど、得られるものは素晴らしいものになる。大切な人との距離がもっと縮まるさ。そして君がそうすることによって、他の人も彼女の喜ぶ顔を見たいと思い呼び方がどんどん変わっていくだろう。君が主の心を感じ取り率先して望む未来を提供するんだ」
「でも…」
「俺が彼女をキャロルと呼べば、君も呼び易くなる」
「なんだか言い包められた感がものすごいんだけど」
「その認識は合っている。言い包めたんだから。だけど、抵抗せずにそうしてごらん」
「…あなたの方が年上で従者歴が長いからかしら、それとも」
「何でもいいから試して。それに俺はその内いなくなる。そのタイミングで方針を変えるかどうかは君の掌中にあるさ」
「…分かった」
「じゃあ、本題に。服は動き易いシャツを二枚、下着と靴下は三組欲しい。これ以上お願いするとここでの労働が長くなりなかなか王都へ戻れなくなるだろうから」
「分かった。まあ、従者とはいえ、あなたの荷物も少しはあったようだものね、洗濯すれば間に合うわね」
「確認だけど、洗濯は流石にキャロルがすることはないよな?」
「あら、鼻歌を歌いながら干すことがあるわよ」
「…」
「洗濯を自分でしたくなったら、わたしに声を掛けて。干す場所も含めて案内するわ」
「ああ、頼む。それと、ケビンさん達と相談したいことがあるんだけれど、今どこにいるか教えてくれる?」
ここにジョイスがいた場合に考えることを先読みするならば、マーカム子爵対策。どうしてスカーレットが自ら挨拶へ向かおうとするのかは分からないが、それを含めケビン達から話を聞き対策を練らなくてはいけないとハーヴァンは思ったのだった。
それを言葉と態度で教えてくれるのは、スカーレットの傍にいる侍女ナーサ。
ハーヴァンの諸々の服を最低限揃えるようスカーレットに言われたナーサは、早速その役割を担ってくれた。
「ハーヴァンさん、下着や靴下も揃えますけど、どれくらい必要ですか?」
「ナーサさん、わたしのことはハーヴァンとお呼び下さい」
「わたしはしがない男爵家の三女ですもの、子爵家のハーヴァンサマをハーヴァンさんと呼ぶだけでも憚られるというのに…」
早速、ナーサがスカーレットのことをキャロルさんと呼べと釘を刺してきた。ハーヴァンは周囲にナーサしかいないことを確認すると、雰囲気も態度も変え話し出した。
「ねぇ、君も身分ある方の侍女が本職であっているよね。だったら主の意向をしっかり認識したら?」
「わたしは常に仕える方を思っています!」
「ナーサ、それは違うよ。仕える方がどうして欲しいか先回りしないと。それじゃあ確かに子爵家出の従者に、男爵家出の侍女はいつまでも敵わない」
ナーサの目は口程に物を言う、その視線は正しく『カチンときた』だった。しかし、ナーサとて侯爵家に仕える身、目力はコントロール出来なくてもアンガーマネジメントはやってのける。
「それではまるでハーヴァンサマが、わたしが心からお仕えする方のご意思を理解しているみたいですわね」
「100%かは分からないけれど、どうやらそのようだ」
「あなた、本当の性格は随分なのね」
「どうだろう?俺も馬の世話しか出来ないしがない子爵家の次男だから、上手く世の中を渡っていかないといけないだけさ。分かるだろ、世の中を渡るには先を読まなければいけないと。そこには仕える主の気持ちを先読みすることもあるって」
悔しいけれどハーヴァンの言っていることはなんとなく正しいとナーサは思ったのだろう、それすら目に浮かんでいる。
「キャロルはこの先もこのファルコールで楽しく暮らしていきたい。それも信用する君達と主従関係ではなく、家族のように。俺のその認識は合っている?」
「悔しいけれど、合っている」
「だったら、呼び方を変えてごらん。きっと、彼女は喜ぶはず。君にとっては大変なことだろうけど、得られるものは素晴らしいものになる。大切な人との距離がもっと縮まるさ。そして君がそうすることによって、他の人も彼女の喜ぶ顔を見たいと思い呼び方がどんどん変わっていくだろう。君が主の心を感じ取り率先して望む未来を提供するんだ」
「でも…」
「俺が彼女をキャロルと呼べば、君も呼び易くなる」
「なんだか言い包められた感がものすごいんだけど」
「その認識は合っている。言い包めたんだから。だけど、抵抗せずにそうしてごらん」
「…あなたの方が年上で従者歴が長いからかしら、それとも」
「何でもいいから試して。それに俺はその内いなくなる。そのタイミングで方針を変えるかどうかは君の掌中にあるさ」
「…分かった」
「じゃあ、本題に。服は動き易いシャツを二枚、下着と靴下は三組欲しい。これ以上お願いするとここでの労働が長くなりなかなか王都へ戻れなくなるだろうから」
「分かった。まあ、従者とはいえ、あなたの荷物も少しはあったようだものね、洗濯すれば間に合うわね」
「確認だけど、洗濯は流石にキャロルがすることはないよな?」
「あら、鼻歌を歌いながら干すことがあるわよ」
「…」
「洗濯を自分でしたくなったら、わたしに声を掛けて。干す場所も含めて案内するわ」
「ああ、頼む。それと、ケビンさん達と相談したいことがあるんだけれど、今どこにいるか教えてくれる?」
ここにジョイスがいた場合に考えることを先読みするならば、マーカム子爵対策。どうしてスカーレットが自ら挨拶へ向かおうとするのかは分からないが、それを含めケビン達から話を聞き対策を練らなくてはいけないとハーヴァンは思ったのだった。
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