51 / 586
36
しおりを挟む
話は戻って、ドミニク達が出立した日のこと。薫は改めてケビンとノーマンの能力に感心していた。
「ねぇ、あなた達は天候の勉強もしてきたの?」
「勉強というより、今まで覚えてきたことを応用しています」
「でも、それは地域毎によね?だって、海の近くと山では傾向が違うでしょ」
「そうですね、地域や時期によって違いがあるのは当然なんで、それぞれ覚えていますよ。特にキャストール侯爵領に関しては細かく」
「凄いわ。じゃあ、その年の傾向とかも分かるのかしら?例えば、いつもよりも雨が多そうとか、気温が低そうだとか」
「分かるとまではいきませんが、予測はします。地域毎の予兆も覚えているので、それも加味して。例えば水仙の花の開花期間で暑さを、沢付近のシダ類の生育で雨の期間をといった具合に。俺達は天候を味方に付けた方が何倍も有利に活動できますから」
二人の話を聞きながら、薫は成る程と理解した。足が泥濘に取られれば動き辛い。異常な暑さは疲れやすくなる。確かに、天候を味方に付けた方が彼らは活動しやすかったことだろう。しかもその指針としている植物は自生地が水辺の近くだったり、高い湿度を好むものだったりと押さえておくべきところはしっかり押さえているのだ。
流石間諜、侮れない。
衛星技術が発展している前世でも、過去の統計を用いて『晴れの特異日』や、桜の標準木から開花予想などがあったのだから、彼らの予測方法は的を射たものなのだろう。
早朝から降り続いた雨はケビン達が予想した通り、時間を追う毎に強さを増している。向かった方向は違っても、空と雲の様子からドミニク達も騎士達も早めにここを出立して正解だった。
「これなら皆無事に目的地までの距離を稼げたわよね」
「そうですね、大丈夫だと思います。それにこの風の強さならこの雨は今夜中には止みます。雨雲の下から早めに離れれば、後は足元だけを注意すれば大丈夫でしょう」
「じゃあ、次のゲストの道中には影響はないわね」
「はい。道への影響は二、三日もすれば落ち着くはずです。長距離移動馬車が動くまで、町の宿泊所は延泊客だらけでしょうね」
国境検問所はドミニク達が通過してから一時間後くらいに安全の為通行止めになったと報告を受けている。本当にケビンとノーマンの能力には感謝しなければ。
「キャロルさんは今日と明日は館の中で過ごして下さい」
「どうして?雨は夜には止むのよね?」
「だからです。私兵達も勿論警戒しますが、暴風雨で視界が悪くなるからこそ、山を抜けてファルコールへやって来る者の可能性が高まります。そういう者もまた天気には詳しいですから」
しかし、実際にファルコールの館に深夜やって来たのは天気に詳しくない人物二人。しかも、一人は怪我人、もう一人はまさかの人物だった。本来ならば館への通行は私兵達に阻まれる。しかし、ファルコールの私兵ですら知るその家紋を見せられては、お帰りいただくことが出来ない人物だったのだ。
「ねぇ、あなた達は天候の勉強もしてきたの?」
「勉強というより、今まで覚えてきたことを応用しています」
「でも、それは地域毎によね?だって、海の近くと山では傾向が違うでしょ」
「そうですね、地域や時期によって違いがあるのは当然なんで、それぞれ覚えていますよ。特にキャストール侯爵領に関しては細かく」
「凄いわ。じゃあ、その年の傾向とかも分かるのかしら?例えば、いつもよりも雨が多そうとか、気温が低そうだとか」
「分かるとまではいきませんが、予測はします。地域毎の予兆も覚えているので、それも加味して。例えば水仙の花の開花期間で暑さを、沢付近のシダ類の生育で雨の期間をといった具合に。俺達は天候を味方に付けた方が何倍も有利に活動できますから」
二人の話を聞きながら、薫は成る程と理解した。足が泥濘に取られれば動き辛い。異常な暑さは疲れやすくなる。確かに、天候を味方に付けた方が彼らは活動しやすかったことだろう。しかもその指針としている植物は自生地が水辺の近くだったり、高い湿度を好むものだったりと押さえておくべきところはしっかり押さえているのだ。
流石間諜、侮れない。
衛星技術が発展している前世でも、過去の統計を用いて『晴れの特異日』や、桜の標準木から開花予想などがあったのだから、彼らの予測方法は的を射たものなのだろう。
早朝から降り続いた雨はケビン達が予想した通り、時間を追う毎に強さを増している。向かった方向は違っても、空と雲の様子からドミニク達も騎士達も早めにここを出立して正解だった。
「これなら皆無事に目的地までの距離を稼げたわよね」
「そうですね、大丈夫だと思います。それにこの風の強さならこの雨は今夜中には止みます。雨雲の下から早めに離れれば、後は足元だけを注意すれば大丈夫でしょう」
「じゃあ、次のゲストの道中には影響はないわね」
「はい。道への影響は二、三日もすれば落ち着くはずです。長距離移動馬車が動くまで、町の宿泊所は延泊客だらけでしょうね」
国境検問所はドミニク達が通過してから一時間後くらいに安全の為通行止めになったと報告を受けている。本当にケビンとノーマンの能力には感謝しなければ。
「キャロルさんは今日と明日は館の中で過ごして下さい」
「どうして?雨は夜には止むのよね?」
「だからです。私兵達も勿論警戒しますが、暴風雨で視界が悪くなるからこそ、山を抜けてファルコールへやって来る者の可能性が高まります。そういう者もまた天気には詳しいですから」
しかし、実際にファルコールの館に深夜やって来たのは天気に詳しくない人物二人。しかも、一人は怪我人、もう一人はまさかの人物だった。本来ならば館への通行は私兵達に阻まれる。しかし、ファルコールの私兵ですら知るその家紋を見せられては、お帰りいただくことが出来ない人物だったのだ。
25
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる