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第2章 学院編
第18話 一番恐い人は……
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その日の夜。
珍しくカーネルの部屋の中にて。
カーネルはルイスにこれまでにないほど激怒していた。
「ふざけないで! 何よ試合中にボーッとして!」
彼女の怒りが頂点に達したその時、剣聖による本気のパンチがルイスの頬に的中した。
それを受けたルイスは、背後の壁まで飛んでいき、全身を強く打ちつけた ──
「……、すみませんすみませんすみません! マジですんませんした!」
──が、直ぐに土下座をし始めた。
鼻からは鼻血がドバッと出ており、彼の額は床に擦り付けられている。
そんな彼の様子に、ハァとため息を吐いてから、カーネルはなるべく怒りを抑えて言葉を紡いだ。
「流石にやりすぎたわ。でもこれだけは言わせて。もう二度とあんな姿を見せないで」
「はいっ! 絶対の絶対に!」
ルイスは土下座したまま、力強く即答する。
「後、次の試験で落ちたら、どうなるか分かっているわよね?」
「は、はい!」
ルイスは今日、この世で一番恐い存在を知ってしまった。
それは、ここ最近一番身近にいた人物。
──カーネル・クリューツ。
これは絶対に怒らせてはいけない存在だ。
心にそう刻み込んだルイスであった。
例の件から数日が経ち、遂に最後のチャンスがやってきた。
「それじゃあ。絶対に合格してくるから」
「絶対にね」
今のルイスには、前のような緊張はない。
絶対に勝つ。それだけだ。
この日もルイスは一回戦目であり、控室へと向かう。
暫く精神統一していると、控室のドアが開かれた。
この部屋にはルイスを含めて四人しかいなかったので、おそらく最後の一人だろう。
だが、それはあまりにも予想外の人物だった。
「ッお、お前……」
動揺しながらルイスを指差す受験者。
その正体は──
「……クラウス・ミース……」
かつてルイスを馬鹿にしていたCランク冒険者。
カーネルとパーティを組んでから顔を見ていないと思ったが、そういうことか。
「な、なんでお前がここにいるんだよ……。Eランク冒険者の雑魚が、受かるわけないだろ」
「もうEランクじゃない。俺はAランクだ」
「何を言ってるんだ! そんなわけ──」
「待機室にいる受験生の方々。まもなく第一試合が始まりますので、試合場へと向かってください」
クラウスの声が、審判の声によって遮られる。
信じられない、といった顔をしている彼を無視して、ルイスは試合場へと向かった。
今回は八人ではなく、五人となっている。
剣士は二人、魔術師と弓士が一人ずつで、残る一人がルイスだ。
弓士は命中精度、速度ともにトップクラスの遠距離攻撃を放つことが出来るので、注意するべきだろう。
「それでは、試合開始!」
審判の声が響き渡ると同時に、クラウスがルイスへと突っ込んだ。
大きく剣を振りかぶった彼は、勢いよくルイスへと振り下ろす。
ルイスは、それを片手の剣で下から抑えようとした。
クラウスはああ見えて【剣豪】を授けられている。
剣の技量だけであったらルイスを大きく上回るだろう。
よって。
「おいおい、多少は強くなったみてぇだが、まだまだだなぁ」
ルイスは彼に押されている。
だが、これが最大の好機だ。
もう片方の手に持った杖をクラウスに向けて。
「炎の大砲!
大きな炎の球が間近から放たれる。
「ックソ!」
慌てて避けようとするクラウスだったが、この距離からは不可能だ。
もろに攻撃を受けた彼は、あまりの激痛に意識を失った。
周りを確認すると、残るは弓士のみ。
しかし、その弓士はもう満身創痍の状態であった。
「旋風!」
杖の先から途轍もない勢いの風が巻き起こされる。
それは弓士を呑み込み、場外へと吹き飛ばした。
「第一試合、勝者ルイス・サストレ!」
あぁ。合格だ。
「よっしゃぁぁぁ!」
彼は勝利の雄叫びをあげた。
珍しくカーネルの部屋の中にて。
カーネルはルイスにこれまでにないほど激怒していた。
「ふざけないで! 何よ試合中にボーッとして!」
彼女の怒りが頂点に達したその時、剣聖による本気のパンチがルイスの頬に的中した。
それを受けたルイスは、背後の壁まで飛んでいき、全身を強く打ちつけた ──
「……、すみませんすみませんすみません! マジですんませんした!」
──が、直ぐに土下座をし始めた。
鼻からは鼻血がドバッと出ており、彼の額は床に擦り付けられている。
そんな彼の様子に、ハァとため息を吐いてから、カーネルはなるべく怒りを抑えて言葉を紡いだ。
「流石にやりすぎたわ。でもこれだけは言わせて。もう二度とあんな姿を見せないで」
「はいっ! 絶対の絶対に!」
ルイスは土下座したまま、力強く即答する。
「後、次の試験で落ちたら、どうなるか分かっているわよね?」
「は、はい!」
ルイスは今日、この世で一番恐い存在を知ってしまった。
それは、ここ最近一番身近にいた人物。
──カーネル・クリューツ。
これは絶対に怒らせてはいけない存在だ。
心にそう刻み込んだルイスであった。
例の件から数日が経ち、遂に最後のチャンスがやってきた。
「それじゃあ。絶対に合格してくるから」
「絶対にね」
今のルイスには、前のような緊張はない。
絶対に勝つ。それだけだ。
この日もルイスは一回戦目であり、控室へと向かう。
暫く精神統一していると、控室のドアが開かれた。
この部屋にはルイスを含めて四人しかいなかったので、おそらく最後の一人だろう。
だが、それはあまりにも予想外の人物だった。
「ッお、お前……」
動揺しながらルイスを指差す受験者。
その正体は──
「……クラウス・ミース……」
かつてルイスを馬鹿にしていたCランク冒険者。
カーネルとパーティを組んでから顔を見ていないと思ったが、そういうことか。
「な、なんでお前がここにいるんだよ……。Eランク冒険者の雑魚が、受かるわけないだろ」
「もうEランクじゃない。俺はAランクだ」
「何を言ってるんだ! そんなわけ──」
「待機室にいる受験生の方々。まもなく第一試合が始まりますので、試合場へと向かってください」
クラウスの声が、審判の声によって遮られる。
信じられない、といった顔をしている彼を無視して、ルイスは試合場へと向かった。
今回は八人ではなく、五人となっている。
剣士は二人、魔術師と弓士が一人ずつで、残る一人がルイスだ。
弓士は命中精度、速度ともにトップクラスの遠距離攻撃を放つことが出来るので、注意するべきだろう。
「それでは、試合開始!」
審判の声が響き渡ると同時に、クラウスがルイスへと突っ込んだ。
大きく剣を振りかぶった彼は、勢いよくルイスへと振り下ろす。
ルイスは、それを片手の剣で下から抑えようとした。
クラウスはああ見えて【剣豪】を授けられている。
剣の技量だけであったらルイスを大きく上回るだろう。
よって。
「おいおい、多少は強くなったみてぇだが、まだまだだなぁ」
ルイスは彼に押されている。
だが、これが最大の好機だ。
もう片方の手に持った杖をクラウスに向けて。
「炎の大砲!
大きな炎の球が間近から放たれる。
「ックソ!」
慌てて避けようとするクラウスだったが、この距離からは不可能だ。
もろに攻撃を受けた彼は、あまりの激痛に意識を失った。
周りを確認すると、残るは弓士のみ。
しかし、その弓士はもう満身創痍の状態であった。
「旋風!」
杖の先から途轍もない勢いの風が巻き起こされる。
それは弓士を呑み込み、場外へと吹き飛ばした。
「第一試合、勝者ルイス・サストレ!」
あぁ。合格だ。
「よっしゃぁぁぁ!」
彼は勝利の雄叫びをあげた。
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