無能のレッテル裏返してみたら、実は最強でした 〜ハズレ授能持ちの無能と蔑まれていた少年、ある日とんでもない力に目覚める〜

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第2章 学院編

第16話 カーネルの試験

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二日目も彼らの名前は記されていなかった。
特に目立った戦闘もなく、ルイスは魔術教本で復習をしてから眠りに落ちた。



迎えた三日目。
対戦組み合わせ表には、第四試合にカーネルの名が記されていた。


「あいつの魔術すげーな。俺は光属性魔術習得出来なかったぞ」

試験は巨大な円形闘技場で行われている。
今ルイスたちがいるのはその闘技場の観客席。

第二試合の終わりの兆しが見え始めたところで、カーネルを席を立った。

「そろそろ行くわ」
「おう! 頑張ってこい!」

ルイスが励ましの言葉を送ると、一つ頷いてから待機室へと向かった。

「第二試合、勝者ラウール・グスマン!」

審判の力強い声が響き渡る。
ルイスと同じように観客席で観戦している受験者たちは、光属性魔術の珍しさにボソボソ声を漏らしていた。

続く第三試合。
一人が大怪我をしたことを除けば、普通の試合だった。
大怪我をした受験者は担架に運ばれ、回復班らしき集団に回復魔術をかけられていた。

そして大本命の第四試合が始まる。
カーネルを除いた七人の出場者の中で一際目立っているのは、高貴なドレスを纏ったお嬢様。
背丈ほどもある杖を手に持っているので、魔術師なのだろう。
二番目なら可能性はまだ無くならないにしても、彼女にはここで合格してほしい。

「カーネル、頑張れー!」

観客席から大声で応援した。
彼女は気づいていない様子で、ピクリとも動かない。
おそらく集中しているのだろう。
ルイスは心の中でもう一度声援を送った。

「それでは、試合開始!」

審判による開始の合図が響く。
それと同時に魔術師らは一斉に杖を掲げた。
魔術師が得意とする間合いは約十メートルだ。
それ以上離れれば攻撃を的中させることは難しくなるし、反対にそれ以上近付けば詠唱する間に剣士に間合いを詰められるリスクが上がる。
見たところ全員がそれぞれ八メートル程離れているので、魔術師には少し不利かもしれない。
反対に言えば、カーネルは有利ということだ。

魔術師の数は三人、剣士の数は五人。
果たして試合はどう動くのか。

三人の魔術師は、魔術師同士の戦いは得策ではないと踏んだか、一人はカーネルを、もう二人は別の剣士に魔術を放った。
それをカーネルは華麗に剣で捌いてみせる。
が、もう一方は二発目を避けることが叶わなかったそうだ。
雷属性魔法による痺れで一人が気を失う。

「一発で意識を刈り取るとは……。恐ろしいな」

それはあのお嬢様が放ったものだろう。
ルイスは、自分では到底成し得ない技量の高さに身震いした。


着々と試合は進んでいき、残るは魔術師一人、剣士二人の計三名。
そのうちの一人であるオレンジ色の長髪少女は、たった今もう一人の剣士を場外へぶっ飛ばして脱落させたところだ。
そしてカーネルがお嬢様へと視線を向ける。
すると彼女は杖を地面に置き、両手を上げて降参の意志を示した。
カーネルの実力は相当のものだが、彼女もやり手の魔術師だとルイスは感じていた。
故にその結果は驚くものだったが、次第にカーネルが無事合格出来たことへの安堵感が胸中を占めていった。


その日の夜。
とある宿の食堂にて。

「合格おめでとう! カーネル!」
「えぇ。ありがとう」

ルイスの言祝ぎに、彼女は照れ臭そうに返事した。
カーネルは今日のために三年以上も頑張ってきたのだ。
それが報われたというのだから、きっと形容しがたい喜びに襲われていることだろう。
だが、彼女の顔には少し複雑な感情が混ざっているように感じられる。
それが試験での最後の一件からだというのはすぐに気がつくことが出来た。

「カーネル……別に──」
「──いいの。だから、私。もっともっと強くなるわ」

彼女はルイスの言葉を遮って、新たな決意を口にする。
あぁ。俺が心配することじゃなかったなと。

「おう!」

力強く笑ってみせたのだった。
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