無能のレッテル裏返してみたら、実は最強でした 〜ハズレ授能持ちの無能と蔑まれていた少年、ある日とんでもない力に目覚める〜

茶黒 

文字の大きさ
上 下
13 / 20
第2章 学院編

第13話 彼女のアタック開始

しおりを挟む
「いらっしゃい」

声から考えるに年配の女性らしき人が店の奥から声をかけてくれた。
その人は怪しげなローブを纏っていて、具体的な容姿が見えない。
反射的に剣の柄に手を添えてしまった。

「そんなに警戒せんでおくれ。わしはこの店の店主じゃよ」

そう言いながらローブのフードを取ると、中から元気そうなおばちゃんの顔が覗いた。
警戒を解いて安心する二人。

「このお店はどんなものを取り扱っているのかしら?」

カーネルの質問に「うーん……」と頭を少し悩ませたおばちゃん。

「雑貨屋みたいなもんじゃな」
「なるほど」

ルイスは主に小道具コーナーを見ている。
カーネルは何やらおばちゃんと相談しているようだ。


「お嬢ちゃん、彼のことが好きなんじゃろ」

突然耳元で囁かれてビクリと体を震わすオレンジ色の長髪美少女。

「べ、べ別に、好きなんかじゃない……のよ」

慌てて答える彼女の顔は、リンゴのように赤くなっていた。
一応ルイスを見てみるが、バレている様子はなさそうだった。

「この液体を飲ませれば一瞬じゃよ」

おばちゃんは商品を一つ手に取って彼女の手に渡す。

「え? こんなのいいです──」
「── 無料タダじゃよ。楽しい夜を過ごすんじゃぞ」

そう言うとおばちゃんは少年の方に行った。

「これって魔道具か?」
「そうじゃよ。これはねぇ、──」



それからこの店で買い物をした後、料理店で昼食を摂り、その他の買い物も済ませた。
それだけでもう日が暮れてきたので、試験の申し込みは明日に回すことになった。
宿に戻った後、昨日同様晩御飯まで各自待機となったのだが。

「好き……なのかしら」

一人、自分以外誰もいない部屋の中ポツリと呟いた。
実は先の一件以降胸の高鳴りが止まらない彼女である。

確かに好き、かもしれない。

私は両親についてなにも覚えていない。
産まれてすぐ捨てられたそうだ。
そんな私を大切にしてくれた人がいた。
私を拾って育ててくれた今の父と母だ。
勿論父と母には感謝もしているし、家族として大好きだった。
でも、本当の両親ではないと知った時、私はまるで彼らが他人のように見えてしまったのだ。
態度には出ないようにしていたが、その気持ち悪さはずっと私の心を蝕み続けた。
そして、そんな私は自分の授能を知った時に冒険者になることを決めた。
三年間冒険者として頑張ってきた私は、ある日一人の少年と出会った。
名をルイスという。当時Bランクの私とは土俵が違う、Eランク冒険者だった。
ある時、ルイスが両親を失っていると聞いた時、少し気持ちが楽になったのを覚えている。
私よりも辛い状態だとだというのに、めげずに過ごしている。
私は──そんな彼に憧憬と恋心を抱いているのだろう。

「だから。私はこんなモノに頼らずに、彼を落として見せるわ」

そして、彼女は手に握りしめたそれをゴミ捨て場に投げ入れたのだった。



「──な、なぁ。お前、なんかあったか?」
「別に。いつも通りよ」

それは──食堂で晩御飯を食べる時間。
彼女はこれまで通りの彼の対面ではなく。
彼の隣で、肩と肩がぶつかるぐらいの距離に座っていた。


──それから、彼女の攻撃アタックが始まるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...