無能のレッテル裏返してみたら、実は最強でした 〜ハズレ授能持ちの無能と蔑まれていた少年、ある日とんでもない力に目覚める〜

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第2章 学院編

第12話 赤く染まった草花

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『ここは──』

懐かしい、と感じたのはここに来たのが初めてではないからだろう。
風に乗って運ばれる花々のいい匂いが、彼の嗅覚を刺激する。
体を起こすと、そこに見えるのは十歳ほどの男女の姿。
おそらく両親だろう。前回よりも大分成長しており、面影が残っている。
だが、父の顔に余裕はなかった。

『イェルク! ダメ!』

イェルクとは父の名だ。
驚くことに、父は腰に付いていた短剣を自分の腹に向けて刺そうとしていた。
母がその手を必死に抑えていたが、男女の力量の差は明白。
段々と短剣が父の体にめり込んでいき、傷口からはドロドロと流血している。

『こんな授能じゃ……英雄になんてなれっこない……!』

父の目は血走っていた。正気の沙汰ではない。
やがて父は意識を失い、バタンと倒れた。

『イェルク! イェルク、しっかりして!』

止まらずに溢れ出る血は当たりの草花を赤く染めていく。
見るも無惨な父の姿に、ルイスの顔が引き攣っていった。

『神様……! どうか、どうかイェルクを助けて……!』

少女は閉じた瞼からボトボトと大粒の涙を零し、懇願するように手を組んだ。
刹那、少年の体を覆うように幾何学模様の陣が浮かび上がる。
それが眩い光を発したかと思うと、いつのまにか少年の傷は完全に癒えていた。
それから少しすると父は目を覚まし……


「──ス! ──イス! ルイス!」
「──!」
「大丈夫かしら? 魘されている様子だったけれど」

目を開くと、ドアップで目に映るカーネルの顔。
彼女は起きたことに気付いて顔を離した。

「あ、あぁ。心配しないでくれ。大丈夫だ」
「そう。晩御飯の用意が出来ているわ。冷めないうちに食堂に来なさいね」

そう言いおくと、部屋から出て行ってしまった。
ルイスは落ち着くために深呼吸をする。
夢の中での光景が頭から離れず、少し気分が悪い。
いつまでここにいても仕方がないので、取り敢えず食事を摂ることにした。

ルイス達の部屋は二階で、食堂は一階にある。
階段を降りた先に冒険者らしき人達によって盛り上がっている食堂が見えた。
中を見渡してカーネルの場所を探すと、端の方にチョコンと座ってスープを飲んでいる彼女の姿を発見した。
ルイスも席に着いて、テーブルに並べられていた料理を食べ始めるのであった。



迎えた次の日。
朝起きた時には暗い気持ちもかなり取れていた。
今日は、学院の申し込みも兼ねて王都内を散策する予定だ。
朝御飯として出てきたサクサクフワフワのパンを堪能すると、準備を済ませて二人で宿を出た。

「俺達が受ける予定の学院ってどんなとこなんだ?」

カーネルは「そうね……」と考える仕草をしてから、こう答えた。

「端的に言えばこの国随一の学院で、完全な実力主義だと聞いているわ。魔術師も剣士も召喚士も一様に受験資格があって、最近はあまり無くなってきたけれど亜人種の差別で受験できないとかもないそうよ」
「へぇ、一体どういう試験内容なんだろうな」
「それは私も知らないわ」

と、そこでルイスが何かを見つけた。

「あそこの店に入ってみようぜ」


扉を開けると、ツンと鼻を刺す独特の香りがした。
中はそこまで広くなく、興味深い道具が置き並べられていた。
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