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第2章 学院編
第11話 新たな暮らしの幕開け
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それから三日が経った。
ルイスはBランクからAランクへと昇格し、口座にもしっかり換金分が入金された。
その額は一年遊んで暮らせる程のもので、当時の彼はそれを聞いた瞬間気絶してしまったとかなんとか。
学費分どころか余裕でお釣りが返ってくるほどに稼ぐことが出来たので、今日この後王都に向けてこの街を発つ予定だ。
カーネルに聞いたところ試験は二週間後で、十日前までに申し込まないといけないらしい。
故に、長年お世話になったこの家に、そして両親にお別れを告げなければならない。
家の中を歩いていくと、目に止まったのは赤色の鞘に収まった反りのある短剣。
父親が生前使っていたであろうそれは、夢の中でも見たものだ。
──そういえば、あの夢は一体なんだったのだろうか。
「幻想じゃなかったら……いいな」
誰もいない家の中、少年が一言零す。
そうだ。形見としてこの短剣を持っていこう。
少年は腰に下げた短剣を外すと、赤色の鞘と共にその短剣を装着した。
──似合っているよ。
両親の声が聞こえた気がして、なんだか嬉しくなる。
少年は家の外に出た。
目の前にあるのは両親の墓。
家の庭にあるそこには、毎日欠かさずお参りしたものだ。
「しばらく会えなくなるんだ。俺、学院に通いたくてさ。試験に落ちたら、またここに戻ってくるよ。だから──」
──ルイスなら、きっと大丈夫。
先程よりもはっきりと聞こえたその声に、少年は涙を零す。
しかし、最後にはニカッと笑ってみせた。
「行ってくるよ」
庭に植えられている花が、ルイスを応援するかのようにゆらゆらと揺れていた。
クアイリスから北東へ約二日。
途中で魔物と遭遇したりもしたが、二人の敵ではなかった。
空腹は予め持ってきていた保存食などで満たし、暇な時はひたすら会話し続けた。
そしてようやく王都に辿り着く。
「──これが王都か」
目の前に広がる巨大な門。
色々と手続きを済ませ、王都の中に入ると二人はその広さに圧倒された。
おそらくクアイリスの五倍はあるだろう。
クアイリスはこの国の中でもかなり大きい街なのだが、王都がデカすぎる。
比べること自体が酷というものだ。
次に注目するのは道を行き交う人々の多さ。
その中にはクアイリスではあまり見られなかった、所謂亜人種が多々見られる。
特にエルフ族なんかはかなり希少だ。
「まずは宿を探しましょうか」
「おう、そうだな」
しばらく商店街を歩いていると、次第に喧騒が聞こえなくなってきた。
どうやら住宅街に入ったようだ。
「あそこはどうかしら?」
彼女が指差したのは、「アルマン亭」と看板に刻まれた木造の建物。
名前からして宿で間違い無いだろう。
扉を開けると、受付に一人四十代半ばほどの男性が立っていた。
「お? お嬢さん方ここに泊まるか?」
「そのつもりだけれど、問題ないかしら?」
「あぁ。今はまだ部屋が余ってるぜ」
値段はかなり良心的で、内装もかなり綺麗であったため、ここの宿に泊まることになった。
ルイスとカーネルでそれぞれ一部屋ずつ取り、隣り合わせとなっている。
ここは朝と晩の二食付きらしく、取り敢えず晩御飯の用意が出来るまでそれぞれの部屋で待機することにした。
「疲れたー」
ルイスはベッドに腰を下ろすと、二日間に渡る移動でヘトヘトになっている体から力を抜いた。
「これから新しい毎日が始まるんだ。こんなの、数ヶ月前の俺には想像できないだろうな」
本当に、ここ最近色々なことがあった。
自害しようとした矢先授能が進化したかと思うと、Bランク冒険者にパーティに誘われ危険度Sランクの魔物まで倒してしまった。
「彼女には、本当に感謝しなくちゃな」
少年はより一層彼女への感謝の念を深めた。
ルイスはBランクからAランクへと昇格し、口座にもしっかり換金分が入金された。
その額は一年遊んで暮らせる程のもので、当時の彼はそれを聞いた瞬間気絶してしまったとかなんとか。
学費分どころか余裕でお釣りが返ってくるほどに稼ぐことが出来たので、今日この後王都に向けてこの街を発つ予定だ。
カーネルに聞いたところ試験は二週間後で、十日前までに申し込まないといけないらしい。
故に、長年お世話になったこの家に、そして両親にお別れを告げなければならない。
家の中を歩いていくと、目に止まったのは赤色の鞘に収まった反りのある短剣。
父親が生前使っていたであろうそれは、夢の中でも見たものだ。
──そういえば、あの夢は一体なんだったのだろうか。
「幻想じゃなかったら……いいな」
誰もいない家の中、少年が一言零す。
そうだ。形見としてこの短剣を持っていこう。
少年は腰に下げた短剣を外すと、赤色の鞘と共にその短剣を装着した。
──似合っているよ。
両親の声が聞こえた気がして、なんだか嬉しくなる。
少年は家の外に出た。
目の前にあるのは両親の墓。
家の庭にあるそこには、毎日欠かさずお参りしたものだ。
「しばらく会えなくなるんだ。俺、学院に通いたくてさ。試験に落ちたら、またここに戻ってくるよ。だから──」
──ルイスなら、きっと大丈夫。
先程よりもはっきりと聞こえたその声に、少年は涙を零す。
しかし、最後にはニカッと笑ってみせた。
「行ってくるよ」
庭に植えられている花が、ルイスを応援するかのようにゆらゆらと揺れていた。
クアイリスから北東へ約二日。
途中で魔物と遭遇したりもしたが、二人の敵ではなかった。
空腹は予め持ってきていた保存食などで満たし、暇な時はひたすら会話し続けた。
そしてようやく王都に辿り着く。
「──これが王都か」
目の前に広がる巨大な門。
色々と手続きを済ませ、王都の中に入ると二人はその広さに圧倒された。
おそらくクアイリスの五倍はあるだろう。
クアイリスはこの国の中でもかなり大きい街なのだが、王都がデカすぎる。
比べること自体が酷というものだ。
次に注目するのは道を行き交う人々の多さ。
その中にはクアイリスではあまり見られなかった、所謂亜人種が多々見られる。
特にエルフ族なんかはかなり希少だ。
「まずは宿を探しましょうか」
「おう、そうだな」
しばらく商店街を歩いていると、次第に喧騒が聞こえなくなってきた。
どうやら住宅街に入ったようだ。
「あそこはどうかしら?」
彼女が指差したのは、「アルマン亭」と看板に刻まれた木造の建物。
名前からして宿で間違い無いだろう。
扉を開けると、受付に一人四十代半ばほどの男性が立っていた。
「お? お嬢さん方ここに泊まるか?」
「そのつもりだけれど、問題ないかしら?」
「あぁ。今はまだ部屋が余ってるぜ」
値段はかなり良心的で、内装もかなり綺麗であったため、ここの宿に泊まることになった。
ルイスとカーネルでそれぞれ一部屋ずつ取り、隣り合わせとなっている。
ここは朝と晩の二食付きらしく、取り敢えず晩御飯の用意が出来るまでそれぞれの部屋で待機することにした。
「疲れたー」
ルイスはベッドに腰を下ろすと、二日間に渡る移動でヘトヘトになっている体から力を抜いた。
「これから新しい毎日が始まるんだ。こんなの、数ヶ月前の俺には想像できないだろうな」
本当に、ここ最近色々なことがあった。
自害しようとした矢先授能が進化したかと思うと、Bランク冒険者にパーティに誘われ危険度Sランクの魔物まで倒してしまった。
「彼女には、本当に感謝しなくちゃな」
少年はより一層彼女への感謝の念を深めた。
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