無能のレッテル裏返してみたら、実は最強でした 〜ハズレ授能持ちの無能と蔑まれていた少年、ある日とんでもない力に目覚める〜

茶黒 

文字の大きさ
上 下
11 / 20
第2章 学院編

第11話 新たな暮らしの幕開け

しおりを挟む
それから三日が経った。
ルイスはBランクからAランクへと昇格し、口座にもしっかり換金分が入金された。
その額は一年遊んで暮らせる程のもので、当時の彼はそれを聞いた瞬間気絶してしまったとかなんとか。
学費分どころか余裕でお釣りが返ってくるほどに稼ぐことが出来たので、今日この後王都に向けてこの街を発つ予定だ。
カーネルに聞いたところ試験は二週間後で、十日前までに申し込まないといけないらしい。
故に、長年お世話になったこの家に、そして両親にお別れを告げなければならない。

家の中を歩いていくと、目に止まったのは赤色の鞘に収まった反りのある短剣。
父親が生前使っていたであろうそれは、夢の中でも見たものだ。
──そういえば、あの夢は一体なんだったのだろうか。

「幻想じゃなかったら……いいな」

誰もいない家の中、少年が一言零す。
そうだ。形見としてこの短剣を持っていこう。
少年は腰に下げた短剣を外すと、赤色の鞘と共にその短剣を装着した。

──似合っているよ。

両親の声が聞こえた気がして、なんだか嬉しくなる。
少年は家の外に出た。



目の前にあるのは両親の墓。
家の庭にあるそこには、毎日欠かさずお参りしたものだ。

「しばらく会えなくなるんだ。俺、学院に通いたくてさ。試験に落ちたら、またここに戻ってくるよ。だから──」

──ルイスなら、きっと大丈夫。

先程よりもはっきりと聞こえたその声に、少年は涙を零す。
しかし、最後にはニカッと笑ってみせた。

「行ってくるよ」

庭に植えられている花が、ルイスを応援するかのようにゆらゆらと揺れていた。



クアイリスから北東へ約二日。
途中で魔物と遭遇したりもしたが、二人の敵ではなかった。
空腹は予め持ってきていた保存食などで満たし、暇な時はひたすら会話し続けた。
そしてようやく王都に辿り着く。

「──これが王都か」

目の前に広がる巨大な門。
色々と手続きを済ませ、王都の中に入ると二人はその広さに圧倒された。
おそらくクアイリスの五倍はあるだろう。
クアイリスはこの国の中でもかなり大きい街なのだが、王都がデカすぎる。
比べること自体が酷というものだ。
次に注目するのは道を行き交う人々の多さ。
その中にはクアイリスではあまり見られなかった、所謂亜人種が多々見られる。
特にエルフ族なんかはかなり希少だ。

「まずは宿を探しましょうか」
「おう、そうだな」

しばらく商店街を歩いていると、次第に喧騒が聞こえなくなってきた。
どうやら住宅街に入ったようだ。

「あそこはどうかしら?」

彼女が指差したのは、「アルマン亭」と看板に刻まれた木造の建物。
名前からして宿で間違い無いだろう。


扉を開けると、受付に一人四十代半ばほどの男性が立っていた。

「お? お嬢さん方ここに泊まるか?」
「そのつもりだけれど、問題ないかしら?」
「あぁ。今はまだ部屋が余ってるぜ」


値段はかなり良心的で、内装もかなり綺麗であったため、ここの宿に泊まることになった。
ルイスとカーネルでそれぞれ一部屋ずつ取り、隣り合わせとなっている。
ここは朝と晩の二食付きらしく、取り敢えず晩御飯の用意が出来るまでそれぞれの部屋で待機することにした。


「疲れたー」

ルイスはベッドに腰を下ろすと、二日間に渡る移動でヘトヘトになっている体から力を抜いた。

「これから新しい毎日が始まるんだ。こんなの、数ヶ月前の俺には想像できないだろうな」

本当に、ここ最近色々なことがあった。
自害しようとした矢先授能が進化したかと思うと、Bランク冒険者にパーティに誘われ危険度Sランクの魔物まで倒してしまった。

「彼女には、本当に感謝しなくちゃな」

少年はより一層彼女への感謝の念を深めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...