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第1章 冒険者編
第2話 少年は力に目覚める。そして歩み始める。
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「クソッ! クソッ! なんで……なんでこんなスキルで生まれちまったんだよぉ!」
自分の授能を知った時と同じように、己を呪い続ける。
少年は膝に顔を埋め、ひたすらに嘆いていた。
振りかぶった拳地面に叩きつけようとした瞬間、少年は殴られた時のことを想起した。
Cランク冒険者、クラウス・ミース。
彼は同い年で、冒険者を始めたのも同時期。
しかし、彼と自分には隔絶した差があった。
──授能だ。彼が得たのは【剣豪】。
これはかなりのアタリとして分類されるものである。
過去、【剣豪】を授かり必死に努力し続けた者が、剣の道として最上位に位置する【剣聖】に匹敵する力を得た事例があると言う。
それに対し自分が得た【ステージ1】。
詳細すら分からないのだ。完全なハズレである。
そんなことを考えておると、余計に虚しい気分になった。
「もういいや」
少年は吹っ切れたように立ち上がった。
下を見下ろすと、広がるのは比較的小さな崖。
だが、死ぬには十分だ。
瞼を閉じて、前方に身を預けた。
襲いかかる浮遊感。
今はそれさえも心地よく感じる。
(あぁ、やっとこの地獄から解放される)
途端、消え去った浮遊感。
いつまで経っても訪れない死の感覚に、少年は不気味さを感じる。
そして目を開けると、見えるのは土。
──そう。土だ。
よく見てみれば、自分が地面から少し離れたところで浮いていることがわかる。
摩訶不思議な状態に少年は言葉を失う。
すると、空中に浮いていた自分の体は再び重力に従って落下した。
「いってぇ……。一体何が起こってるんだ?」
訳が分からないが、とりあえず声を出してみた。
当然返事はないわけだが、突然無機質な声が脳内に響いた。
『対象者の移行条件達成を確認。【ステージ1】から【ステージ2】に移行します』
聞き覚えのある声。
必死に思い出そうと記憶を巡らせると、忘れたくて忘れたくてしょうがなかったあの日の記憶が蘇る。
それは自分の授能を鑑定するための儀式でのこと。
初めて授能を鑑定する時には、鑑定石という特殊な魔道具に触れて己に潜む神に直接尋ねなければならない。
『あなたの授能は、【ステージ1】です』
そう、その時の声だった。
「【ステージ1】って俺の授能だよな……。もしかして……!」
少年は一筋の希望を見出す。
自分の授能を知った時から、陰でずっと秘めていた一条の光。
「やっぱり……!」
己の神に尋ねると、返ってくるのはいつもと変わらない『授能 【ステージ1】』の文字
──じゃない!
『授能 【ステージ2】
効果 【上位剣士】と【上位魔導士】の授能を得る』
「っはは、ははははは」
笑えてくる。
【上位剣士】とは、剣豪よりワンランク下だがアタリと言われる授能。
【上位魔導士】もそうだ。魔導の道ではアタリの部類である。
加えて、剣と魔術のどちらも使えるのだ。
──ワクワクが止まらない。
自分の授能を知った時と同じように、己を呪い続ける。
少年は膝に顔を埋め、ひたすらに嘆いていた。
振りかぶった拳地面に叩きつけようとした瞬間、少年は殴られた時のことを想起した。
Cランク冒険者、クラウス・ミース。
彼は同い年で、冒険者を始めたのも同時期。
しかし、彼と自分には隔絶した差があった。
──授能だ。彼が得たのは【剣豪】。
これはかなりのアタリとして分類されるものである。
過去、【剣豪】を授かり必死に努力し続けた者が、剣の道として最上位に位置する【剣聖】に匹敵する力を得た事例があると言う。
それに対し自分が得た【ステージ1】。
詳細すら分からないのだ。完全なハズレである。
そんなことを考えておると、余計に虚しい気分になった。
「もういいや」
少年は吹っ切れたように立ち上がった。
下を見下ろすと、広がるのは比較的小さな崖。
だが、死ぬには十分だ。
瞼を閉じて、前方に身を預けた。
襲いかかる浮遊感。
今はそれさえも心地よく感じる。
(あぁ、やっとこの地獄から解放される)
途端、消え去った浮遊感。
いつまで経っても訪れない死の感覚に、少年は不気味さを感じる。
そして目を開けると、見えるのは土。
──そう。土だ。
よく見てみれば、自分が地面から少し離れたところで浮いていることがわかる。
摩訶不思議な状態に少年は言葉を失う。
すると、空中に浮いていた自分の体は再び重力に従って落下した。
「いってぇ……。一体何が起こってるんだ?」
訳が分からないが、とりあえず声を出してみた。
当然返事はないわけだが、突然無機質な声が脳内に響いた。
『対象者の移行条件達成を確認。【ステージ1】から【ステージ2】に移行します』
聞き覚えのある声。
必死に思い出そうと記憶を巡らせると、忘れたくて忘れたくてしょうがなかったあの日の記憶が蘇る。
それは自分の授能を鑑定するための儀式でのこと。
初めて授能を鑑定する時には、鑑定石という特殊な魔道具に触れて己に潜む神に直接尋ねなければならない。
『あなたの授能は、【ステージ1】です』
そう、その時の声だった。
「【ステージ1】って俺の授能だよな……。もしかして……!」
少年は一筋の希望を見出す。
自分の授能を知った時から、陰でずっと秘めていた一条の光。
「やっぱり……!」
己の神に尋ねると、返ってくるのはいつもと変わらない『授能 【ステージ1】』の文字
──じゃない!
『授能 【ステージ2】
効果 【上位剣士】と【上位魔導士】の授能を得る』
「っはは、ははははは」
笑えてくる。
【上位剣士】とは、剣豪よりワンランク下だがアタリと言われる授能。
【上位魔導士】もそうだ。魔導の道ではアタリの部類である。
加えて、剣と魔術のどちらも使えるのだ。
──ワクワクが止まらない。
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