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三柱の世界

いっそ全身を縛りたい本能のままに*

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なんやかんやありましたが、私は元気です。
残念な魔法チートだけど、挫けない。めげない。諦めない。いつか素敵な長文呪文を唱えながら格好良いポーズで華麗に魔法の杖を操ってみせるわ!

今回教えてもらった避妊魔法も長文呪文あるけど、唱え始めて冒頭、最初の数文字で魔法が発動してしまい、全部唱える必要が無かった。
仮に全部唱えてしまったら人体が爆発するとロザンナ医師に止められてしまった。人体って私の体のことである。爆発したら死にますやん。
これで分かったことだが、別に擬音語じゃなくても何かの単語でも魔法は発動するらしい。発動させたい魔法内容に近しい言葉であれば大丈夫っぽい。

そういえば、"声に魔力を乗せて魔法の呪文をつくる"って最初に魔法教えてくれたアザレアさんもおっしゃってましたね。
あの時、鍵をかける音"ガチャン"という擬音で魔法が発動したから擬音じゃなきゃ駄目だという先入観があったみたい。
誰も擬音を使えなんて言ってないのにね。もっと柔軟に考えよう。
フルオラ・ナビルミと対決した時なんか怒り任せに擬音じゃない単語もバンバン使ったような気がする。あれでいいんだ。うん、声喩魔法を扱う方向性が見えた。今度やつと対決する機会があれば首チョンパしてやるわ。あ、そういや首チョンパも擬音じゃない。ルークスさんを縛るのに使ってるね。
なんだかんだ欲望が絡めば正規の使い方が出来てるのか私。本能のままやれということだね。

本能的には今、無性に醤油が恋しい。砂糖醤油に餅ひたして食いたい。海苔巻いて磯辺巻きもいいな…。
と、食べ物のことばかり考えるのは腹が減ってるからだろう。それもその筈、時刻はもう七時半。お夕飯が私を待ってる時間である。

「先生ありがとうございました」
「ロザンナさん、勉強になりました」
「ああ。アリステラはそれなりに出来るようになったが、しっかり復習しておくように。稲森初音さん、キミにはもう…言うことないな」

というか教えることがないとロザンナ医師。見捨てないでくだせええと涙目で訴えても規格外な私にこの世界の常識が当てはまるわけもなく、すっかりと避妊魔法をインスタントにマスターした挙句、日本での避妊方法をロザンナ医師に教えたところ、大変ありがたがられた。
避妊魔法の基本は体内の女性ホルモンの分泌を調整して妊娠しにくくするというものだ。日本にもあったピルという経口避妊薬と同じような効果が得られるのではないかと推察する。
でも避妊魔法は魔力が少ない人または魔力を持たない人には扱えない。そこで道具を使った避妊方法である。
お教えしたのはコンドーさんとリングについて。そんなに詳しくは知らないが……なんせ日本では初心な処女だったので。
あやふやな知識と、あと、さっき教えてもらった授業内容も総合すれば、リングの仕組みをなんとなくうっすらお伝えすることができたようである。
形状については黒い板に魔法で書いた。杖で書くと杖壊しちゃうから、指で書いたよ。この黒板みたいなのは魔法道具らしく、少しの魔力を灯すだけでスイスイ思ったこと書けて大変便利だ。

ちなみにロザンナ医師は手鎖で魔力がほぼ封印されてるけど、杖が魔力を増幅してくれているのもあって、この黒板くらいなら問題なく使えるんだって。
他にも生活一般に使われる魔法道具なら、魔力封印されてても杖があれば事足りるのだそうだ。ただ、常に杖を持ってないといけないから面倒臭いとぼやいてらしたが。

そんでもって私が、なんでリングの形状を知ってるかって?
以前、うちの兄が生き生きと教えてくれたことがあったからだよ。
うちの兄は何者だって?
女医さん目指してた元男だよ。開業医してるよ。

「避妊道具の発想は素晴らしい。特にリングは、魔法が無い世界だからこそ考えついた器具と言えるね」

地球人類が試行錯誤した結果だとは思います。先達の知恵であり私が開発したわけでもないのに自慢げに伝えてしまい申し訳ないが、これでこちらの世界で、望まぬ妊娠に怯えるような女性に役立ってくれれば嬉しい。
ありがとうございましたと再度頭を下げて、私とアリステラ姫は病院を出た。
向かう先は馬車である。本日三度目のお待たせで申し訳無いねヒースラウドさんと声を掛けようとしたところで誰か一緒に居るのに気づいた。
あの服装あの背丈あの金髪は…。

「おかえり。ハツネ殿」
「ルークスさん…ひょあ!」

有無を言わさず抱き上げられて、そのままお馬さんの背へ横向きに乗せられた。
は、早業…!

「じゃあな。ヒース、そちらの姫君はお前がきちんとお送りしろよ」

言いながらルークスさんも馬上に乗り上げ轡を握る。は。これ二人乗りっすね。
まるでお姫様のように王子様とあいのりってやつだ。
夢見て憧れたものだけど急にやってくると心がおっかなびっくりですわ。

「あわわ、またねアリステラ、ヒースさんもありがとお~~~ひゃっ」

挨拶の途中で発進させんなルークスさんめ何をそんな焦ってるのか…。
あ、まさか"茨の鎖"限界きちゃった?あれはルークスさんが、遮音の魔法を張ってるというのに何度も【耳】を侵入させようとするのが悪いんだよ。
講義を受けてる間も、避妊魔法を実践してる間も、探索の魔法「"クンクン"」で【耳】の気配を感知する度に"茨の鎖"を優しく愛撫してあげたんだけど、度重なるもんだから最早限界とか分からなくなって適当にあしらってたのは否めない。

「……!」

身動ぎしたら分かった。私のお尻に当たるソレが熱いですわ。また煽りすぎたらしい私、反省。

「ロザンナ女史と何を話していたのかはもう探らないが」
「やっと諦めてくださったようで」
「ここまで煽った責任は取ってもらうぞ」
「ひえええご勘弁を」
「無理だ。今夜は付き合ってもらう」
「はい。ご飯食べてから」
「今からだ」
「ひゃう?!」

私の肌を手の平が這う感触がする。肌というのは一箇所だけじゃない。
太腿も背中もお腹も胸までも、体中を同時に撫で回されてる。
皮膚と皮膚が擦れ合い産毛が逆立つ。その感触にぞわぞわぞくぞく身震いを起こし、私はルークスさんの胸に縋った。
ルークスさんの手は轡にある。じゃあなぜこんな感触を私は味わってるのかというと、これこそルークスさんの固有スキルに違いない。

「【手】の【感覚分離】はどうだい?私のクセそのままだろう」
「こ、こんなとこで…やらなくてもお…」

下乳を揉み上げながらキュッキュと乳首を摘んでくる感触までする。
どんだけ再現率高いんだ?!感覚を分離できるとはいえ遠隔操作だろうに、的確に弄られてます。普通に手で愛撫されると二ヶ所だけだけど、感覚を分離できちゃうルークスさんのスキルで触れられると、二ヶ所どころかの十箇所くらいいっぺんにまさぐることが可能なようだ。そんな嵐のような愛撫に耐えられるわけない。

「ふぁ…っ」

彼の胸に縋るだけじゃ足りなくなってきた。
我慢できず手に力を込めて、口寂しさに唇を舐めてやり過ごす。
馬上で、しかも帝都の街中を、ぽっくらぽっくら乗馬中にキスとか…したいけどできない。涙が出てきた。物足りなくて切なくて、ふわふわした気分のまま私は皇居宮殿へ帰ったのだった。

馬厩舎で馬から降りる時、馬上プレイはキツいっす早くベッド連れてけと、飛び降りざまにルークスさんへとしがみついたら、周りに居た兵士たちに「おお!」「ヒューヒュー!」と歓声を上げられてしまったけど、まあそれも些細なことと気にしなくなってしまうくらいには、私も煽られていた。
こういう時はさっさと部屋にしけこむに限る。自室じゃなくてルークスさんの寝室だけど。そこまで姫抱っこで連れられて、ベッドに落とされた。

「ルークスさんっ、んーっ」

待ってましたとばかりに彼の唇へと吸い付く。ふわーい。やわらかーい。
すかさず舌を捩じ込まれたので、きちんと吸ってあげた。

「ふぁーん、ふ、んぅ…」

舌も絡めて濃厚な口付けを繰り返し、キスの合間に衣服を脱いでベッドの下へと落としていく。自分で自分の服を脱ぐというよりは、お互いの服を脱がせ合った。

「相変わらず、ええ体してますなあ」

思わずついて出た言葉。これまで心の中で賛辞してただけなのに、最後の一枚を脱がせ終わってルークスさんの均整のとれた腹筋見たら、私の理性ダムが決壊したらしい。

「触ってくれて構わないぞ」

そう言って私の手を導く先は腹筋じゃなくて男性器だったんだけど、なぜだね。
いや、そこもええ体の一部ではありますがね。
導かれるままに触ったそこは既に筋が通っていて、私が手を動かして敏感な先まで弄ってれば直ぐ大きくなった。まだまだ若いね三十代。

「執務中、何を考えてました?ここをこんなに昂ぶらせて…きちんとお仕事はできたんですか」
「それを言われると痛いな。ハツネ殿のことしか考えてなかったからな」
「本当に?」
「本当さ。それ以外、何を考えろというんだ。感覚から送り込まれてくる愛撫に耐えろという方が無茶だ」

執務中に盗聴してる方が悪いとは思うが口には出さない。
職場で興奮の色が隠せなくなってもじもじしちゃってるルークスさんを想像するだけでテラ萌ゆす。

「ハツネ殿だって、こんなに濡らして…何を考えてるんだ?」
「ルークスさんのことしか考えてませんよ…っ、そこ、摘まないで…っ」
「すごい溢れ出てきた…私のことだけを考えて、こんなに濡らしたのか…淫らだな」

おしゃべりしながらも的確に私の弱点を責めてくるから軽くイっちゃっただけだい。お互いの性器を弄り合って興奮して、私たちの本能はどうしようもないな。
そのまま私たちは繋がって、お夕飯の時間が過ぎても盛ってたのでした。
呼びに来た女官さんごめんなさい。多分、嬌声とか聞こえてただろうけど…
恥ずかしいから黙秘でお願いします。

ところで避妊魔法。ロザンナ医師の下で一度はかけているが、この魔法の効果は、持続してかけ続けないと直ぐには現れないらしい。
三週間続けて毎日魔法をかけ直し、次の一週間は休む。このサイクルで体を徐々に慣れさせていけとは指導されたけど、早速今夜してしまったわけだ。
これは…効果があまり期待できないね。だから「中出しすな!」とまたルークスさんに訴えてみたんだけど…まあ、聞いてはもらえず今に至る。

朝日の中、金髪殿下のハンサムな寝顔を眺めつつその頬をつねってあげた。
この男はまだ私が異世界に帰ることを恐れているらしい。性交中って、わざとなのか意識せずなのか、不意に感覚が繋がっちゃう時があるんだよね。そういう時にルークスさんの不安にも気づいちゃう。
そりゃあ日本に帰れるもんなら帰りたいけど、帰ったとしても、またこっちの世界に戻ってきたいと強く願うほど、彼には惚れてるのに…あんま伝わってないみたいこの気持ち。

「いっそ全身を縛ってあげましょうかねえ」

本能のままに。私の束縛心の象徴"茨の鎖"を全身に入れてあげるとか…
くどくどしいなそれは。
そう思うとカサブランカ様の、龍を彫るという発想はかなりグッドだ。龍なら全身を巻き付くように入れたら格好良い。キャラ立ちもする。うわ、羨まし。

「…なんのプレイの話だ?」
「ややっ。起きましたか」
「うっすら意識が目覚める中で縛りプレイの話をされては…完全に目が覚めた」
「おはようございますマイダーリン」
「そんな可愛い呼び方しても駄目だ。何か誤魔化しただろう」

こういう時に限って鋭いですね。勘だろうか。
ミザリーさんとじゃあんなに呆けボケなのに、私のこととなると発揮されるその冴え渡るひらめきはなんだろね。愛の力なら嬉しいです。と、ルークスさんに近寄って目瞼にキスをしてあげた。

「これも誤魔化しだろうが…悪くない」

うむ。彼のちょっと照れた顔が見れて私も悪くない。満足ですじゃ。

二人で朝の支度をする。洗顔歯磨き着替え、朝の三点セットである。
洗顔は女官のセナさんが用意してくれたお湯をお盆に張って使う。
歯磨きは木製の歯ブラシみたいなのがあるので、それでコシコシ擦る。
擦れば自然と泡が出て、スッキリ爽やかな後味になって歯磨き粉いらずだ。
着替えもセナさんが用意してくれたので、それに袖を通す。
本日は小花柄のワンピース。こちらの世界の服はワンピースが多いんだけど、皇室でもそういう傾向みたいだね。いつかミザリーさんの服が広まってズボンも履けるようになるといいなあ。

そういえば鏡見て気づいたけど、私の髪色はいつの間にか黒に戻っていた。
いつ魔法が切れたのかすら思い出せない。
ルークスさんに聞いてみようと振り返った時に気づいた。あ、ポシェット…。
昨日一日中たすき掛けに提げてたポシェットが、ベッドサイドのテーブルの上に置いてある。ポシェットを飾るのは昨日アリステラ姫から貰った緑色の石アベンチュリン。お花に天使の羽がくっついたとても愛らしい造形のストラップである。
ポシェットの中にも黒色の石オニキスのついた同じものが入っている。

私はそれをルークスさんに手渡した。

「アリスちゃんからペアで貰ったんですよ。お花に羽がついてて可愛いでしょ」
「アリス…アリステラ姫だったか。随分と印象が変わってしまったが、こういう気遣いやセンスを見せてくれると、やはり女の子だな」

昨日の時点でルークスさんにはヴァーニエル王子の正体はバラしてある。
姫だと知ってはいるが、特に会話もしてないのでルークスさんにとってのアリステラ姫は女の子としての印象が薄いのだろう。

「気遣いだけじゃなくて、健気で優しい子ですよアリスちゃんは」
「ふむ。これはパワーストーンか。オニキスは…ハツネ殿の色だな」
「おお私、腹黒いですからねえ」
「腹じゃなくて髪の色だが」

ボケたのに真面目に返されてしまった。
そういうとこ大好きすぎるぞコンチクショウ。
どこに付けてくれるかなーとわくわくしてたら、髪を括る組紐にくっつけてた。
そうきたか。

「結んでくれ、ハツネ」

甘え声で名前呼ぶのは反則だぞ。
朝から心臓の鼓動がドキドキしっ放しになるがね。思わず名古屋弁だがね。
拒否れるはずもなく、私は組紐を受け取ってルークスさんの髪のお手入れから始めた。さらさらの金髪が私の手の中で陽光に煌めいてる。手触りはまるでベルベットだ。女の私の髪より綺麗とかどういうこった。櫛を当てて丁寧に梳いていく。途中で滞ることなく全体を梳けた。羨ましいくらいのサラッサラヘアーである。

「こんな感じでいいかな」

ひと束にまとめて組紐で括った。両端の房と一緒に、私の色した天使が揺れてる。
「ありがとう」と抱き締められれば悪い気はしない。

「大事にしようね」
「ああ」




(朝食時の会話)

「ロザンナ女史とは何を話した?」
「もう探らないって言いませんでした?」
「あの時だけはな。今は探りたい。だからできるだけ速やかに答えてくれ。じゃないと…」

て、胸揉むなああああああああ
ルークスさんのお膝に乗ってる私の両脇から両手がニュキッと生えてきて、ささやかな胸を揉んでくる。
なんで彼の膝上に座って朝食かというと…なんかこうなったから。理由とかない。

「ち、ちょっと、私、朝ごはん食べたいんですけど」
「ああ。だから早く喋ってくれ。正直に吐けばご飯を食べさせてあげよう」

そういうことかああああ
胸を揉む掌は私のささやかバストを下から押し上げつつ器用な手先で先端をキュッと摘む。

「んぅ…っ、変態いぃ…」
「そんな色っぽい声出したら止まらなくなる」
「いやいやそこは止まろう止めようよ。朝ご飯冷めちゃいますよぅ」

目の前にあるジャガイモのガレットがいい匂いしてんだ。あの焦げ目も私の視覚から美味しさを伝えてます。ふおおお芋食いてええええ

「はぅ…今は話せないけど、っ、あ、いつか必ず…お話しますから…」
「……しょうがないな」

胸揉まれながらも頑張って説得したら、手は止めてくれた。妥協のようだが。
おっぱい揉んでた手は代わりにナイフとフォークを持ってガレットを切り分ける。

「あーん」

私は切り終わるのも待てずに口を開けて待機。

「美味しいかい?」
「うん。おいひいれふ」

お口に入れてもらったジャガイモは、あつあつでふーふー。
お芋のホクホクさと焦げ目のパリパリ感を味わう。
やっとありつけた朝食に私は大満足なのであった。

いつか話すというのは嘘じゃない。
避妊魔法を使ってることは、結婚したら打ち明けさせて。
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