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三柱の世界
聖霊回廊にて
しおりを挟むあふ~ん。膝枕気持ち良い。前にもこの感覚は味わったことあるぞ。と、思ったら体が勝手に反応して、そこに頬ずりいっぱいしてた。
『ああん。甘えたさんねえ』
ん?この膝の主か?降ってくる声は聴き慣れたもので、私は直感的に今起きねばいつ起きるばりに跳ね起きた。
「アザレアさん!!」
『はあ~い。ハツネちゃん』
そこに居たのはアザレアさんだ。紛れもなくアザレアさんだ。
天馬姿じゃなくて人型で膝枕してくれてたのはアザレアさんで間違いないよね?!
「うああああだいじょぶなんですかああ?!」
『今はハツネちゃんの方が大丈夫じゃないわよお。ほらぁ、寝てなさいナ』
と、再びお膝に顔面をドッキングさせられる私。
いや、ちょっと、ま、顔面になんぞ当たった。アザレアさんも男の人なんだって分かるものが当たったよ。
当ててんのよ!じゃなければこれは不慮の事故で処理すればいいか?
ドギマギしながら横になって、さり気なく当たっちゃったものを避ける。
「アザレアさん、なんでここにいるの?」
話題を振って意識も逸らそう。てか、ここどこですか?
なんだかふわふわしいベッドの上なのは分かる。天蓋付きで丸い形のベッド。大きさはキングサイズくらいかな。
こういうベッドってラブホくらいにしか無いと思ってた。だからと言ってラブホに行ったことはない私である。そんな相手いなかったからな。
あちこちに散らばるクッションと、アザレアさんの背にはでっかいビーズクッション。周りの景色は…と首を捻ろうとするとアザレアさんに押さえ込まれる。
『ちゃんと寝てなきゃ駄ぁ目』
「え?!あ、で、でも、ここどこかなって」
『気にはなるでしょうが今は休んでなさい。まったく…こんなに疲弊しちゃって…可哀想に…』
アザレアさんが悲しそうに言うからなんだか悪いことした気分だよ。
なにがどうなって私はここに居るんだろう。アザレアさんは聖霊回廊とやらで休んでるんじゃなかっただろうか。
もしかしてここが聖霊回廊ってところだろうか。だとしたら何故に私がここに…。
様々な疑問は『あーとーでー』とアザレアさんに再び言われ、私は大人しく瞳を閉じた。ああ、膝枕やっぱ気持ちええ。ゆったりぬくぬくそれでいていい旅バスロマンな晴れやかな気分である。
ここに来て何日が経ったんだろう。
アザレアさんの膝枕で眠っては起きて、起きてもお腹空くとか今何時でい?とかもなくて、ただまた、うつらうつらと時を過ごす。
気づけばまた眠って、ビーズクッションの上で寝たり小さなクッションいっぱい掻き集めてその中で眠ったり、とにかく寝まくった。
『それだけ精神が摩耗してるということよ。思う存分、ここで休むといいわん』
ここはやっぱり聖霊回廊なんだそうだ。聖霊回廊のアザレアさんのお部屋。
部屋という割に四方の壁がないんだけど。開放感抜群である。そして部屋の中にはベッドしかない。
全体的に俯瞰すれば、回廊と言うだけあって柱が何本も連なってカーブして一周、ここまで繋がってる。
柱と柱の間にそれぞれ聖霊の部屋があるのだそう。でも今は誰もいないのだとアザレアさんはまた悲しそうに言う。
『前まで賑わってたんだけどねえ。フルオラ・ナビルミのやつが聖霊を一枚岩に組み込んでからは誰もここへは戻って来れてないの』
聖霊回廊は聖霊たちの一時待避所でもある。魔力が尽きたり弱ったりすれば自動的にここへ戻って来られるんだって。
だけどさすがの聖霊も一枚岩に取り込まれちゃうと、もうここへは戻って来れないみたい。
『あ、そういえばアオが来たわよ。あの子は今、ヴァーニエルと一緒に居るのね。良かったわあ』
「アオくんはここに来れるんですか?」
『ええ。あの子はわざと聖霊果実になって身を隠してたんですって。あの子自身はアホの子だから、ヴァーニエルの機転よね』
アオくんアホ扱い。そしてヴァーニエル王子は思った以上に優秀な人みたい。
イケメンだしな。そこ重要。
私はまたふわふわと眠りに就き、ああ、そういえば王子は目覚めたのだろうかと、霞む意識の向こうで思った。
『ハツネちゃん、あの子達を助けてくれてありがとう。目が覚めたらお友達になってあげてね』
アザレアさんの言葉も霧の彼方に聞いて、私はまた意識の奥の方へと沈んでいく。眠い…とことん眠いわー…。
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