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三柱の世界
壁ドン顎クイ胸モミ*
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タイトル通りのことが起こります。
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さあて、町の中心にでも行ってみるかね。
アザレアさん、帰ってこないってことはお金持ってたってことでいいんだよね。買い物楽しんでるのかなあ。
アザレアさんだってディケイド様のことで落ち込んでるはずなのだ。なのに私の引き篭りに付き合ってくれて、ご飯つくってくれて、私の面倒を甲斐甲斐しくみてくれた。まるで嫁のようにな!
悪いことした。せめて今回の買い物で楽しくストレス発散しててくれたらいい。
お化粧品が足りないとぼやいてたのを私は知っているのだ。
実家から送って今の家に届いた荷物の中には基礎化粧品くらいしか入ってなかった。あと漫画。すいませんナチュラルメイク派なもので。普段はスッピンとも言う。就活の時くらいだよ、ちゃんとメイクしたの。
この世界のメイクはどうなってんだろ。今度ミザリーさんに聞いてみよう。
そんなこと考えながら歩いている時だった。
目端にローブ姿でフードを目深に被った怪しげな人物が映る。誰だ私と同じ格好してるやつは。その人物は私を見つけると親しげにこちらへと寄って来ようとした。
待て。知らんよ。アンタ何者だ。咄嗟に「"バリヤー"」
さすがに町中で攻撃魔法は駄目だろうと、防御に徹した私えらい。
「ハツネ殿」
名前を呼ばれてドキッとする。
私の名前を知ってる人は少ない。
少ないどころか見知った人物さえ限られているのだから、こういう風に私を呼ぶやつはだいたい一人しかいない。
「…ルークスさん」
何しにきたんだお前とは思わない。なんでここにいるんだお前。
私を見つける手段なんてないはずでしょう。しかもそんな怪しげな格好で何してんだね皇族のくせに。
「今一人か?」
「そうですが何か」
と言いかけたところで抱きしめられたんですが何なんだアンタはーー!
私バリヤーしてますよ。咄嗟だったから本能的にやったことだよ。
あ、だから? だから防護魔法は機能してないの?
まさかの魔法失敗?!
「ちょ、どいて」
「無事で良かったハツネ殿…!」
更にぎゅっぎゅしてくる…こんなこと前にもあったよー。
また二の舞になるのはゴメンだ。私は精一杯ルークスさんの体を押し返そうとする。けど動かない。金的かましてやろうとする。だが動かん。
非力すぎるだろ私…。
「無事って…私そんな危険な状況に陥った覚えがないんですが」
「ああ、だが聖霊様が狙われている。君にも何がしかの接触があるはずだ」
「え。アザレアさんが?!」
聞き捨てならん。私はルークスさんの腕を振りほどいて駆け出したいのに…放してくれないよこの金髪皇族!
「放してください!」
「駄目だ。聖霊様のところへ行くつもりだろう」
「当たり前ですよ。アザレアさんに何かあったらどうすんですか」
「私は君に何かあったほうが心配だ。折角、無事な姿を確認できたんだ。このまま安全なところまで来てもらう」
「安全なとこなんてないですよ。狙われてるならどこにいても同じでしょう」
はい論破。だから放してーーーと再び力を入れてみるが、やっぱりびくともしない。なんなんだよもう。
「君の言う通りだ。どこに隠れても、この世界中で安全なところなど無いだろう。聖霊様と一緒にいるだけで、君は目立つからな」
「でしょう?だったら今アザレアさんのとこへ行くのが最も有効な手段です。
一緒にいれば逃げやすいし」
空飛んでと言ったら、ルークスさんの方からなにやら不穏な空気が漂い始めた。
フード被ってるから表情が分からないのでなんともいえないのだが…まさか怒った?交渉中、カマかけても怒らなかったのに…。
「駄目だ」
「なんでよ」
「私が嫌だからだ」
「はあ?!」
そんな我儘言ってる場合じゃないだろうが。てゆか、なんで今怒ってるのかね。
「ここ十日程、どこをどう探しても君に辿れなかった。今日やっと見つけたんだ…手放すことなんかできない」
ん?十日程…て、私が引き篭ってた間か。探してくれてたとかどういうこったよ。
いやそれより引き篭ってた間は誰にも見つからなかったと捉えた方がいいのか…。
てことはもしや、私の家は世界で一番安全なのでは…?
ますますに力を込めて私を抱擁してくるこの男に、とりあえずこの場は目立つから場所移動しようと誘いをかける。
なんせ周囲の視線が私たちに集まってるからね。いやね、カップルってのは見るよ。他にももっとラブラブべたべたくっついてるバカップルいるよ。でもね、そいつらはローブ姿じゃないでしょ。なんていうか日常の風景でしょ。バカップルって。その点ローブ姿で姿形隠してるような怪しげな奴らが抱き合っててみ。
おかしいよね。目立つよね。
そんな訳で私たちは移動した。もうちょっと目立たない場所に。といってもすぐそこの路地裏なんだけどね。建物と建物の間だ。
「"パッ"と気配を隠しちゃいましょう。ついでに音も"しーん"。これで遮音できたかな」
「相変わらずインスタントな魔法を使うね」
だまらっしゃい。もう目立ちたくないからね。認識阻害の魔法をかけたのだ。
空飛んでる時にアザレアさんが使ってたから、あれをイメージしながらやってみた。ついでにフードも取ってしまう。阻害魔法かかってるから黒髪を晒しても大丈夫だろう。
ルークスさんもフードを脱いだ。相変わらずハンサムなお顔立ちですこと。
金髪もサラサラで羨ましいわ。
「それで、アザレアさんが狙われてるというのは?」
「聖霊様を付け狙う心無い輩がいるんだ。そいつが今回の戦争の引き金も引いた。未だに聖霊様を狙っている」
ふおおおアザレアさんを狙うストーカーがいるってことですかあ?!
しかもそいつ戦争まで引き起こして最悪じゃん。許せん!成敗してくれるわ!と、私がここで熱くなってもしょうがないな。
私たち町で普通に買い物しちゃってるもんなあ。そいつが何者かは知らんが、アザレアさんをストーカーするくらいだ。私たちの目撃情報を集める手段があるんだろう。密偵とかさ。と、適当に思いついたことだったけど、実際にこの時、私たちは怪しい輩たちに見張られていたらしい。だいぶ後で分かったことなんだけどね。
「つか、なんで私も狙われるハメに…?」
「君は聖霊様の伴侶だと思われている」
あーそういえばそういう常識みたいなものがありましたね。聖霊を降臨させた人が伴侶とかいうやつね。ちゃうし。私らそんな雰囲気ぜんぜん無いし。
「本当に伴侶ではないのか?」
「違いますって。家族みたいなものだって言いましたよね」
「君がそう思ってても、聖霊様がどう思ってるか…」
「アザレアさんもそうですって。多分、妹みたいに思ってくれてますよ」
日本でもオカマの兄に恵まれてる私である。なんかオカマの庇護欲を掻き立てるらしいんだ私は。だからおそらくこの推測は間違ってない。それ以前にあれはオカマである。女性は恋愛対象に含まれない。
「妹…それは恋にならないか」
「なりませんよ。アナタ兄弟姉妹いないんですか。近親者と恋は始めちゃ駄目ですよ」
「姉がいるが…うん、そうだな。無理だ。断固拒否する」
「でしょう。倫理的にも生理的にも受付ませんて。それより…私を探してたっていうのは本当ですか?」
「ああ、もちろんだ」
ルークスさんが言うには、前会った時に私へ【目】を付けたんだそうな。
比喩表現じゃなく字面そのままに【目】と呼ばれるものを私とキスしてる間につけたとか。気付かなかった…。
【目】はそのまま付けた相手の目と重なり、ルークスさんへ視覚の情報をもたらしてくれるそうな。
私と別れた後、その【目】を使ってみたところ森へ着いた途端に消えたという。
それは私の家は【目】で見えないということかなあ。
「この【目】は固有スキルだ。固有スキルは産まれながらに持つスキルで皇族しか持っていない。私はこのスキルを使って国外政策の任に就いている」
「そんな重要なこと私に漏らしてしまってよろしいのですか」
帝国の重要な仕事だろう国外政策とか。まさか私の父親と同じ職業とは思わなかったけども…。でも帝国の守護騎士とか言ってなかったかね。皇族だから国外政策は公務なのだろうか。その辺の事情はよく分からないけれど、心臓がドキドキというか疼いてきた。なんでだろ。思いがけないことばかり聞いたからだろうか。
なぜかルークスさんを前にすると酷く心がザワつく。
落ち着かなくなるっていうか…。
懐かしいような…。
変な気持ちになる。悲しいのに嬉しくて、嬉しいのに哀しいという複雑な感情が入り乱れて、胸が焦がれていく…。
本当に変だ私。
こんな気持ち初めて──────
…いや、初めてじゃ、ないの…?
「別に全てを漏らしたわけでもない。私のスキルのことは……いや、君にはもっと私のことを知ってもらいたいんだ」
また心音が跳ね上がるようなことを言うな。な、なんか見つめてきてるし…。
綺麗な碧眼が私を射抜く。
その瞳は、やばい。また私の胸を締め付けてくるから。
私は動揺して後ろへ一歩下がった。だが背後は壁である。
背中に壁のひやりとした感触がしたと思ったら、ルークスさんのハンサム顔が眼前に迫っていた。
「見ないでください」
「逃がさない」
ルークスさんの迫る視線から逃れようと身を捻ったが腕が通せんぼする。
右も、左も、腕の突っ張り棒で逃れられない。あ、あれ?この状況知ってる。
少女漫画とかでよくあるやつだ。あれだ。壁ドンだ。
「え、いや、もうお話は終わりましたでしょう」
壁に背中を付けたまま、私はルークスさんをおずおずと上目遣いで見た。ひい。めっさ見られてます。
「駄目だ。君に付けた【目】が視えなくなって、どれだけ心配したと思う。私は気が狂いそうになった」
そう言って顎を掴まれ上に向けさせられる。壁ドンの次は顎クイですか。
私どんだけ王道極めればいいんだろう。視線が合う。ルークスさんの、澄んだ碧眼が揺らめいていて、その奥に情欲の炎まで見えてしまう。
「あ……ん、んっ」
口を塞がれた。ぬるっと入ってきた舌先に、驚く暇もなく吸引されてしまった。
「んふ…、んんー…っ」
鼻から抜ける息。口の出入り口が塞がれてるから、もう鼻から出るしかないよね。
うまいことできてるもんだ人間の体って。吐いたら吸うしかなくて、反射的に口も息を吸おうとするんだ。それがよりディープなキスを促してしまうのは不可抗力だ。よりルークスさんの舌を受け入れてしまう。
「んあ、ん…んク…」
「もっと動かしていいよ」
「ふぁ…変態…んっ」
絡んでくる舌先を避けようとしてるだけなのに、お互いの粘膜が擦ってしまったり、唾液がクチュクチュしたり、淫らな水音が脳髄に響いてしょうがない。
舌を動かした覚えなどないっつーのに…煽られてるのは分かる。それでも言い返してしまうのは性だ。もっと言い返したかったのに直ぐまた口を密着させてくる。
いつの間にか腰をとられ、頭の後ろから指を髪の中に差し込まれている。ルークスさんの指と指の間に私の髪が絡む。指先で髪まで弄りながら口の中まで侵してくるとはなにごとだ。どういうテクだ。こういうこと初めてな私は翻弄されっ放しである。
「んふ…あ、はぁ…」
「気持ち良かった?」
きくな。やっと放してくれたと思ったらこれだ。どれだけ私を煽ってくるのだろう。ローブの合わせ目から手が入り、服の上から胸を揉まれているのが分かる。
私のささやかな胸が揉まれているのだ…。
「やだ…」
「ハツネ殿…」
私の唇からルークスさんの舌が滑って顎のラインをなぞる。
そのまま左耳までいって耳たぶを舐められた。
「ひゃ…」
「感じる?」
またきくな。
どんだけエロ方面少女漫画の台詞を極めれば気が済むんだこのオタンコナスは。
耳の中へと息まで吹きかけるし、右胸はめっちゃ揉まれてる。服の上からだけど、敏感な頂きをキュッと掴んで指だけでムニムニするのはいかがなものか。
これでブラジャーしてなかったら乳首を抓られてたかもしれん。防御するものがあって良かった。無かったら私はここで嬌声を上げてただろう。
「ハツネ殿…いい匂いだ…」
「耳…やだ…」
「ハツネ殿が可愛いすぎる…」
「はう…っ」
項に吸い付かれた上に、胸を大きく揉んで捏ねられる。やめてやめて。項にキスマーク付くでしょうが。つか既に付けられてる感満載だけども。
更に首筋を舌が這って舐め回される。と同時にルークスさんの鼻息がっ。
鼻息が耳にかかるでしょう。とっても興奮してらっしゃるのが丸わかりだ。
「ルークスさん…そん、なに…」
「ああ……君がいい…」
うわ言のように、いいだとか可愛いだとか繰り返しながら首筋舐めてくるこの変態なんとかして。
でも認識阻害魔法をかけてるから誰も気づかないし、助けがくるわけもない。
だから自分でなんとかしないと…。
このままだとこの金髪変態紳士に肌を舐め回されて溶かされる。
やっと危機感が募ってきた私は、こやつの首をとることにした。
「駄目…もう、これ以上は…やめてください」
いやんいやんな素振りをしつつルークスさんのローブに手をかけ胸元を引っ張る。
今日は軍服じゃないのね。ただの白インナーでご愁傷様。首に触れる。
そこには先日に私が付けた罪人の印、囚人首輪がある。蔦の絡む流麗な模様に指をそっと這わせた。
「ハツネ殿…───痛ッ」
ほんの一滴ほどの魔力を流したただけだ。たったそれだけで、首の薄皮は裂けた。
裂けたのは囚人首輪の一部分だけだけれど、突然の痛みにルークスさんは顔を顰めて動きを止める。
「もう触れないで。これ以上したら、私もアナタの首をもっと傷つけます」
きっぱり宣言して、裂けてしまった皮膚の部分を、もう一度指で摩る。
本当は傷などつけたくなかった。白い肌。皇族ともなるとこういうところのお手入れまでもしてるのだろうか、男性にしては肌理細やかでシミ等ひとつもない。
綺麗な肌だ。時折に彼から降ってくる匂いも、耳元で囁かれると吐き出される吐息も、爽やかでそれでいて涼やかで私の心を惑わせるものだ。
ただのハンサムのくせに生意気である。
「君に傷つけられるなら本望だよ」
「アホなこと言ってないでどいてください。まじで首落としますよ」
「本当のことだ。こんな風に私の首を狙ってきた女性は初めてだ。君になら、もっと縛られてもいい」
おっと。緊縛プレイをご所望かこの変態め。
やめるどころかまたキスを仕掛けてくる縛られたい願望のあるM男である。
「っん、や…!」
キスはやばいのだ。長くしてると理性が飛びそうになるから。
言うこと聞かないでキスかましたからお仕置きだ。また首輪へ魔力を垂らして、じわじわ皮膚を引き裂いていく。さっきより数センチは伸びたね。
「く…ッ」
「痛いでしょう。このままだと首一周皮膚を引き裂くことになりますよ。早く離れてください」
「ふふ…それもいいな…」
懲りないのか、今度は私のローブの合わせ目を解き始めた。
ボタンにループが引っ掛けてあるだけの合わせなので、ルークスさんの手によってさっさと外されてしまう。
「…やはり、今日も素敵な服だね」
「お褒めいただきまして、どうもありがとう」
現れた現代日本の服を見ても顔色を変えないのは、私が異世界人だと気づいているからなのだろうか。
一度もそれらしい会話はした覚えが無いけどなあ。王族じゃないと否定したくらいだ。まさかあれだけで憶測が立てれたのだろうか…。
私はルークスさんを侮ったつもりはないが、どうにも裏をかかれてる気がしてならない。【目】の事といい、けっこう油断ならないやつだ。
「ッ、褒めたのに裂くなんて酷いなあ」
「手元が狂ったんですよ。まだおイタするなら、まだまだ裂きますよ」
もう首周り半分は引き裂いてしまった。
血は出てないけど皮膚がめくれて折角の綺麗な肌が爛れてみえる。
痛々しい痕などつけたくないというのに、この変態が止まらない限り、私も止められない。私たちの駆け引きは、どんどんチキンレースの様相を深めていく。
ルークスさんの手が止まらない。ストライプ模様のシャツは開けられてブラジャーが晒される。リボン付きピンク色の可愛いブラにしてて良かった。
じゃなくて、なにすんだこの変態この野郎。
「やめて…あっ」
ブラの隙間から手が入る。直に触れられる初めての感触に私はビクつく。
つい、首を引き裂くことも忘れ、逆にその首へと縋りついてしまった。
「甘える君も愛らしいな」
そう言って私の胸元にキスを落としてから食んでいく。
私の肌はまたこの変態さんの餌食になってしまうのか…。
「もう…本当に…落としますよこの首…」
「やってくれて構わない。ただし私は息絶えるまで君の肌を堪能することをやめない」
こやつ筋金入りの変態だわ。
皇族のくせになに言ってんだ。アンタ重要人物でしょう。この帝国じゃ地位も名誉もあるでしょうに。
「あ…」
ブラの肩紐を外され乳房が露わになる。両胸を両手で揉んでくる上に舌まで這わされて、初めてされる愛撫に羞恥心ばかりが込み上げた。
こんな場所で…とか、初めてなのに…とか、頭の片隅では理性が叫んでいるが、私の体は正直にルークスさんへと向いている。
首に縋りついていた腕が、無意識に力を込めてしまうのだ。まるでもっと胸を弄って欲しいと言わんばかりの行動である。
「誘ってるのだとしか思えんよ、ハツネ殿…」
奇遇だな。私もそう思う。
「あうっ」
乳首を吸われた。舌先で弄られて尖ってしまっていた乳首が、更に唾液を塗り込められ、食まれ、そして吸われてしまえば、私は腰を蕩かすような微かな甘い痺れを実感してしまう。
そんなとこ自分でも吸えないから吸われた時の衝撃とか考えもしなかったけど、こんなんなのかー。
乳首はくすぐったいのに、じんじんとお腹の奥のほうが疼いてくる。
「やだ…本当に…」
感じてるらしい自分の体が自分の体と認めたくなくて拒否の言葉が漏れる。
それと同時に指先へ魔力を灯し、ルークスさんの首を両手で包み込んだ。
「うッ…あ、ああ…ハツネ殿…」
「もう駄目なの本当に…ごめんなさい…ごめんなさい…」
私の触れた箇所から順に皮膚が破れていく。血が滲み、ぷつり…ぷつり…と血の玉が浮き上がる。
首周り一周、綺麗に赤い線が入って、血玉はまるで赤い宝石のネックレスのように首を飾って、私はルークスさんの首を傷つけた。
私は傷つけながら泣いていた。どうしようもなく涙が込み上げ、瞳から溢れた。
「私に傷がつくのは構わないが、君の心が傷つくのは視てられないな……」
やっと動きを止めたルークスさんは、私の頬を滑り落ちて伝う涙を舌で拭ってくれる。ルークスさんの顔は涙で幕を張ってしまった瞳ではぼやけてしか見えないのに、首に流れる血の赤だけはやけに鮮明で、ますます私がやってしまったことの罪悪感だけが増していく。
「ふ…うう……ぐす…」
「泣かなくてもいい。君は正しいことをしているよ。強姦魔から自分の身を守ってるんだから」
ふふっと笑うルークスさんの声は優しい。優しいのに、私の心へと残酷に響く。
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さあて、町の中心にでも行ってみるかね。
アザレアさん、帰ってこないってことはお金持ってたってことでいいんだよね。買い物楽しんでるのかなあ。
アザレアさんだってディケイド様のことで落ち込んでるはずなのだ。なのに私の引き篭りに付き合ってくれて、ご飯つくってくれて、私の面倒を甲斐甲斐しくみてくれた。まるで嫁のようにな!
悪いことした。せめて今回の買い物で楽しくストレス発散しててくれたらいい。
お化粧品が足りないとぼやいてたのを私は知っているのだ。
実家から送って今の家に届いた荷物の中には基礎化粧品くらいしか入ってなかった。あと漫画。すいませんナチュラルメイク派なもので。普段はスッピンとも言う。就活の時くらいだよ、ちゃんとメイクしたの。
この世界のメイクはどうなってんだろ。今度ミザリーさんに聞いてみよう。
そんなこと考えながら歩いている時だった。
目端にローブ姿でフードを目深に被った怪しげな人物が映る。誰だ私と同じ格好してるやつは。その人物は私を見つけると親しげにこちらへと寄って来ようとした。
待て。知らんよ。アンタ何者だ。咄嗟に「"バリヤー"」
さすがに町中で攻撃魔法は駄目だろうと、防御に徹した私えらい。
「ハツネ殿」
名前を呼ばれてドキッとする。
私の名前を知ってる人は少ない。
少ないどころか見知った人物さえ限られているのだから、こういう風に私を呼ぶやつはだいたい一人しかいない。
「…ルークスさん」
何しにきたんだお前とは思わない。なんでここにいるんだお前。
私を見つける手段なんてないはずでしょう。しかもそんな怪しげな格好で何してんだね皇族のくせに。
「今一人か?」
「そうですが何か」
と言いかけたところで抱きしめられたんですが何なんだアンタはーー!
私バリヤーしてますよ。咄嗟だったから本能的にやったことだよ。
あ、だから? だから防護魔法は機能してないの?
まさかの魔法失敗?!
「ちょ、どいて」
「無事で良かったハツネ殿…!」
更にぎゅっぎゅしてくる…こんなこと前にもあったよー。
また二の舞になるのはゴメンだ。私は精一杯ルークスさんの体を押し返そうとする。けど動かない。金的かましてやろうとする。だが動かん。
非力すぎるだろ私…。
「無事って…私そんな危険な状況に陥った覚えがないんですが」
「ああ、だが聖霊様が狙われている。君にも何がしかの接触があるはずだ」
「え。アザレアさんが?!」
聞き捨てならん。私はルークスさんの腕を振りほどいて駆け出したいのに…放してくれないよこの金髪皇族!
「放してください!」
「駄目だ。聖霊様のところへ行くつもりだろう」
「当たり前ですよ。アザレアさんに何かあったらどうすんですか」
「私は君に何かあったほうが心配だ。折角、無事な姿を確認できたんだ。このまま安全なところまで来てもらう」
「安全なとこなんてないですよ。狙われてるならどこにいても同じでしょう」
はい論破。だから放してーーーと再び力を入れてみるが、やっぱりびくともしない。なんなんだよもう。
「君の言う通りだ。どこに隠れても、この世界中で安全なところなど無いだろう。聖霊様と一緒にいるだけで、君は目立つからな」
「でしょう?だったら今アザレアさんのとこへ行くのが最も有効な手段です。
一緒にいれば逃げやすいし」
空飛んでと言ったら、ルークスさんの方からなにやら不穏な空気が漂い始めた。
フード被ってるから表情が分からないのでなんともいえないのだが…まさか怒った?交渉中、カマかけても怒らなかったのに…。
「駄目だ」
「なんでよ」
「私が嫌だからだ」
「はあ?!」
そんな我儘言ってる場合じゃないだろうが。てゆか、なんで今怒ってるのかね。
「ここ十日程、どこをどう探しても君に辿れなかった。今日やっと見つけたんだ…手放すことなんかできない」
ん?十日程…て、私が引き篭ってた間か。探してくれてたとかどういうこったよ。
いやそれより引き篭ってた間は誰にも見つからなかったと捉えた方がいいのか…。
てことはもしや、私の家は世界で一番安全なのでは…?
ますますに力を込めて私を抱擁してくるこの男に、とりあえずこの場は目立つから場所移動しようと誘いをかける。
なんせ周囲の視線が私たちに集まってるからね。いやね、カップルってのは見るよ。他にももっとラブラブべたべたくっついてるバカップルいるよ。でもね、そいつらはローブ姿じゃないでしょ。なんていうか日常の風景でしょ。バカップルって。その点ローブ姿で姿形隠してるような怪しげな奴らが抱き合っててみ。
おかしいよね。目立つよね。
そんな訳で私たちは移動した。もうちょっと目立たない場所に。といってもすぐそこの路地裏なんだけどね。建物と建物の間だ。
「"パッ"と気配を隠しちゃいましょう。ついでに音も"しーん"。これで遮音できたかな」
「相変わらずインスタントな魔法を使うね」
だまらっしゃい。もう目立ちたくないからね。認識阻害の魔法をかけたのだ。
空飛んでる時にアザレアさんが使ってたから、あれをイメージしながらやってみた。ついでにフードも取ってしまう。阻害魔法かかってるから黒髪を晒しても大丈夫だろう。
ルークスさんもフードを脱いだ。相変わらずハンサムなお顔立ちですこと。
金髪もサラサラで羨ましいわ。
「それで、アザレアさんが狙われてるというのは?」
「聖霊様を付け狙う心無い輩がいるんだ。そいつが今回の戦争の引き金も引いた。未だに聖霊様を狙っている」
ふおおおアザレアさんを狙うストーカーがいるってことですかあ?!
しかもそいつ戦争まで引き起こして最悪じゃん。許せん!成敗してくれるわ!と、私がここで熱くなってもしょうがないな。
私たち町で普通に買い物しちゃってるもんなあ。そいつが何者かは知らんが、アザレアさんをストーカーするくらいだ。私たちの目撃情報を集める手段があるんだろう。密偵とかさ。と、適当に思いついたことだったけど、実際にこの時、私たちは怪しい輩たちに見張られていたらしい。だいぶ後で分かったことなんだけどね。
「つか、なんで私も狙われるハメに…?」
「君は聖霊様の伴侶だと思われている」
あーそういえばそういう常識みたいなものがありましたね。聖霊を降臨させた人が伴侶とかいうやつね。ちゃうし。私らそんな雰囲気ぜんぜん無いし。
「本当に伴侶ではないのか?」
「違いますって。家族みたいなものだって言いましたよね」
「君がそう思ってても、聖霊様がどう思ってるか…」
「アザレアさんもそうですって。多分、妹みたいに思ってくれてますよ」
日本でもオカマの兄に恵まれてる私である。なんかオカマの庇護欲を掻き立てるらしいんだ私は。だからおそらくこの推測は間違ってない。それ以前にあれはオカマである。女性は恋愛対象に含まれない。
「妹…それは恋にならないか」
「なりませんよ。アナタ兄弟姉妹いないんですか。近親者と恋は始めちゃ駄目ですよ」
「姉がいるが…うん、そうだな。無理だ。断固拒否する」
「でしょう。倫理的にも生理的にも受付ませんて。それより…私を探してたっていうのは本当ですか?」
「ああ、もちろんだ」
ルークスさんが言うには、前会った時に私へ【目】を付けたんだそうな。
比喩表現じゃなく字面そのままに【目】と呼ばれるものを私とキスしてる間につけたとか。気付かなかった…。
【目】はそのまま付けた相手の目と重なり、ルークスさんへ視覚の情報をもたらしてくれるそうな。
私と別れた後、その【目】を使ってみたところ森へ着いた途端に消えたという。
それは私の家は【目】で見えないということかなあ。
「この【目】は固有スキルだ。固有スキルは産まれながらに持つスキルで皇族しか持っていない。私はこのスキルを使って国外政策の任に就いている」
「そんな重要なこと私に漏らしてしまってよろしいのですか」
帝国の重要な仕事だろう国外政策とか。まさか私の父親と同じ職業とは思わなかったけども…。でも帝国の守護騎士とか言ってなかったかね。皇族だから国外政策は公務なのだろうか。その辺の事情はよく分からないけれど、心臓がドキドキというか疼いてきた。なんでだろ。思いがけないことばかり聞いたからだろうか。
なぜかルークスさんを前にすると酷く心がザワつく。
落ち着かなくなるっていうか…。
懐かしいような…。
変な気持ちになる。悲しいのに嬉しくて、嬉しいのに哀しいという複雑な感情が入り乱れて、胸が焦がれていく…。
本当に変だ私。
こんな気持ち初めて──────
…いや、初めてじゃ、ないの…?
「別に全てを漏らしたわけでもない。私のスキルのことは……いや、君にはもっと私のことを知ってもらいたいんだ」
また心音が跳ね上がるようなことを言うな。な、なんか見つめてきてるし…。
綺麗な碧眼が私を射抜く。
その瞳は、やばい。また私の胸を締め付けてくるから。
私は動揺して後ろへ一歩下がった。だが背後は壁である。
背中に壁のひやりとした感触がしたと思ったら、ルークスさんのハンサム顔が眼前に迫っていた。
「見ないでください」
「逃がさない」
ルークスさんの迫る視線から逃れようと身を捻ったが腕が通せんぼする。
右も、左も、腕の突っ張り棒で逃れられない。あ、あれ?この状況知ってる。
少女漫画とかでよくあるやつだ。あれだ。壁ドンだ。
「え、いや、もうお話は終わりましたでしょう」
壁に背中を付けたまま、私はルークスさんをおずおずと上目遣いで見た。ひい。めっさ見られてます。
「駄目だ。君に付けた【目】が視えなくなって、どれだけ心配したと思う。私は気が狂いそうになった」
そう言って顎を掴まれ上に向けさせられる。壁ドンの次は顎クイですか。
私どんだけ王道極めればいいんだろう。視線が合う。ルークスさんの、澄んだ碧眼が揺らめいていて、その奥に情欲の炎まで見えてしまう。
「あ……ん、んっ」
口を塞がれた。ぬるっと入ってきた舌先に、驚く暇もなく吸引されてしまった。
「んふ…、んんー…っ」
鼻から抜ける息。口の出入り口が塞がれてるから、もう鼻から出るしかないよね。
うまいことできてるもんだ人間の体って。吐いたら吸うしかなくて、反射的に口も息を吸おうとするんだ。それがよりディープなキスを促してしまうのは不可抗力だ。よりルークスさんの舌を受け入れてしまう。
「んあ、ん…んク…」
「もっと動かしていいよ」
「ふぁ…変態…んっ」
絡んでくる舌先を避けようとしてるだけなのに、お互いの粘膜が擦ってしまったり、唾液がクチュクチュしたり、淫らな水音が脳髄に響いてしょうがない。
舌を動かした覚えなどないっつーのに…煽られてるのは分かる。それでも言い返してしまうのは性だ。もっと言い返したかったのに直ぐまた口を密着させてくる。
いつの間にか腰をとられ、頭の後ろから指を髪の中に差し込まれている。ルークスさんの指と指の間に私の髪が絡む。指先で髪まで弄りながら口の中まで侵してくるとはなにごとだ。どういうテクだ。こういうこと初めてな私は翻弄されっ放しである。
「んふ…あ、はぁ…」
「気持ち良かった?」
きくな。やっと放してくれたと思ったらこれだ。どれだけ私を煽ってくるのだろう。ローブの合わせ目から手が入り、服の上から胸を揉まれているのが分かる。
私のささやかな胸が揉まれているのだ…。
「やだ…」
「ハツネ殿…」
私の唇からルークスさんの舌が滑って顎のラインをなぞる。
そのまま左耳までいって耳たぶを舐められた。
「ひゃ…」
「感じる?」
またきくな。
どんだけエロ方面少女漫画の台詞を極めれば気が済むんだこのオタンコナスは。
耳の中へと息まで吹きかけるし、右胸はめっちゃ揉まれてる。服の上からだけど、敏感な頂きをキュッと掴んで指だけでムニムニするのはいかがなものか。
これでブラジャーしてなかったら乳首を抓られてたかもしれん。防御するものがあって良かった。無かったら私はここで嬌声を上げてただろう。
「ハツネ殿…いい匂いだ…」
「耳…やだ…」
「ハツネ殿が可愛いすぎる…」
「はう…っ」
項に吸い付かれた上に、胸を大きく揉んで捏ねられる。やめてやめて。項にキスマーク付くでしょうが。つか既に付けられてる感満載だけども。
更に首筋を舌が這って舐め回される。と同時にルークスさんの鼻息がっ。
鼻息が耳にかかるでしょう。とっても興奮してらっしゃるのが丸わかりだ。
「ルークスさん…そん、なに…」
「ああ……君がいい…」
うわ言のように、いいだとか可愛いだとか繰り返しながら首筋舐めてくるこの変態なんとかして。
でも認識阻害魔法をかけてるから誰も気づかないし、助けがくるわけもない。
だから自分でなんとかしないと…。
このままだとこの金髪変態紳士に肌を舐め回されて溶かされる。
やっと危機感が募ってきた私は、こやつの首をとることにした。
「駄目…もう、これ以上は…やめてください」
いやんいやんな素振りをしつつルークスさんのローブに手をかけ胸元を引っ張る。
今日は軍服じゃないのね。ただの白インナーでご愁傷様。首に触れる。
そこには先日に私が付けた罪人の印、囚人首輪がある。蔦の絡む流麗な模様に指をそっと這わせた。
「ハツネ殿…───痛ッ」
ほんの一滴ほどの魔力を流したただけだ。たったそれだけで、首の薄皮は裂けた。
裂けたのは囚人首輪の一部分だけだけれど、突然の痛みにルークスさんは顔を顰めて動きを止める。
「もう触れないで。これ以上したら、私もアナタの首をもっと傷つけます」
きっぱり宣言して、裂けてしまった皮膚の部分を、もう一度指で摩る。
本当は傷などつけたくなかった。白い肌。皇族ともなるとこういうところのお手入れまでもしてるのだろうか、男性にしては肌理細やかでシミ等ひとつもない。
綺麗な肌だ。時折に彼から降ってくる匂いも、耳元で囁かれると吐き出される吐息も、爽やかでそれでいて涼やかで私の心を惑わせるものだ。
ただのハンサムのくせに生意気である。
「君に傷つけられるなら本望だよ」
「アホなこと言ってないでどいてください。まじで首落としますよ」
「本当のことだ。こんな風に私の首を狙ってきた女性は初めてだ。君になら、もっと縛られてもいい」
おっと。緊縛プレイをご所望かこの変態め。
やめるどころかまたキスを仕掛けてくる縛られたい願望のあるM男である。
「っん、や…!」
キスはやばいのだ。長くしてると理性が飛びそうになるから。
言うこと聞かないでキスかましたからお仕置きだ。また首輪へ魔力を垂らして、じわじわ皮膚を引き裂いていく。さっきより数センチは伸びたね。
「く…ッ」
「痛いでしょう。このままだと首一周皮膚を引き裂くことになりますよ。早く離れてください」
「ふふ…それもいいな…」
懲りないのか、今度は私のローブの合わせ目を解き始めた。
ボタンにループが引っ掛けてあるだけの合わせなので、ルークスさんの手によってさっさと外されてしまう。
「…やはり、今日も素敵な服だね」
「お褒めいただきまして、どうもありがとう」
現れた現代日本の服を見ても顔色を変えないのは、私が異世界人だと気づいているからなのだろうか。
一度もそれらしい会話はした覚えが無いけどなあ。王族じゃないと否定したくらいだ。まさかあれだけで憶測が立てれたのだろうか…。
私はルークスさんを侮ったつもりはないが、どうにも裏をかかれてる気がしてならない。【目】の事といい、けっこう油断ならないやつだ。
「ッ、褒めたのに裂くなんて酷いなあ」
「手元が狂ったんですよ。まだおイタするなら、まだまだ裂きますよ」
もう首周り半分は引き裂いてしまった。
血は出てないけど皮膚がめくれて折角の綺麗な肌が爛れてみえる。
痛々しい痕などつけたくないというのに、この変態が止まらない限り、私も止められない。私たちの駆け引きは、どんどんチキンレースの様相を深めていく。
ルークスさんの手が止まらない。ストライプ模様のシャツは開けられてブラジャーが晒される。リボン付きピンク色の可愛いブラにしてて良かった。
じゃなくて、なにすんだこの変態この野郎。
「やめて…あっ」
ブラの隙間から手が入る。直に触れられる初めての感触に私はビクつく。
つい、首を引き裂くことも忘れ、逆にその首へと縋りついてしまった。
「甘える君も愛らしいな」
そう言って私の胸元にキスを落としてから食んでいく。
私の肌はまたこの変態さんの餌食になってしまうのか…。
「もう…本当に…落としますよこの首…」
「やってくれて構わない。ただし私は息絶えるまで君の肌を堪能することをやめない」
こやつ筋金入りの変態だわ。
皇族のくせになに言ってんだ。アンタ重要人物でしょう。この帝国じゃ地位も名誉もあるでしょうに。
「あ…」
ブラの肩紐を外され乳房が露わになる。両胸を両手で揉んでくる上に舌まで這わされて、初めてされる愛撫に羞恥心ばかりが込み上げた。
こんな場所で…とか、初めてなのに…とか、頭の片隅では理性が叫んでいるが、私の体は正直にルークスさんへと向いている。
首に縋りついていた腕が、無意識に力を込めてしまうのだ。まるでもっと胸を弄って欲しいと言わんばかりの行動である。
「誘ってるのだとしか思えんよ、ハツネ殿…」
奇遇だな。私もそう思う。
「あうっ」
乳首を吸われた。舌先で弄られて尖ってしまっていた乳首が、更に唾液を塗り込められ、食まれ、そして吸われてしまえば、私は腰を蕩かすような微かな甘い痺れを実感してしまう。
そんなとこ自分でも吸えないから吸われた時の衝撃とか考えもしなかったけど、こんなんなのかー。
乳首はくすぐったいのに、じんじんとお腹の奥のほうが疼いてくる。
「やだ…本当に…」
感じてるらしい自分の体が自分の体と認めたくなくて拒否の言葉が漏れる。
それと同時に指先へ魔力を灯し、ルークスさんの首を両手で包み込んだ。
「うッ…あ、ああ…ハツネ殿…」
「もう駄目なの本当に…ごめんなさい…ごめんなさい…」
私の触れた箇所から順に皮膚が破れていく。血が滲み、ぷつり…ぷつり…と血の玉が浮き上がる。
首周り一周、綺麗に赤い線が入って、血玉はまるで赤い宝石のネックレスのように首を飾って、私はルークスさんの首を傷つけた。
私は傷つけながら泣いていた。どうしようもなく涙が込み上げ、瞳から溢れた。
「私に傷がつくのは構わないが、君の心が傷つくのは視てられないな……」
やっと動きを止めたルークスさんは、私の頬を滑り落ちて伝う涙を舌で拭ってくれる。ルークスさんの顔は涙で幕を張ってしまった瞳ではぼやけてしか見えないのに、首に流れる血の赤だけはやけに鮮明で、ますます私がやってしまったことの罪悪感だけが増していく。
「ふ…うう……ぐす…」
「泣かなくてもいい。君は正しいことをしているよ。強姦魔から自分の身を守ってるんだから」
ふふっと笑うルークスさんの声は優しい。優しいのに、私の心へと残酷に響く。
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