ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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桃野郎が君臨するぞ編

99、黄金の泉にて邂逅

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 タオジンの桃野郎と雄々しくヤり遂げたぞ。
 俺の貞操でダンジョンが守れたのだ。
 ちょっと誇らしげな気分で眠りに落ちる。

 眠りの中で、ピカピカ金色に輝く水を湛える場所を見つけた。黄金の泉とでも呼ばれていそうな雰囲気だ。

 周りは何も無い。

 ただそこには無駄に神々しい非現実的な泉があるだけだ。金色に光るとか有り得ないだろ。
 仙女でも出てきて落とした斧の種類を問われそうだなと思ったけど、だから何だという気分。

 どうしてだか、とても気怠い。現在、俺の頭は深く考えることを拒否している。

 ただただボヘ~としていると、霞がかった頭の中へ、「おーい」と聞き覚えのある声が響く。

 「おーい、おいおい、おーい」と繰り返すしつこい声。と同時に、泉の中心が渦巻いて、金髪の美丈夫が舞台装置よろしくせり上がってきた。

 やんだこれ、やんだ。親父じゃねえかこれ、やんだ。相変わらず無駄にイケメンな親父だ。

「眠ってまで寝ぼけんなよ。俺の可愛い可愛い可愛い可愛い息子よ」

 何度も可愛い言うな。ちょっと見ない間にボケたのか親父。

「可愛い息子よ、あんまり元気に見えんな」

 だって桃野郎がアレコレアーッで一方的に激しいことしやがるんだもん。今は情事後の深い眠りの最中ってやつだろう。
 頭の中すっごくぼやけているけれど、己の状況くらい理解しているぞ。

「処女喪失おめでとう」

 嫌味か。

「ホモもゲイもバイも見慣れてるだろ。周りの環境のおかげで」

 それな。性的オープン変態筆頭の父親がこれだ。
 異世界に来てから会う奴ら、どいつもこいつもホモ野郎ばかりで驚くわ。とうとう俺までホモったわ。

「処女喪失おめでとう」

 二回も言うな。嫌味すぎるだろこの野郎。

「皇子に抱かれた感想は?」

 誰が言うかボケェ!

「で、抱かれた感想は?」

 しつこいぞボケ親父。

「大事なことだからな。皇子の恋が実るかどうかでティリン・ファ皇国の命運が決まるから」

 そこまで重要なこと?!

「皇子は皇妃の腹の中に居る頃から巨大な力を持ってたろ。俺が何とか抑えつけて外に出したんだけどさ」

 おう、それで親父どこか逝ったんだよな。どこぞへ逝った親父と、こうやって会話しているのはおかしな気分だ。
 頭ボ~としているから夢なんだろうけど。

「夢でもし逢えたら素敵なことだろ」

 古い歌を持ち出すなあ。

「知ってるお前も懐メロ好き」

 施設には古いプレイヤーと懐メロしか無かったからだ。でも、まあ、確かに流行りの曲に余り興味はなかったかな。

「歌の話はどうでもいいんだ。抱かれた感想を言え」

 ちっ、忘れてくれんのかい。

「皇子あれで初体験だったんだ。愛撫は夢中でしつこくて、入れてからの余裕のなさヤバかったろ。お前イけてねーし。不完全燃焼で落ちて行くから、仕方なく、ここに招いたんだぞ感謝しろ」

 うえぇぇいいいいツッコミどころがいっぱいあるぞどうしたらいいんだチクショウ! とりあえず息子の情事を覗くんじゃねえ変質者! おまわりさんこいつです!

「しょうがねえだろ。俺は全竜力を皇子に使ったんだ。縁が結ばれて俺の後継者になっちまって、ついでにピーチスキルが芽生えて称号『;/$ END』持ちになっても、しょうがねえことだよな」

 親父、今なんつった……? 文字化けのところの発音が聞き取れない。もう一回言ってくれ。

「皇子は黄金竜の後継者。俺の後継者。で、元より大桃李の精霊の血族だから、変にくっついて超絶チートなピーチスキルや『GOD END』が爆誕した。おっけーぇ?」

 今度は聞こえた。
『GOD END』……ゴッドエンド……神殺しって意味だよな。
 道理で、神獣であらせられる麒麟まで、あっさりやられるわけだ。赤鬼の推察も当たったな。完全なる神特攻じゃねえか……。

 そんな強力無慈悲チートを無責任に与えておいて、「しょうがない」の一言で終わらすなボケ親父はもう一回逝ってくるといい。
 そして成仏してくれ。二度と蘇りませんように南無阿弥陀仏。

「おいおい経を唱えるなよ。心地良いじゃねえか」

 お経効くの?! そこに驚くわい。宗派どころか世界が違うのに効くなんて……この変態! もおホント、変態親父が残念だようぴええぇぇんん!

「夢の中でも泣くなよ。皇子のアレは気持ち良かったんだろ? 余裕のない童貞が、がっついただけじゃねえか。赦してやれよ」

 あーあー、聞こえねえ。

「気持ち良かったんだろ? お前ら相性バッチリだからな。今度は一緒にイけるといいな」

 うっせえ。セクハラ親父。
 俺はもやもやする頭を抱えて眠りたくなった。既に寝ているのにまだ眠いとはこれ如何に。

「疲れてんだよ。気にせず寝ちまえ。皇子が全部責任とってくれっから。お前は気にせず寝ちまえ」

 無責任な親父の言葉が、子守歌のように眠気を誘う。
 言われずとも寝る気は満々だ。

 目を閉じる。

 闇の微睡の中をふわふわ漂っていると、黄金に輝くあたたかな光が俺の全体を包み込み、そのままどこかへと導いてくれるのであった。

 行き先は極楽浄土かなあ。
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