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灰天使と黒天使の時空超越ランデブー
【番外】堕天使の鬼ヶ島調査
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翌日、転移の魔法陣でパーティー全員が、新しいダンジョンのある島へ無事に渡れた。
ダンジョンは初期ダンジョンにありがちな低級な罠とモンスターしか出ない。
エルセスは何故かボーっとしていて、その辺にあった苔を踏んずけて滑った。咄嗟に庇おうとしたが倒れたのは背面だったので、後ろにいたガイに支えられてしまった。
ええい、ガイめ、エルの腰に、尻に、触れるな。うらやまけしからん!
魔クリスタルがあるらしい水辺で女子とキャッキャウフフなトークをするエルが可愛い。
しかし胸がもやもやするので間に座ってパティを押し退けてみたが、俺は何をしているのだろうな……。
湖の水は時空ポシェットにしこたま飲ませたった。
宿に付いているバスタブ百杯分くらいかな。何に使うのか知らんがエルセスのためだ。
倒した謎の塩ゴーレムも、塩の山ごと、ごそっといただいておいた。
洞窟の奥、広い場所に来た。
「────っ」
ヤバいやついるな。
久しぶりに相手のオーラに当てられて肌がピリピリする。
このパーティーメンバーで挑んで勝てる相手じゃないし、俺が本気でやって……勝てんな。五分五分だろう。
まあ、こいつらが逃げて冒険者ギルドに辿り着くまでは時間稼ぎが出来る程度だ。
後は知らん。冒険者ギルドの威信にかけて討伐しても、国が重い腰を上げて出来立てダンジョンを滅ぼすにしても、好きにするがいい。
俺はその前に逃亡する。あの鬼と最後までやり合うつもりはない。
となると、エルセスとはここでお別れだな。
これまで、あーだこーだと一緒にいる理由を探していたのが嘘みたいだ。別れの時は、意外とあっさり訪れるものなのだな。
「エル、ここでお別れだ」
可愛いエルセスの顔を見詰める。ああ、やっぱ凄く可愛い。今日も可愛い。きっと明日も可愛いだろう。ずっと可愛いであれ。
「お前ならきっと魔導塔へ行ける。俺はお前に出逢えてよかった。愛してる」
「なっ! こんなとこで、今言うことじゃ……っ」
いつもなら手で塞ぐけどな、最後だから触れたくなった。唇で……。
くっっそ、やわらけえな!
あー、びっくりした。エルセス唇めちゃくちゃ柔らかいし湿ってるし、ちょっと塩味したけど海の近くにずっといるからであって、それはそれとして、なんかもう、唇しか触れてねえのにやべえわこれチンコ勃つ……。
「走れ! 撤退だ!」
大声で誤魔化そう。
皆一斉に逃げてくれる。よし、こっちを振り向くな。俺の下半身は今、荒ぶっているのだ。
「エル、逃げろ……っ」
「嫌だ。一緒にいる」
腕に縋り付いてくるエルセスが必死で可愛い。何これ、俺をときめかせて絶対逃がさないという力強い意志を感じる。
何これ、何これ猫みたいじゃね?!
猫こういうことやるだろ。動物ド田舎ランドに住んでいた時、やたらと猫に甘えられたのを思い出し、エルセスも甘えん坊になるとこういうことしたと思い出し、これまでの思い出が走馬灯のようにグルグルと頭の中を駆け巡る。
思い出祭りだ。脳内では浮かれハッピーな祭りが開催された。
ヒャッホーイ! お前、絶対、俺のこと好きだろォ!
そう今にも叫び出しそうな唇を噛む。静まれ。お口チャックだ。
俺はこんな状況ながらも喜びで胸がいっぱいだった。
赤鬼が野球なるものをコーチしてくれるが、条件反射で球拾いをしていた。
野球の仕方を大きな画面で観せてくれたりもする。なんだあの魔法技術……。
初期ダンジョンのくせに強い鬼がいて、映像の魔法陣が働く複雑怪奇な物体を見せられ、このダンジョンはどこかおかしい。
まるで時空ポシェットの中身のように出鱈目だ……。
帰りは転移魔法陣で大陸へ。魔法陣は誰にも見つからないよう隠蔽工作しておく。
きっとまた、あのダンジョンへ行く時が来る。メンバーたちにも、「これは俺たち専用の魔法陣にしよう。冒険者ギルドにも報告しない。誰にも言うなよ」と口止めする。
冒険者にとって儲け話の占有は当たり前なのだ。
皆、神妙な顔で頷いた。
エルセスだけ、俺をギラギラした目で見ていたが。
あれ、治まるの? 無理じゃね?
宿に帰ったら絶対また迫られると、本能で悟った俺だった。
ダンジョンは初期ダンジョンにありがちな低級な罠とモンスターしか出ない。
エルセスは何故かボーっとしていて、その辺にあった苔を踏んずけて滑った。咄嗟に庇おうとしたが倒れたのは背面だったので、後ろにいたガイに支えられてしまった。
ええい、ガイめ、エルの腰に、尻に、触れるな。うらやまけしからん!
魔クリスタルがあるらしい水辺で女子とキャッキャウフフなトークをするエルが可愛い。
しかし胸がもやもやするので間に座ってパティを押し退けてみたが、俺は何をしているのだろうな……。
湖の水は時空ポシェットにしこたま飲ませたった。
宿に付いているバスタブ百杯分くらいかな。何に使うのか知らんがエルセスのためだ。
倒した謎の塩ゴーレムも、塩の山ごと、ごそっといただいておいた。
洞窟の奥、広い場所に来た。
「────っ」
ヤバいやついるな。
久しぶりに相手のオーラに当てられて肌がピリピリする。
このパーティーメンバーで挑んで勝てる相手じゃないし、俺が本気でやって……勝てんな。五分五分だろう。
まあ、こいつらが逃げて冒険者ギルドに辿り着くまでは時間稼ぎが出来る程度だ。
後は知らん。冒険者ギルドの威信にかけて討伐しても、国が重い腰を上げて出来立てダンジョンを滅ぼすにしても、好きにするがいい。
俺はその前に逃亡する。あの鬼と最後までやり合うつもりはない。
となると、エルセスとはここでお別れだな。
これまで、あーだこーだと一緒にいる理由を探していたのが嘘みたいだ。別れの時は、意外とあっさり訪れるものなのだな。
「エル、ここでお別れだ」
可愛いエルセスの顔を見詰める。ああ、やっぱ凄く可愛い。今日も可愛い。きっと明日も可愛いだろう。ずっと可愛いであれ。
「お前ならきっと魔導塔へ行ける。俺はお前に出逢えてよかった。愛してる」
「なっ! こんなとこで、今言うことじゃ……っ」
いつもなら手で塞ぐけどな、最後だから触れたくなった。唇で……。
くっっそ、やわらけえな!
あー、びっくりした。エルセス唇めちゃくちゃ柔らかいし湿ってるし、ちょっと塩味したけど海の近くにずっといるからであって、それはそれとして、なんかもう、唇しか触れてねえのにやべえわこれチンコ勃つ……。
「走れ! 撤退だ!」
大声で誤魔化そう。
皆一斉に逃げてくれる。よし、こっちを振り向くな。俺の下半身は今、荒ぶっているのだ。
「エル、逃げろ……っ」
「嫌だ。一緒にいる」
腕に縋り付いてくるエルセスが必死で可愛い。何これ、俺をときめかせて絶対逃がさないという力強い意志を感じる。
何これ、何これ猫みたいじゃね?!
猫こういうことやるだろ。動物ド田舎ランドに住んでいた時、やたらと猫に甘えられたのを思い出し、エルセスも甘えん坊になるとこういうことしたと思い出し、これまでの思い出が走馬灯のようにグルグルと頭の中を駆け巡る。
思い出祭りだ。脳内では浮かれハッピーな祭りが開催された。
ヒャッホーイ! お前、絶対、俺のこと好きだろォ!
そう今にも叫び出しそうな唇を噛む。静まれ。お口チャックだ。
俺はこんな状況ながらも喜びで胸がいっぱいだった。
赤鬼が野球なるものをコーチしてくれるが、条件反射で球拾いをしていた。
野球の仕方を大きな画面で観せてくれたりもする。なんだあの魔法技術……。
初期ダンジョンのくせに強い鬼がいて、映像の魔法陣が働く複雑怪奇な物体を見せられ、このダンジョンはどこかおかしい。
まるで時空ポシェットの中身のように出鱈目だ……。
帰りは転移魔法陣で大陸へ。魔法陣は誰にも見つからないよう隠蔽工作しておく。
きっとまた、あのダンジョンへ行く時が来る。メンバーたちにも、「これは俺たち専用の魔法陣にしよう。冒険者ギルドにも報告しない。誰にも言うなよ」と口止めする。
冒険者にとって儲け話の占有は当たり前なのだ。
皆、神妙な顔で頷いた。
エルセスだけ、俺をギラギラした目で見ていたが。
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