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灰天使と黒天使の時空超越ランデブー
【番外】堕天使の黄金郷攻略
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第三階層の謎解きは意地悪だ。正しい情報だと思っていたのに、ある日突然に偽情報だったと知り、踊らされている感に絶望する。
この絶望という気持ちさえ古代遺跡に蔓延る幽霊たちの怯えを増幅させる魔法だということだから、タチが悪い。
廃墟となった古代遺跡には、長年の水の侵食で建物と建物の間に水が溜まって水槽のようになった場所がある。
そこへ通う内に犬面のスキュラたんと仲良くなったので話を聞いたが、『黄金郷クエスト』はダンジョンマスターの参謀が考え出した渾身の『ぼくのかんがえたさいきょうのシナリオ』だとか。
参謀、やべえやつだな。
「スキュラたん、俺たちはこの階層を絶対に攻略するつもりだ。攻略したら、ダンジョンマスターに会えるだろうか?」
「主様に会いたいワン?」
「ああ、俺たちも色々と事情を抱えていてな。ダンジョンマスターなら知っているかもしれないと希望を持っている」
ダンジョンの、いちモンスターに相談することじゃないかもしれないが、それだけスキュラたんとは馬が合った。相手、犬面だけど。
「なんでモンスターの言葉が理解できるのよ」
「リーダーも人外なんでしょ」
「おいおいパティ、それは言わない約束だろうが」
「あ、そうだった。てへぺろ」
……なんか、俺の正体がバレかけてねえ?
エルセスの方を見たら、にっこり笑われた。可愛い。
「わかったワン。主様にお伝えしておくワン」
なぜかスキュラたんまでにっこり笑ってくれた。犬面だけどにこやかなのは分かるぜ。笑う犬ってシュールだけどな。
反則技かもしれんが、俺は元々、モンスターと仲良くなるのは得意な方だ。話がわかるやつだけだが。
動物的本能が強いやつは駄目だ。下界に来て初めてドンパチした草原ウルフとは和解できなかったのを思い出す。あれは不幸な出会いだった。縄張りに降り立った俺が悪いな。残念だ。
こうして話がわかるモンスターからダンジョンマスターのことや、時には『黄金郷クエスト』のヒントをもらう。
遺跡をうろついているやつらから貰うヒントは嘘ばっかりだ。まともなヒントは貰えないって早々に分かったから無視していても、無理やりにヒントを渡してこようとするから押し売りに迫られている気分だ。
正しいのは参謀の息がかかっていないモンスターだけ。
「あれねえ、幻なんだワン」と、水中を泳ぐ巨大な生き物たちを指差されたときは顎が外れそうになるくらい驚いた。
水中の中に本物の生き物はいないそうだ。だから、水の中に落ちてしまった冒険者は即気絶するとかで、それを掬い上げるのがスキュラたんの仕事だということだ。
「ひと掬いでワンちゅ~るだワン」
美味しい食べ物が貰えるらしい。しっかり餌付けされてやがる……。
聞き出した正しいヒントをパーティーの皆で吟味してエルセスが纏め、結論を出す。
そうやって協力し攻略を進めていき、遂に────。
「これが、最後の宝箱……だよな?」
「ええ、既にこの古代遺跡すべてを探訪しました。もう、ここしか残ってません。必ずここに最後の宝箱が眠っているはずです」
「この金ピカ輝く目に眩しいやつがか? またフェイクじゃねえの?」
「ガイ、エルのこと疑うの……?」
「そういう訳じゃねえけどさあ。あからさま過ぎやしないかと思ってな。最後の最後だぞ。こんな光ってるけど、ちっこいのに金目のもんが入ってるとは……」
「大きいからって良い物が入っていることは稀だわ。大きい宝箱なんか大体がモンスター、ミミックだったじゃない」
マルグリットがそう言って会話を締めた。
最後の最後に辿り着いたそこは古代遺跡の中心で、かつて黄金の鐘が鳴り響いていたとされる鐘楼の中だった。
高い建物は怪しいと最初に隈なく探ったつもりだったが、その時にこの宝箱はなかった。これはきっと、正しくクエストをこなさないと現れない特別仕掛けの宝箱なのだろう。
「開けましょう」
エルセスの力強い言葉にも押されて、俺は黄金の宝箱を開けた。途端に響く機械仕掛けの無機質な声。
『お疲れ様でした。これが最後の宝箱です。【黄金の湯】チケットをお受け取りください』
宝箱の中には金色のチケット、【黄金の湯】への招待券が、そこにはあった。
「や……やった、ぞ……!」
「マジかよ本物……!」
「あたし知ってるこれよく宣伝してるやつ……!」
「私も知ってるわよ……本当にあったのね【黄金の湯】って……!」
皆が喜びに打ち震える中、
「皆さん、何かこっちに向かってきます!」
エルセスの危険感知の魔法陣に引っかかるものが出たらしい。何か大きな物体がこちらへと、目に見えて迫ってくる。
「──────!!!!」
鐘楼の最上階、四方は吹きっ曝しで風の暴虐が俺たちを襲った。
『危険はありません。森バードです。皆さんを【黄金の湯】まで乗せて運びます』
案内の声がなかったら攻撃しているところだった。それだけ脅威を感じる巨大な野鳥は、森バードというらしい。
「綺麗なエメラルド色……」
マルグリットが惚けたように言う。
分からないでもない。森バードの羽毛は森の木々に溶け込むような色であり、よく見ればキラキラ光る神秘的な何かで覆われているのだ。
そしてその瞳は、宝石のエメラルドが如く輝いている。
森バードは全てを心得た風に俺たちへと背を向け、乗れと促す。
戸惑いながら鳥の背中に跨り、そこは広々としているので股開くより縮こまってしがみつく状態だったが、その微妙な体勢で全員が乗り込めば、森バードの巨体が動き、上に乗る俺らを揺らしながらも助走、大空へ向かって羽ばたいた。
「ぎゃあ」「ひい」「びああ」と悲鳴が三名分は聞こえたが森バードは容赦なく飛ぶ。
俺とエルセスはくっついて、苦笑い。
空を飛ぶことには慣れている。エルセスだって、己の正体を知ってから大空を飛ぶ練習をよくしている。おかげで二人だけ、落ち着いたものだ。
「タモン、これでダンジョンマスターに会えますね」
「ああ、そうだな……」
この十年、それを目標に頑張ってきた。やっと意地悪な第三階層を攻略できたのだ。心は感動に震え、目の前が晴れていく気分を味わっている。
ダンジョンマスターに、エルセスの両親のことをどう尋ねようか黙考しながらも空から見た巨大遺跡は、いつもの夕陽に照らされ煌めく。
それは希望の光のように思えた。
この絶望という気持ちさえ古代遺跡に蔓延る幽霊たちの怯えを増幅させる魔法だということだから、タチが悪い。
廃墟となった古代遺跡には、長年の水の侵食で建物と建物の間に水が溜まって水槽のようになった場所がある。
そこへ通う内に犬面のスキュラたんと仲良くなったので話を聞いたが、『黄金郷クエスト』はダンジョンマスターの参謀が考え出した渾身の『ぼくのかんがえたさいきょうのシナリオ』だとか。
参謀、やべえやつだな。
「スキュラたん、俺たちはこの階層を絶対に攻略するつもりだ。攻略したら、ダンジョンマスターに会えるだろうか?」
「主様に会いたいワン?」
「ああ、俺たちも色々と事情を抱えていてな。ダンジョンマスターなら知っているかもしれないと希望を持っている」
ダンジョンの、いちモンスターに相談することじゃないかもしれないが、それだけスキュラたんとは馬が合った。相手、犬面だけど。
「なんでモンスターの言葉が理解できるのよ」
「リーダーも人外なんでしょ」
「おいおいパティ、それは言わない約束だろうが」
「あ、そうだった。てへぺろ」
……なんか、俺の正体がバレかけてねえ?
エルセスの方を見たら、にっこり笑われた。可愛い。
「わかったワン。主様にお伝えしておくワン」
なぜかスキュラたんまでにっこり笑ってくれた。犬面だけどにこやかなのは分かるぜ。笑う犬ってシュールだけどな。
反則技かもしれんが、俺は元々、モンスターと仲良くなるのは得意な方だ。話がわかるやつだけだが。
動物的本能が強いやつは駄目だ。下界に来て初めてドンパチした草原ウルフとは和解できなかったのを思い出す。あれは不幸な出会いだった。縄張りに降り立った俺が悪いな。残念だ。
こうして話がわかるモンスターからダンジョンマスターのことや、時には『黄金郷クエスト』のヒントをもらう。
遺跡をうろついているやつらから貰うヒントは嘘ばっかりだ。まともなヒントは貰えないって早々に分かったから無視していても、無理やりにヒントを渡してこようとするから押し売りに迫られている気分だ。
正しいのは参謀の息がかかっていないモンスターだけ。
「あれねえ、幻なんだワン」と、水中を泳ぐ巨大な生き物たちを指差されたときは顎が外れそうになるくらい驚いた。
水中の中に本物の生き物はいないそうだ。だから、水の中に落ちてしまった冒険者は即気絶するとかで、それを掬い上げるのがスキュラたんの仕事だということだ。
「ひと掬いでワンちゅ~るだワン」
美味しい食べ物が貰えるらしい。しっかり餌付けされてやがる……。
聞き出した正しいヒントをパーティーの皆で吟味してエルセスが纏め、結論を出す。
そうやって協力し攻略を進めていき、遂に────。
「これが、最後の宝箱……だよな?」
「ええ、既にこの古代遺跡すべてを探訪しました。もう、ここしか残ってません。必ずここに最後の宝箱が眠っているはずです」
「この金ピカ輝く目に眩しいやつがか? またフェイクじゃねえの?」
「ガイ、エルのこと疑うの……?」
「そういう訳じゃねえけどさあ。あからさま過ぎやしないかと思ってな。最後の最後だぞ。こんな光ってるけど、ちっこいのに金目のもんが入ってるとは……」
「大きいからって良い物が入っていることは稀だわ。大きい宝箱なんか大体がモンスター、ミミックだったじゃない」
マルグリットがそう言って会話を締めた。
最後の最後に辿り着いたそこは古代遺跡の中心で、かつて黄金の鐘が鳴り響いていたとされる鐘楼の中だった。
高い建物は怪しいと最初に隈なく探ったつもりだったが、その時にこの宝箱はなかった。これはきっと、正しくクエストをこなさないと現れない特別仕掛けの宝箱なのだろう。
「開けましょう」
エルセスの力強い言葉にも押されて、俺は黄金の宝箱を開けた。途端に響く機械仕掛けの無機質な声。
『お疲れ様でした。これが最後の宝箱です。【黄金の湯】チケットをお受け取りください』
宝箱の中には金色のチケット、【黄金の湯】への招待券が、そこにはあった。
「や……やった、ぞ……!」
「マジかよ本物……!」
「あたし知ってるこれよく宣伝してるやつ……!」
「私も知ってるわよ……本当にあったのね【黄金の湯】って……!」
皆が喜びに打ち震える中、
「皆さん、何かこっちに向かってきます!」
エルセスの危険感知の魔法陣に引っかかるものが出たらしい。何か大きな物体がこちらへと、目に見えて迫ってくる。
「──────!!!!」
鐘楼の最上階、四方は吹きっ曝しで風の暴虐が俺たちを襲った。
『危険はありません。森バードです。皆さんを【黄金の湯】まで乗せて運びます』
案内の声がなかったら攻撃しているところだった。それだけ脅威を感じる巨大な野鳥は、森バードというらしい。
「綺麗なエメラルド色……」
マルグリットが惚けたように言う。
分からないでもない。森バードの羽毛は森の木々に溶け込むような色であり、よく見ればキラキラ光る神秘的な何かで覆われているのだ。
そしてその瞳は、宝石のエメラルドが如く輝いている。
森バードは全てを心得た風に俺たちへと背を向け、乗れと促す。
戸惑いながら鳥の背中に跨り、そこは広々としているので股開くより縮こまってしがみつく状態だったが、その微妙な体勢で全員が乗り込めば、森バードの巨体が動き、上に乗る俺らを揺らしながらも助走、大空へ向かって羽ばたいた。
「ぎゃあ」「ひい」「びああ」と悲鳴が三名分は聞こえたが森バードは容赦なく飛ぶ。
俺とエルセスはくっついて、苦笑い。
空を飛ぶことには慣れている。エルセスだって、己の正体を知ってから大空を飛ぶ練習をよくしている。おかげで二人だけ、落ち着いたものだ。
「タモン、これでダンジョンマスターに会えますね」
「ああ、そうだな……」
この十年、それを目標に頑張ってきた。やっと意地悪な第三階層を攻略できたのだ。心は感動に震え、目の前が晴れていく気分を味わっている。
ダンジョンマスターに、エルセスの両親のことをどう尋ねようか黙考しながらも空から見た巨大遺跡は、いつもの夕陽に照らされ煌めく。
それは希望の光のように思えた。
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