ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

文字の大きさ
上 下
103 / 119
桃野郎が君臨するぞ編

88、進撃してピーチスメル*

しおりを挟む
「その桃臭ピーチスメルって俺にも効くと思う?」

「少量なら鬼には効かないと思うわよ。それにもう、この辺のは全部、私が吸い取ってあげたわよ♡」

 わあ、メイさんめちゃ頼りになるう。
 あ、でも、メイさんには避難指示を出しておいたはず。
 臣下淫魔や天使たち、特にジェイラルとジェミアル親子と逃げろって言っておいたのに、どうしてここに居るんだ?

「天使たち、み~んな残って冒険者たちの避難誘導してるわ。うちの家臣たちも同様、ね♡」
「えっ、天使は偽体じゃないから逃げないと……シーラとルディナも、中級モンスターじゃ、やつには勝てないし」

「大丈夫よ。荒らしとはいえ、攻撃しない者や明らかに格下のモンスターには手を出していないじゃない。こっちから攻撃しなければ安全よ♡」
「確かに、そうだけど……でも、何かあったら」

 避難中に何かあってもいけないと思って、低級モンスターたちには食人鬼のエスプーサとモルモも付けている。
 俺との通訳にも役立ってくれるけど、こういう時、意思疎通できる上に強い高級モンスターである食人鬼たちは、とても頼りになる。

 メイさんも、そうだ。普段だって臣下淫魔たちを連れて自主的にダンジョン内を警邏してくれている。
 天使たちも、俺が細かく指示しなくてもジェイラルと、後から合流したディプタスも一緒に指示系統を整えてダンジョン内の物販と流通とを取り仕切ってくれている。
 皆の働きっぷりには本当にいつも感謝しているのだ。

「ありがとうシオくん♡ ダンジョンマスター様、私たちは貴方に想ってもらえて幸せだわ。だからこそ、私たちも貴方を守りたいの。自主的に残っている子たちは自己責任よ。気にしないで♡」

「ダンジョンマスター略してダンマスよ、わしも同じ思いじゃぞ」

 バッケン爺ちゃんまで……。

「ここは、わしの隠居ダンジョンじゃ。好き勝手されては堪らん。して、やつは今どこじゃ? フロストの小僧を倒してから、第六階層へは降りたじゃろ」

 黒画面を見る。荒らし野郎の現在地は第六階層アイレン区か。

 第六階層へ降ると、ランダムにどれかの迷路に飛ばされる。そこから時計回りに進んで行き、最終的に必ず真ん中の橙鬼区へ辿り着くようになっているのだ。
 ボスの妖精たちは担当区に居るとは限らないので、本来だったらボス妖精を探しながら迷路を踏破しなければならないが……。

「あやつ、迷路なんぞ無視か。壁を壊して突き進みよるな」

 そうなのだ。妖精どころか迷路の壁さえ無視で、一直線に橙鬼区の城を目指している。

 迷路の壁って、あんなにあっさり壊れるものだっけ?

 かなり頑丈に造られた上で『不壊』の魔法もかけてあるはず。それを壊すだなんて……。
 どこまでも非常識なやつだ。

「てめえ、コラ! 俺が丹精込めてつくったラブホテルを壊すんじゃねえよ! 肉壁も堪能しやがれコンチクショウがっ」

 あ、馬鹿シレノス、出て来たら駄目じゃないか。
 おそらく、荒らし野郎が最初に降り立ったのはシレノス区で、そこからラブホ壊しながらアイレン区に渡ったところ今ココってやつだな。

「酷いよ酷いよ! 僕が育てたお花の壁も壊してさ! 何様のつもりなの! 行け、シレノス! お仕置きしちゃええええ」

 自分では動かないのがアイレンなのは知っていたけど、そうじゃない。
 お前も出てくるな引っ込んでおけ。と、忠告しようとしたら、二人ともあっさりヤられてしまった。桃臭ことピーチスメルを嗅いでしまったらしい。

「ふや~ん、変な気持ちぃぃ」
「おいコラ、やんぞ、やりたくてやりたくてたまんねえぞ。よっ、と、おおっふ、おりゃあアア……!」
「やあぁぁんんいきなり激しすぎいぃ壊れちゃうぅぅんん」

 一瞬の内に、目も当てられない18禁BL風景が広がってしまった。
 ピーチスメルやばい。妖精にも効くとは、どんだけチートなんだ……。

「よし、わしが出ようかの」
「早まるなバッケン爺ちゃん。その年齢で初体験は不味い」
「何を言うとる。わしは永遠の攻めジジイじゃぞ」

 いや、そういう問題でもなくて。俺がそういう話題を出したのが悪かったな。でも、やっぱりそういう問題じゃねえかな? ピーチスメルを嗅いだ者は等しくホモォしてしまうわけだからして……。

「ならば、単独行動が吉じゃて。カップルでおったらアーッなことになるんじゃろ」

「いやいや、カップルじゃなくても催淫効果あるんだってば。でだ、あいつ普通に強いんだよ。ピーチスメルなくても最強チートなんだぞ。強さ天元突破して爺ちゃんの百倍は強いからな」

「さすがに百倍は無理ねえ~諦めなさいな♡」

「ぬう…………」

 メイさんにも諭されて何とかバッケン爺ちゃんの行動を止めたが、放っておけば何かしでかしそうなのは明白だ。

 お年寄りのくせに行動力ありすぎだろ。

 うちに隠居して15年くらいになるけど、ちっとも隠居してない。孫を蹴落とすことしか考えていないらしく、ダンジョンで研究したことをせっせと論文にまとめて本国へ送るのは勿論、メンドイ村のことや派遣されてきた魔導士の素行も全て報告して孫を追い詰めているという。

 この間、自慢げに語ってました。

 そんなバッケン爺ちゃんには橙鬼のお手伝いをお願いしようと思う。

 橙鬼の様子を黒画面モニターで探ったら、橙鬼区の城塔てっぺんで不敵に笑うやつがいた。
 橙鬼である。
 紛うことなき橙鬼だが、修羅を潜った野武士もののふっぽい顔つきになっている。この短い間に何があった橙鬼よ……。

 傍にはタモンとエル君もいるようなので少し安心。二人とも正体は天使だ。偽体は持たないけどエル君は超絶賢いしタモンは俺が幼いエルセス君に持たせたチートアイテムの数々を使いこなすことができるだろう。
 いざとなっても元よりBLカプだから、そこも安心。

 問題は橙鬼だ。
 やる気……いや、殺気に満ちている。

 渾身の『ぼくがかんがえたさいきょうのしなりお』がシカトされて腸煮えたぎっている。わかる。俺も橙鬼に短時間で初攻略された時、シナリオスキップされたのかと思ったらめたくそ腹立ったもの。
 気持ちは分かるが無茶して欲しくない。
 あいつ、ここに来た当初だって迷走して短期間の内に三回も帰省していた前科があるのだ。追い詰められたら何をしでかすか分からないのが橙鬼というやつである。

 そんなことをバッケン爺ちゃんにも説明しつつ、無謀なことしがちな橙鬼のサポートを頼んだ。

「ええぞい」

 うっきうきわくわくなバッケン爺ちゃん。

 俺はというと、第六階層の真中に聳える城塔へ移動魔法陣を展開して爺ちゃんが消えるまでを見送り、そっと息を吐く。

「お疲れねシオくん♡」
「メイさん……でも、休んではいられない。こうしてる間にも、あ、キングたちが」

 カーディス区のモンスターたちのまとめ役、キング・オルグハイとキング・ウルクハイが荒らし野郎の前に立ちはだかった。

「相変わらず、あの子たちったらムッキムキね♡」

 淫魔なメイさん、キングたちの評価をしながらも膝に寝かせていたフロストの腹筋を触る。
 映像をオカズに現物を触るというお得感満載の所業だね。

「ぅン」って身を捩りだしたフロストは、淫魔の手管によってどんどんと発情していき、股間には立派な富士山が聳え立ったのだった。
 せっかくピーチスメルは抜けたのに、淫魔に手をつけられてしまえば意味ない。

 それ、どうする気だろう。

「んまっ、素敵な魔羅♡」

 お口でジュポジュポやり始めた。いかがわしいお店のサービスかな。

「ぁぅ、ぁ、ぁ、ぁー」

 眠りながら搾り取られるフロストが全身を震わせ身悶える中でも、淫魔の口撃は止まらない。

 ぢゅっ、ぢゅ、ぢゅるるるる

 淫らな音が響いて「ご馳走様♡」まで、フロストは唯ひたすら雪の上で踊り跳ねるしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...