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桃野郎が君臨するぞ編
87、お見送りしてまた溶ける
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「シオ様、そろそろ準備を終えませんと……」
リアンかハイネかは知らんが、大蜘蛛に急かされる。
「もうちょい、これと、これ、こっちも入れて……よっし、オッケ~」
去年からコツコツ準備を進めていたとはいえ、時空ポシェットに詰める物品は膨大な量になり、あれもこれもと考える内に、こんなギリギリまで詰め込み作業に追われる事態となった。
俺、準備ヘタクソか。
いやいや、エルセス君に不自由させないためにも、最強の武器防具は必要だし、タモンに見せてもらった物品は絶対に要るのだ。そして見せてもらった量以上に用意しないと、俺の気が済まない。
これは俺の中の中二との対話なのだ。
中学校の図書室で発見したファンタジー武器防具アイテム辞典は、確かに俺の愛読書であった。その本には神々が使うものはもちろん、ゲームや漫画で出てきたもの、創作物のアイテムもふんだんに描かれていて面白く、夢中で読んだものだ。
レールガンとかパイルバンカーとか浪漫溢れまくっているよな。
それが通販でお手軽に買えちゃうんだぞ。この、俺の中二心を反映したかのようなラインナップはきっとチャワードが揃えたものに違いない。
────だって、あなーたこうゆうの、すきでしょ?────
好きですが何か?
同時に読んだモンスター図鑑も良かった。時間を忘れて読み込んだものだ。
懐かしく思い返しつつも現実に戻ろうか。
「あ、エルセス君には大きかったな」
眠っているエルセス君は今、大蜘蛛の上半身人間部分リアン&ハイネの腕に抱えられ、上向きプリンセス乙女抱っこ状態である。
その肩に時空ポシェットをかけてあげたのだが、重力に負けてだらんと下に落ちてしまうので、仕方なしに小さな体へと巻き付けた。
一周はしたな。
「時空の流れによっては途中で取れてしまうかも知れないので、しっかり持たせておくのが大事ですよ」
「それならいいが……リアン、ハイネ、タモンに拾われるまでは見ててくれよな?」
「勿論です。座標は把握してますので、送り届けた後も時空の狭間から見守りますよ」
時空の狭間から大蜘蛛が覗いているのか……想像するとシュールだな。
「宜しくお願いするのである」
「エルセスを頼みます」
カリオス氏とテネリアさんが頭を下げる。
この日が来るのを覚悟していたとはいえ、いざとなったら身を引き裂かれるように辛いことなのだろう。
赤の他人な俺だって心苦しいのに、本人たちにとったらどれ程のことか…………。
「お任せ下さい。それでは、行ってきま~す」
リアン&ハイネの軽い掛け声に呼応して時空が開く。そこへ、ひょいっと大蜘蛛の身を潜らせ、数瞬の内にエルセス君の姿も消えた。
あっという間だ。
準備期間は長かったのにな。お別れの時間は、ほんの少しだけだった。
こんな事になって、本当に心苦しい。
こんな事になった原因が憎い。
エルセス君が未来で幸せになると分かってはいるが、避難しなくてはいけない事態になったのは、ダンジョン荒らしクソ野郎のせいである。
見送りに水を差すと思って閉じていた黒画面モニターを呼び出す。
やつは今、第五階層を爆走中のはずだ。一週間はかかる道程。そこをやつは爆走していた。文字通り。
ちょっと奥さん信じられますう?
あの荒らし野郎、もふもふ魔雪狼よりも、サンタさんさえ高速で移動させる魔馴鹿よりも、自らの足で走っての移動中なんだぜ。
それがまた、早いのだ。
牛もンモ~と鳴き、ワカサギもピチョンと飛び跳ねるスピードで、気づいたら道程の半分は走り抜いている。
約一週間の道のりの半分を数時間でだ。
あいつ、飲まず食わず休憩無しで、よく走れるな……人間じゃない。あ、精天児だった。何それって種族。
『精天児:精霊の力を宿す種族』
はえー。精霊ね。うちにも精霊はいっぱい棲んでいて魔クリスタルの養殖に貢献してくれている。
扉を守る子もいるが、多くはダンジョン内をふわふわ漂って自由に過ごしている。
とても愛らしい存在だが、荒らし野郎は可愛くない。
きっと親父の称号を受け継いじゃったからだ。黄金竜の後継って、なんだそれ。変なもん生み出すなダメ親父め。
とにかく、精霊だか竜だか皇子だかのスペシャルなお生まれの荒らし野郎は、それから数時間後に氷河山岳地帯へと足を踏み入れ、フロストと対峙する。
「わすのアイスクリーム踏むでねえ!」
隠しておいたアイスクリームの場所を荒らされたらしいフロストはめちゃ御立腹だ。
荒らし野郎はどこへ行っても荒らすらしい。
カンフーの構えで荒らし野郎を威嚇するフロスト。今日は服を着ている。たまに褌一丁だから、びっくりだ。
「あうん」
一発でやられたが。
今回も荒らし野郎の動きは追えなかった。気づいたらフロストは褌一丁で両膝を屈していた。股間を抑え、尻を天に向けた格好でピクピクしている。
だから、何がどうなって、ああなるのだ? あと、何故にフロストだけ負けると服が脱げて褌一丁になるのだ?
───そうゆう、えんしゅつなんだねー────
パネェ……。チャワード、たまに脳内に響く声にもすっかり慣れたが、今回の荒らし野郎のことは何も言ってこないから、ノータッチだと思っていた。
───チャワードね、みまもっているだけ。だってかみさま、だもの。やぁーっと、あなたの、あいて、きた。あなたの、ちからもちさんよ。よかたねえ───
はあ? なんのこっちゃい。
相変わらず意味不明自称神は放って現実を見よう。
フロストが負けた。
周りのスノウマン、雪男、黄猿や氷猫と氷鼠すら、ポカーンとその様子を眺め、去ってゆく荒らし野郎を見送るだけだった。
彼らは低級モンスターだから荒らし野郎には攻撃するなと厳命はしてあったが、フロストがやっつけてくれると思って見物に出てきていたのだろう。
見事に期待は裏切られたわけだが、当のフロストが心配だ。
第五階層に飛ぶ。
「おーい、フロスト生きてるか?」
「あっふん……お股、お股が痛てえずらああぁぁ」
股間蹴り食らったのか? そんな風には見えなかったけどなあ。まあ、見えないも何も、荒らし野郎の動きは一切理解不能だったのだけども……。
でもフロストは、やつに攻撃された中で唯一の高級モンスター。話が通じて偽体でもある高級モンスターである。
何か、やつに関して掴めるかもと、更にフロストへと話しかけた。
「攻撃食らったのか? 痛いって、やばいのか? 藻スラ卵で治るかなあ……」
「そうゆんじゃねえずらぁ……これはアレずら……シオしゃまぁぁ」
だんだん口足らずになってきたぞフロスト。近くに行ってみたらば、がばっっと跳ね起き、「我慢できんずらぁ!」と、雪の上に押し倒されたんだが。
「おおおおいおいおい、フロスト、落ち着けステイステイ、うち来た頃にもあったなこんなこと……! 元に戻ってる、戻ってる、てか、溶けてるギャアアアアアア」
十年前に会った頃が懐かしいと思う暇もなくフロストの顔面が崩壊。美青年が溶けていく絵面はインパクトあり過ぎて、つい悲鳴を上げてしまう。
「ありゃあ……こりゃ、いかんのう」
「シオくぅん♡ 大丈夫かしらねえ」
「助けた方がよかろ」
「じゃあ、吸い取っちゃお♡」
その声はバッケン爺ちゃんと淫魔のメイさんか。
助けてくれ、この白ワンコにのしかかられ間近で顔面が融解していくホラーな状況を何とかしてくれ。
「あぅぅんん……!」
フロストが一瞬硬直したと思ったら、そのままの姿勢で後ろへ倒れてしまった。
ばたんきゅーとはこのことかと。
「な、何だったんだ?」
フロストに押し倒された時に着物の合わせ目を解かれてしまったので、ずりずりと裾を引き摺りつつ起き上がる。
「催淫ガスみたいなものよ。淫魔には効かないけどね。吸い取って糧にしちゃうわん♡」
「仄かに残る桃の匂いが、そうじゃな。これを間近で喰らえば皆、股間を抑え、内股になり、膝を屈してしまうじゃろう」
それって所謂、発情状態というやつ。生殖能力あるやつが食らったら大ピンチだ。
ならば、ん? そう言えば何故に無生物のゴーレムにも効いたのだ? あいつら、言葉にならないとか表現はしていたみたいだが……不思議。
リアンかハイネかは知らんが、大蜘蛛に急かされる。
「もうちょい、これと、これ、こっちも入れて……よっし、オッケ~」
去年からコツコツ準備を進めていたとはいえ、時空ポシェットに詰める物品は膨大な量になり、あれもこれもと考える内に、こんなギリギリまで詰め込み作業に追われる事態となった。
俺、準備ヘタクソか。
いやいや、エルセス君に不自由させないためにも、最強の武器防具は必要だし、タモンに見せてもらった物品は絶対に要るのだ。そして見せてもらった量以上に用意しないと、俺の気が済まない。
これは俺の中の中二との対話なのだ。
中学校の図書室で発見したファンタジー武器防具アイテム辞典は、確かに俺の愛読書であった。その本には神々が使うものはもちろん、ゲームや漫画で出てきたもの、創作物のアイテムもふんだんに描かれていて面白く、夢中で読んだものだ。
レールガンとかパイルバンカーとか浪漫溢れまくっているよな。
それが通販でお手軽に買えちゃうんだぞ。この、俺の中二心を反映したかのようなラインナップはきっとチャワードが揃えたものに違いない。
────だって、あなーたこうゆうの、すきでしょ?────
好きですが何か?
同時に読んだモンスター図鑑も良かった。時間を忘れて読み込んだものだ。
懐かしく思い返しつつも現実に戻ろうか。
「あ、エルセス君には大きかったな」
眠っているエルセス君は今、大蜘蛛の上半身人間部分リアン&ハイネの腕に抱えられ、上向きプリンセス乙女抱っこ状態である。
その肩に時空ポシェットをかけてあげたのだが、重力に負けてだらんと下に落ちてしまうので、仕方なしに小さな体へと巻き付けた。
一周はしたな。
「時空の流れによっては途中で取れてしまうかも知れないので、しっかり持たせておくのが大事ですよ」
「それならいいが……リアン、ハイネ、タモンに拾われるまでは見ててくれよな?」
「勿論です。座標は把握してますので、送り届けた後も時空の狭間から見守りますよ」
時空の狭間から大蜘蛛が覗いているのか……想像するとシュールだな。
「宜しくお願いするのである」
「エルセスを頼みます」
カリオス氏とテネリアさんが頭を下げる。
この日が来るのを覚悟していたとはいえ、いざとなったら身を引き裂かれるように辛いことなのだろう。
赤の他人な俺だって心苦しいのに、本人たちにとったらどれ程のことか…………。
「お任せ下さい。それでは、行ってきま~す」
リアン&ハイネの軽い掛け声に呼応して時空が開く。そこへ、ひょいっと大蜘蛛の身を潜らせ、数瞬の内にエルセス君の姿も消えた。
あっという間だ。
準備期間は長かったのにな。お別れの時間は、ほんの少しだけだった。
こんな事になって、本当に心苦しい。
こんな事になった原因が憎い。
エルセス君が未来で幸せになると分かってはいるが、避難しなくてはいけない事態になったのは、ダンジョン荒らしクソ野郎のせいである。
見送りに水を差すと思って閉じていた黒画面モニターを呼び出す。
やつは今、第五階層を爆走中のはずだ。一週間はかかる道程。そこをやつは爆走していた。文字通り。
ちょっと奥さん信じられますう?
あの荒らし野郎、もふもふ魔雪狼よりも、サンタさんさえ高速で移動させる魔馴鹿よりも、自らの足で走っての移動中なんだぜ。
それがまた、早いのだ。
牛もンモ~と鳴き、ワカサギもピチョンと飛び跳ねるスピードで、気づいたら道程の半分は走り抜いている。
約一週間の道のりの半分を数時間でだ。
あいつ、飲まず食わず休憩無しで、よく走れるな……人間じゃない。あ、精天児だった。何それって種族。
『精天児:精霊の力を宿す種族』
はえー。精霊ね。うちにも精霊はいっぱい棲んでいて魔クリスタルの養殖に貢献してくれている。
扉を守る子もいるが、多くはダンジョン内をふわふわ漂って自由に過ごしている。
とても愛らしい存在だが、荒らし野郎は可愛くない。
きっと親父の称号を受け継いじゃったからだ。黄金竜の後継って、なんだそれ。変なもん生み出すなダメ親父め。
とにかく、精霊だか竜だか皇子だかのスペシャルなお生まれの荒らし野郎は、それから数時間後に氷河山岳地帯へと足を踏み入れ、フロストと対峙する。
「わすのアイスクリーム踏むでねえ!」
隠しておいたアイスクリームの場所を荒らされたらしいフロストはめちゃ御立腹だ。
荒らし野郎はどこへ行っても荒らすらしい。
カンフーの構えで荒らし野郎を威嚇するフロスト。今日は服を着ている。たまに褌一丁だから、びっくりだ。
「あうん」
一発でやられたが。
今回も荒らし野郎の動きは追えなかった。気づいたらフロストは褌一丁で両膝を屈していた。股間を抑え、尻を天に向けた格好でピクピクしている。
だから、何がどうなって、ああなるのだ? あと、何故にフロストだけ負けると服が脱げて褌一丁になるのだ?
───そうゆう、えんしゅつなんだねー────
パネェ……。チャワード、たまに脳内に響く声にもすっかり慣れたが、今回の荒らし野郎のことは何も言ってこないから、ノータッチだと思っていた。
───チャワードね、みまもっているだけ。だってかみさま、だもの。やぁーっと、あなたの、あいて、きた。あなたの、ちからもちさんよ。よかたねえ───
はあ? なんのこっちゃい。
相変わらず意味不明自称神は放って現実を見よう。
フロストが負けた。
周りのスノウマン、雪男、黄猿や氷猫と氷鼠すら、ポカーンとその様子を眺め、去ってゆく荒らし野郎を見送るだけだった。
彼らは低級モンスターだから荒らし野郎には攻撃するなと厳命はしてあったが、フロストがやっつけてくれると思って見物に出てきていたのだろう。
見事に期待は裏切られたわけだが、当のフロストが心配だ。
第五階層に飛ぶ。
「おーい、フロスト生きてるか?」
「あっふん……お股、お股が痛てえずらああぁぁ」
股間蹴り食らったのか? そんな風には見えなかったけどなあ。まあ、見えないも何も、荒らし野郎の動きは一切理解不能だったのだけども……。
でもフロストは、やつに攻撃された中で唯一の高級モンスター。話が通じて偽体でもある高級モンスターである。
何か、やつに関して掴めるかもと、更にフロストへと話しかけた。
「攻撃食らったのか? 痛いって、やばいのか? 藻スラ卵で治るかなあ……」
「そうゆんじゃねえずらぁ……これはアレずら……シオしゃまぁぁ」
だんだん口足らずになってきたぞフロスト。近くに行ってみたらば、がばっっと跳ね起き、「我慢できんずらぁ!」と、雪の上に押し倒されたんだが。
「おおおおいおいおい、フロスト、落ち着けステイステイ、うち来た頃にもあったなこんなこと……! 元に戻ってる、戻ってる、てか、溶けてるギャアアアアアア」
十年前に会った頃が懐かしいと思う暇もなくフロストの顔面が崩壊。美青年が溶けていく絵面はインパクトあり過ぎて、つい悲鳴を上げてしまう。
「ありゃあ……こりゃ、いかんのう」
「シオくぅん♡ 大丈夫かしらねえ」
「助けた方がよかろ」
「じゃあ、吸い取っちゃお♡」
その声はバッケン爺ちゃんと淫魔のメイさんか。
助けてくれ、この白ワンコにのしかかられ間近で顔面が融解していくホラーな状況を何とかしてくれ。
「あぅぅんん……!」
フロストが一瞬硬直したと思ったら、そのままの姿勢で後ろへ倒れてしまった。
ばたんきゅーとはこのことかと。
「な、何だったんだ?」
フロストに押し倒された時に着物の合わせ目を解かれてしまったので、ずりずりと裾を引き摺りつつ起き上がる。
「催淫ガスみたいなものよ。淫魔には効かないけどね。吸い取って糧にしちゃうわん♡」
「仄かに残る桃の匂いが、そうじゃな。これを間近で喰らえば皆、股間を抑え、内股になり、膝を屈してしまうじゃろう」
それって所謂、発情状態というやつ。生殖能力あるやつが食らったら大ピンチだ。
ならば、ん? そう言えば何故に無生物のゴーレムにも効いたのだ? あいつら、言葉にならないとか表現はしていたみたいだが……不思議。
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