ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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灰天使と黒天使の時空超越ランデブー

【番外】堕天使の冒険

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「ダンジョン三階層を攻略しよう」

 そう提案したのは、ダンジョンに温泉施設ができて、階層も増えて、ダンジョンのモンスターがアイテムやコインを落とすようになってからだ。

「なんで、あんな儲からねえ階層を?」
「あたし、賛成!」
「決断早えなオイィ! 理由くらい聞いてやれよ」

 ガイとパティが絶妙なかけ合いをしているが、こいつらとも腐れ縁なのか何なのか、もう五年は一緒にいる仲である。
 理由を教えるくらい、訳ないさ。

「前に、イベントの不備でダンジョンマスターが出てきたことがあっただろ」
「ああ、有りましたね、そんなこと」

 可愛いエルセスが相槌を打ってくれるので、俄然張り切って続きを言おう。

「ダンジョンマスターに会ってみたいんだ。またイベントの不備があれば出てくるかも知れないが、そんな偶然、いつ起こるか分かったもんじゃない。こちらから掴まえるなら、階層クリアの時が一番可能性が高いと思わないか?」

「ええー、それは……どうなんだマルグリット?」
「なぜ私に聞くのよ。でも、意見を言っても良いなら、三階層攻略は賛成よ。ただ漠然と冒険するより、リーダーの目的のためにやる方が面白そうじゃない」
「お前なら、そう言う気がした」

「ガイだって本当は賛成なんじゃーん」
「俺は慎重に考えてえの。即賛成したパティとは落ち着きというものが違うぜ」
「何よそれぇ!」

 また愉快なかけ合いをしているが、三人ともが賛成してくれて感謝だ。残るはエルセスなのだが……。

「自分ちょっと納得できないのですが、タモン」
「おう、どのへんが?」
「ダンジョンマスターに会いたいってとこがです。どうして見も知らぬダンマスに会いたいのでしょうかねえ」

 あれ? エルセスから疑いの視線がチクチク飛んで来るぞ?

「そういや、そうだな。ダンジョンマスターって、あれだろ。黒鬼だってな」
「うんうん、可愛い系男子! ほっぺぷにぷに柔らかそうつつきたい!」
「パティらしい評価ねえ」
「ええー、マルグリットも言ってたじゃーん。いけないお姉さんに誑かされそうな顔だって」
「ぶっは! ひでえなマルグリット!」

「……タモンの好みの顔ですよねえ」

 ボソッと一言呟くエルセスが怖いんだが?!
 これはもう完全に疑われているわけだ。俺の気移りを。誤解だ。

「エル、俺はエルセスのことが一番だ」
「…………ぷぅ」

 ああああ頬を膨らませてご立腹の様子がたいへん可愛らしいのでキスしてえ!

「ダンジョンマスターに会いたいのは、聞きたいことがあるからだ」
「聞きたいことって何です?」
「お前の両親のことだ」

 包み隠さず言おう。既にエルセスには彼を拾った経緯や俺のことも話してある。
 元より自立の兆しで記憶の隠蔽工作が解けかけていたし、賢いエルセスは自身が体験した諸々の違和感を繋ぎ合わせて俺の正体まで言い当ててきた。

 いやほんと賢い子だよな。

 三階層を攻略しようって思えたのも、エルセスがいるからだ。彼の頭脳なら、他の冒険者たちが軒並みに苦戦している『黄金郷クエスト』を必ず解き明かせるだろう。

「両親……」

 気にはなるだろう。拾い子だと伝えた時に鑑定魔法陣を己へと掛け、自身の正体まで知った子だ。
 通常、自分自身へ鑑定魔法陣は使わないというか使えないのだが、どこをどうやったのやらエルセスは鑑定魔法陣を改良して己自身を鑑定してしまった。

 賢い通り越して天才じゃないか? うちの子、天才。
 まあ、おかげで、天使であることを知ってしまったわけだが。

「エルの両親……?」
「なんでダンマスがそこに絡むんだよ」
「リーダー、話して」

 パティ、ガイ、マルグリットが疑問を持つのは当たり前だ。こいつら抜きにしての攻略も考えたのだが、こいつらってば底抜けに良いヤツらなんだ。
 さっき三階層攻略すると宣言した時も、間を置かずに賛成してくれたくらい、こいつらとは気が合うし最高のパーティーだと思っている。

 だからこそ、エルセスの事情も話した。

 全てではない。エルの両親があのダンジョンに居るかもしれない。エルを拾った時、ダンジョン産のアイテムを持っていたから。と、攻略に関わることだけ話した。

「マジかよ。でもよ、エルを拾ったの俺らと会う前だろ? ダンジョンは最近にできたやつだぞ。どうしてエルは丸薬を持ってたんだ?」
「そこの謎も解き明かせたらなと思う」

「えー、あたし全然わからないなあ。マルグリットわかる?」
「まともに考えて……その、エルを拾った時にはもうダンジョンはあったってことかしらね」
「まともに考えねえと?」
「……荒唐無稽な話になるわね」

 マルグリットが言葉を濁すのも無理はない。その当時、存在してはいないはずのダンジョン産のアイテムを、エルセスは持っていた。

 ダンジョンの成り立ちとか詳しいことを知らないので、もしかしたら当時にもうダンジョンは形成されていたかもしれないが、それでも、説明できない何かがある。

 特殊なアイテム──五色の丸薬がそれを示していた。これが約二十年以上前から出回っていたとは到底思えない。
 これの存在だけでもマルグリットは荒唐無稽だとする考えを想像してしまったが、俺はもっと辻褄が合わないアイテムを知っている。

 丸薬が入っていた収納鞄、時空ポシェットだ。

 ダンジョンマスターが、例のイベント不備で冒険者たちに詫びの印として渡していた『無限ポシェット』。あれが、どうしても時空ポシェットに似ているようにしか思えない。デザインや機能が若干違うようだけど、作り手は同じ気がするのだ。
 制作者は第八階層にいると言っていた。

 時が経って第八階層が開通した時、第三階層攻略を少し休んで第八階層まで行ってみようという話になった。

 結果、第六階層がホモエロ過ぎて俺が断念したが何か文句あるだろうか? 逆ギレ気味で文句言いたいのはこちら側なのだ。

 第六階層はイロモノだ。あの迷路自体が発禁もので教会が取り締まるべき案件だと思う。
 攻略者が前情報をくれたから対策はしていたが、我慢できずに何度エルセスを襲おうとしたことか……。

 迫り来る触手に絡まるエルセスの艶姿……ごっつぁんです!!

 ガイも、「強制浮気させられる。もうこりごりだ」と、げっそり。しつこいホモ妖精に付きまとわれていたからな、ガイ。
 冒険者に理解ある奥さんだが、さすがにこれはないと説教を食らったそうだ。
 頬がこけて目が落ち窪んだガイを見ていられず、第六階層攻略は断念したのだった。

 やはり俺らには第三階層が合っている。

 パティやマルグリットたち女性陣も、「第六は壁も床も気持ち悪い。服が汚れる」と常に言っていたから第三階層攻略に再び移ることを喜んでくれた。

「あたしとしてはエルがいつ暴発するかくらいしか見るとこなかったわ」
「暴発?! してませんよ!」
「えらいえらい、よく我慢したわよ。リーダーがホモ妖精に盗られるんじゃないか気が気じゃなかったわねえ」

 え、俺が知らないところで俺もホモ妖精に狙われていたと?
 危なかった。常にエルセスしか見ていなかったからホモ妖精には全く気づかなかったが、あんなところでアアンなことになったら腹かっさばいてエルセスに詫びねばならぬとこだった。

 エルセスがいて良かった。
 横にいた彼の手を握ったら、嬉しそうに握り返してくれた。んああああ可愛い押し倒したい……!

 その夜、めちゃくちゃ抱いたった。
 翌日、足腰立たなくなったエルセスに詫びつつ冒険も臨時休業となる。

「ガイのとこも大変みたいだから、しばらく本気でパーティー活動は休業かもね。個人のクエストしてきていいかしら」
「あたしもー。リーダー、エルのことちゃんと労わってやりなよ」
「そうね。お互いに気持ち良くなるのがベストよ。一方的にがっつくの、よくないわ」

 女性陣からダメ出しを食らったので、本当にしばらく休むことになったのだった。
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