ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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灰天使と黒天使の時空超越ランデブー

【番外】堕天使の偽装

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「そうか、立派なことだが、チビが一人だと何かと物騒だ。俺も共にゆこう」

 エルセスは疑いもせず「よろしくお願いします!」と握手を求めた。おい、出会ってすぐの赤の他人を信用するな。俺は大丈夫だが、他の大人は怖いやつばかりだぞ。ということを教えたら、きょとんとしていた。

 あ、これはヤバい。俺と一緒に居すぎて世間の怖さが解ってないとみた。

 これまでは、ただ守るだけだったからな。襲ってくるものは徹底的に排除したし。
 ここからは違うぞ。モダンガ王国へ行くまで、魔獣が出たら戦い方を教え、武器の使い方、有用な薬草があれば摘んで、その効能と使い方を説明した。

 特に真空魔法陣について聞いてきた時は、それなりに語った。物質より細かい粒子の説明や、化学反応まで話が及べば、「タモンは博識ですね」と、目を輝かせて慕ってくる。
 天界では異端な知識だと蔑まれたものだが、こうも純粋な反応されると……むう、胸が、こう、くすぐったくなるな。

 そうそう、エルセスに武器を扱う才能は無かった。それはもう判りきっていたことだが、剣を持てば振り回され、どこまでも回って行くのでさすがに諦めた。

 魔法だな。魔法陣の扱いが、やはり一等に上手い。これももう判りきっていたことだ。
 エルセスが着ていた服は数多くの魔法陣が縫い込まれていた。一つ一つに意味があって、幼天使を守護する役目を果たしている。
 成長して着れなくなっても、マントに縫い付けて今もエルセスを守っているのだ。これら魔法陣を作成した者は天才だと思う。おそらく、俺と同じ堕天使の父親なのだと思うが……。

 父親の才能譲りなのか、エルセスの魔法陣運用はピカイチだ。これを極めて敵を倒していくだけで、きっと有名になれるだろう。

 モダンガ王国で冒険者登録を済ませ、気の合いそうなやつらとパーティーも組み、順調に冒険者の道を歩み始める。

 エルセスは宣言していた通り、報酬で得た金の殆どを使って本を買い、たくさんの知識を身につけていった。

 俺は先ず、偽装したが。

 堕天使のステータスは只の冒険者には向いてない。この十分の一、いや、百分の一くらいに弱体化させないと人としておかしいパワーを見せつけてしまうだろう。

 というわけで、神笏を使う。できることなら使いたくなかったのだが、仕方ない。こいつの能力が必要だった。

 ≪ステータス≫
 ――――――――――――――――
 ゴッド・セプタ【神笏】
 種類:神具
 能力:神能最高位値
 称号:『神王降臨』『擬似霊憑依』
 ――――――――――――――――

 称号の、神王を降臨、擬似霊まで憑依させるという訳分からん能力を使う。

『訳分からんこともあるまい。我を上手く使えば最初から人格を創り上げることも可能だ』

 ……神王さん、黙っててくれませんかね?

『御主が笏を持った時点で自我が起動したから無理だな。して、どのような擬似格が必要なのか』

 神王と交信しないと前に進めないらしい。なんとも面倒なものを使ってしまった。

『面倒とか言うな。我は役に立つぞ。これが擬似格ラインナップだ。好きなの選べ。そのように偽装してやる』

 種族変更……性別まで変えれるのか……。

『見た目は当たり前だが、声、仕草、能力に性別、ありとあらゆるデータを擬似格にインプットし、霊憑依させることで肉体の構造を再構成させるのだ』

 再構成ってそれ、死んでないか?

『死ではいない。憑依。または変身だと思えばいい』

 よく分からんが、やってくれ。

『その心意気やよし!』

 見た目を変えるとエルセスが戸惑ってしまうだろうから、見た目と性別は変えずにステータスを下げて人間にしてくれ。

『それだと、おもんないな』

 面白さは求めてない。
 それで、元に戻るにはどうすれば?

『笏を持って我を呼べ』

 了解だ。

 こうして、人間に変身してから冒険者業を続けた。

 人間って弱いな。油断するとすぐ怪我をする。その度にエルセスが回復魔法で治してくれて魔法の練習になるからその点は良いが、気をつけていないと、うっかり死にかける。

 そうだな……時空ポシェットにあるもので武装するか。
 マナス・チャカとかいいな。遠くから攻撃できて単純な銃撃なので魔法陣の痕跡が残らない。こっそり使うのに役立つと思う。これを常用武器にする。

 それから、普段は隠蔽魔法陣で隠してある時空ポシェットから適当に武器防具を取り出し、鑑定がてら手入れをする。
 基本的に自動再生が付いていてメンテナンス要らずなものが多いが、磨いてやらないと錆びたり動かなくなったりするものもある。
 特に剣は、よく磨くに越したことはない。自作のクリーナーを使ってお手入れだ。

 そんなことをしていたら、今、パーティーを組んでいるやつらに見つかった。

「なんだよそれ、いい感じの鎧じゃん」

 防御重視のガイストル、武者鎧に反応する。これは英雄鎧。これまた天界では聞いた事のない英雄の持ち物だったそうで、即死攻撃を魔力消費して弾くらしい。更に『不壊』つき。

「やるよ。こっちの盾も使えそうなら使え」

 パーティーの防御力が上がるのは良いことだ。英雄盾もセットでどうぞだ。

 折角の高性能な武器防具が時空ポシェットの中で肥やしになってしまうのも勿体無いことだと気づいたので、他の武器なども積極的にパーティーメンバーに使ってもらうことにした。

 服装も、そこらに売っている冒険者用の服より、職業別衣服というのが多々あったので、それをパティとマルグリットにあげたところ、エルセスの方から怨念じみた何かの念が届く。

「え、なんだ?」

 背筋がゾクゾクっとした。

 エルセスにも何かあげた方がいいのだろうか?

 ガイストルからエルのフォローをしろと言われたし、何か武器を……と探しつつガイからちょっかいをかけられるので適当に応対する。

 ガイはエルにくっつき過ぎだ。面倒見が良いのだろうが、そういうのは奥方にだけやれ。

「おま、そうゆうー。自覚しねえと、他のやつに掻っ攫われるぞ」

 また、からかわれるが、分かっている。
 エルセスは美人で、幼い頃から顔がいいとは思っていたが、成長するにつれ益々に美人度が上がってヤバいのだ。色んなやつから色目で見られている。
 俺がこれまで守ってきた花を、横から拐かされるなど、許すものか。

 誰の嫁にもやらぬわ。

 そういう気概で、宿までも一緒について行く。部屋も同じだ。ベッドも同じ。

 寝る用意をしたところで……はて?
 なぜか、俺がベッドに転がされたが……?

「タモン、自分は16歳になりました。成人です」
「おお、おおう、そうだな。成人祝いするか」
「プレゼントはタモンがいいです」
「は、あ​────!?」

 俺の胸をもみもみするエルセスだが、これなんか違うなと思ったらしい。
 眉間に皺が寄り、腕を組んで考えるポーズをしたかと思ったら、指で丸い輪っかをつくり、そこに人差し指を入れたり出したり……待て、それはいかん。けしからんぞ。誰だその仕草を教えた下品な輩は。

「お前にはまだ早いよ」
「ううー」

 そういうことをしたい年頃なのだろうが、エルセスにはまだ早い。
 16歳になった成人したと言い張るが、まだまだ子供で頬っぺはぷにぷにだし、唇はぷっくり美味しそうで吸い付きたいし、首筋は綺麗な曲線を描き胸元の飾りは色づいている。

 んあれ? 食べ頃なんじゃね……?
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