ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

文字の大きさ
上 下
92 / 119
桃野郎が君臨するぞ編

77、攻略されてフルボッコだドン

しおりを挟む

村人視点


「えいっ!えいっ!」


僕の名前はポッコ。狼人族だ。僕は立派な戦士になるために、今日もこうしてトレーニングをしている


「うん。いい太刀筋だ」


そして彼女の名前はルルルゥ。族長の娘で先祖返りをした白い毛並みと強い体を持つ。僕の1歳年上のやさしい彼女は、こうして毎日のように僕に訓練をつけてくれていた


僕は密かにルルルゥに恋心をいだいており、彼女との訓練の時間をいつも楽しみにしている。いつか僕は最強の戦士になりルルルゥに告白したい。そんなことを妄想していた


「ポッコはこれから強くなれるよ」


「ありがとうございます!」


そしてこの村には一人、旅人が滞在している。彼の名前はユーリさん。彼も僕の1つ年上で、すっごく強い


村の大人たちでも手を焼いていたドギャンボアをなんと、ルルルゥとパーティーを組みたった二人で倒してしまったのだ


これには村人みんなが大歓迎だった。近頃、ドギャンボアには作物を荒らされており、みんな困っていたからだ


いつか僕もユーリさんやルルルゥみたいに強くなりたい。そしてルルルゥと結ばれるんだ。僕はそれを目標にして、今日も訓練を頑張る


……。


……。


……。


「えいっ!えいっ!」


今日も僕はこうしてトレーニングをしている。いつものように、ルルルゥも僕の訓練を見てくれていた


でもいつもと違うのは、今日のルルルゥは何だか熱っぽい感じだ。彼女は瞳を少しだけトロンとさせていて、頬も心なしか火照っている


そして、彼女の体からは発情したメスの臭いがしていた。僕は他の狼人族より鼻が強く、匂いに敏感なのだ


でも僕はそんなことを彼女に指摘しない。さすがにデリカシーがなさすぎる。でも、発情しちゃったルルルゥとエッチな関係になっちゃうってのも男の夢かもしれないな。いや。だめだ、僕!しっかりしろ!


「ルルルゥ。体調が悪そうだけど大丈夫?」


「ああ、すまない。なんだか今日は熱っぽくてな。ユーリが回復魔法を使えるらしいから、彼に頼んでみるよ」


そう言うとルルルゥはポーっとした顔のまま、村の外れにあるユーリが滞在している空き家へと向かっていく


僕は一瞬不安に襲われたが、さすがにルルルゥがほぼ見ず知らずの旅の人に肌を許すなんてあり得ない。彼女は多くの狼人族のアタックを断ってきた鉄壁の女性なのだ


そういえばもうすぐ村の祭りがある。祭りの日に結ばれた恋人は幸せになれる。そんな言い伝えが古くからあり、祭りの日には数多くのカップルが誕生していた


「今年は思い切って、ルルルゥをデートに誘ってみようかな。なんてね」


僕は淡い恋心を抱きながら、今日も訓練を続けていく


……。


……。


……。


「えいっ!えいっ!」


今日はルルルゥが訓練に来なかった。まあ彼女にも用事があるのだろう。今日の僕は一人で寂しく訓練をすることにする


「ふー。」


一通り訓練を終えて家に帰る途中、ポーっとした顔で歩くルルルゥを見かける。彼女に出会って嬉しくなった僕がルルルゥに話しかけると、今日も彼女は発情した体臭をまとわせながら、頬を赤く火照らせていた


「ルルルゥ、大丈夫?」


「あ、ああ……。昨日はユーリに回復魔法を掛けてもらったらだいぶ体調が良くなったから、今からまた彼にお願いをしに行くところなんだ」


発情期というものは獣人の女性にとっては大変なものらしい。そう聞いたことがある。僕は男だから分からないけど、そういうものなんだと自分を納得させる


「ルルルゥにはいつもお世話になってるから、何かあったらいつでも僕に頼ってよ」


「ありがとう。ポッコは頼もしいな」


ルルルゥに頼もしいとお世辞を言われた僕は舞い上がりながら家に帰る。やっぱり、今年の祭りはルルルゥをデートに誘おう。勇気を出すんだ。僕に一つ目標が出来た


「こうしちゃいられないな!トレーニングを増やそう!」


さらに強くなるために僕は走り込みをすることにする。家に帰った僕はまたすぐに部屋を飛び出すと、トレーニングを再開した


長い時間村の中の走り回りへとへとになった頃、僕は村の外れにあるユーリさんが滞在している空き家の近くへとたどり着く


「ユーリさんいるかな?」


僕は彼に挨拶をしようと家の扉をノックする。するとユーリさんが家の中から出てきた


「やあポッコ。どうしたの?」


「いや、ちょっと近くを通ったから挨拶でもと……」


「そうなんだ。ありがとう!」


ユーリさんと話をしていると、彼が滞在している家の中からルルルゥの強い体臭が風にのって流れてくる。先程までルルルゥがこの家に滞在をしていた証だ


僕の部屋にも、いつかルルルゥの臭いが染み付く関係になれればいいなぁ。そんなことを考えながら、僕はユーリさんとの会話を終え、家路についた


……。


……。


……。


もう三日も連続でルルルゥが訓練に来ていない。彼女の体調は思わしくないようだ。心配になった僕はルルルゥの家にお見舞いに行くことにする


訓練を終えた僕がルルルゥの家を尋ねると、彼女は出かけた後のようだった。体調が悪いわけではないらしい


三日後には村の祭りが控えているから、ルルルゥは色々と準備で忙しいのかもしれない。そういえば、僕も親に今日は早く帰ってこいと言われてたっけ


急いで家に帰る途中、ルルルゥとすれ違う。今日も彼女は頬を火照らせていた。最近の彼女はいつもボッーっとしている。ルルルゥに話を聞くと、やはり彼女は祭りの準備で忙しいらしい


最近ルルルゥとはすれ違いが増えていることを寂しく思いながらも、僕も祭りの準備を手伝うために家に帰る。早く祭りの日が来ないかな。そしてルルルゥをデートに誘うんだ。僕は決意を新たにした


……。


……。


……。


「えいっ!えいっ!」


村の祭りを翌日に控えた日に、今日も僕は剣のトレーニングをしていた。今日もルルルゥは訓練に来ていない。でもいいんだ。明日僕はルルルゥをデートに誘う。彼女に会えない日々が、僕に勇気を出させてくれた


「明日、絶対にルルルゥをデートに誘うぞ!」


僕の剣を握る力が強くなる。僕は彼女に似合う男になるために、今日も剣を振るった


……。


……。


……。


そして祭りの日が来た。僕は浮足立つ村の中でキョロキョロとしながらルルルゥを探した。祭りの日に乗じて彼女をデートに誘おうとしている何人もの村の男達が、ルルルゥを探しているのが分かる


しかし僕がどれだけ村の中を探しても、ルルルゥは見つからなかった。彼女を探しているうちに日が暮れて、ついには夜になる。それでもルルルゥは見つからない


もしかしてルルルゥは他の男と……。そんな不安に押しつぶされながらも、彼女を探すことを諦めた僕はトボトボと家に帰ることにした。もうすぐ深夜になってしまう。流石にタイムリミットだ


明日になったらまた、いつものように彼女は僕の訓練を見に来てくれる。そうしたらまた元通りの関係だ。そう信じて


……。


……。


……。


「さようなら。ポッコ」


翌日、ルルルゥはユーリとともに村から旅立っていった。昨夜、彼女に何があったのか。僕には分からない


いつものように訓練をしている僕に旅立ちの挨拶をしにきてくれたルルルゥの股間からは、ユーリさんの体臭が漂っていた

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...