ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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黄金竜の影響とダンジョン経営編

67、星見してこんがらがる

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「じゃあ、あとは自分で創れ」
「いやあ! 待って、待って、言うから、言うからア」

 称号『星精』、これがなかなかチートで、精霊力を集め物質を創造できちゃうらしい。

 本当かどうかステータスで確認。知りたい言葉をタップすれば何重にも説明が出るのだ。忘れていたけど。
 いや、普段そこまで人のプライベートは覗かないから。当たり前だろ。いっぱい調べたのは藻スラ卵くらいだよ。摩訶不思議卵だからな。

 ほい、タップタップ。

『星精:この世界とは異なる物質法則で構成された未知の生き物』

 おい、不穏なこと書いてあんぞ。

『星精:物質創造の力を持つ』

 これは、さっき言っていた能力だな。

『星精:透明化能力を持つ』

 な、な、なにィィッ!

『星精:正体は触手おばけ』

「え? お前、宇宙から来た触手怪人なの?」
「てへぺろ☆」
「いや可愛くねえし?!」

「シオSUN☆見捨てないでええええ」
「急に泣き出してくっつくなあ! どういうことだよ!」

 聞いた話。元々、幻獣族は魔界に暮らしていなかった。方々から集まった余所者たちがつくったコミュニティだそうで、種族的統一性もない。
 魔界からしたら、あいつら集まってるし、「とりま幻獣な」という枠で括られているだけ、らしい。

「宇宙人だっているわけデス」
「まあ、そうですね」
「リアンもなの?!」

 確かにリアンも幻獣族だけど、蜘蛛だよね。蜘蛛だと言ってくれ。

は蜘蛛ですよ」

 その言葉、信じてるぞリアン。一人称が違うとか、気づいてないんだからね!

 話ずれた。今は吸血鬼の館だ。

 どの辺に建てるか相談したところ、この階層で一番高いところと言うので、水が流れる渓谷をつくる台地の上にした。
 馬鹿と煙は高いところが好きというが、そういうことだろうか。

「ここで星空コンサートしマース☆」

 そうだった。高いところ以上に星が好きな吸血鬼だった。やはり宇宙か。宇宙が近いからか。

 正式な住処ができて浮かれた星屑宇宙人野郎は「温泉つけてクダサーイ」と自宅に温泉まで所望。
 その辺に湧いている源泉からお湯を引き入れ、源泉かけ流しの湯も作った。というか、造らされたな。

 けっこうな工事だったぞチクショウ。

「工事しよう」の〈日課トライ〉があるとはいえ、造成して配管通して湯船つくってと面倒なことこの上ない。
 家を建てる時は、ある程度の均された土地があれば買うだけで建つけれど、後で追加する場合や荒れたところに建てようとすると手入れが必要なのだ。
 新築より改築の方が手間がかかる理屈と同じだ。たぶんな。

 完成と同時に「温泉デース☆みんなでハイりマショー」ということになり、皆で出来立て温泉【玉肌の湯】へ。

 ふい~ちょっとピリッとする酸性泉だけど、この刺激が老廃物を溶かして肌をツルモチにしてくれると思うと、いいねえ。もっと浸かりたくなるぜ。

「それで、シオ様、あの」

 リアンが隣にきた。人型のリアンは蜘蛛の毛むくじゃらじゃなく、美しいたまご肌を晒している。
 これは……色気あるお兄さんでは?
 はっ、あっちの星屑野郎から視線を感じる。

「リアン、こっち寄って。よしよし、ここなら死角だ」

 リアンを俺のかげに、星屑ゲス野郎からその身を隠す。

「ふわう……っ、そんな、抱き寄せられ……!」
「ん? 嫌だったか?」
「ひえ、そんなことはっ」
「なら、もう少し」

 じゃないと、星屑野郎が狙ってくる。俺の優しいお姉さんもとい優しいお兄さんをHENTAIの毒牙に晒すものか……!

「はひゃ、はい、あのあの、下心というのは、本当に……?」

 下心? あ、鞄買ってあげた時に言ったやつか。

「そうそう、無限ポシェット欲しくてさ」
「……はっ、あ、ああ……無限ポシェットのことでしたか……」

「うん、貴重品だろ。直ぐに数も揃えれないし、だから、まずはリアンを買収して……て、全部喋ったら意味ないやつうう」

 一人で突っ込んでしまい、自爆だ。
 どうやら温泉で俺の脳みそはイカれちまったようだな。

「ええーと、買収などせずとも、シオ様のためなら、喜んでつくります」
「そういうんじゃ駄目だよ。取引は対等にって、俺を育ててくれた人も言ってた」

 養護施設の施設長、金の工面に忙しかったからな。でも不正はしない、ギャンブルなんて以ての外、取引を持ちかけられたら先ず疑え。なんて、酒の愚痴に付き合わされては教訓を得たっけ。

 今思えば十歳児に話すことじゃないってば。
 施設長……今なら、黄金竜の加護で幸せになっているはずだ。

 幸せだよな、塩板先生。

 湯けむりの中、星空を見上げた。

 ダンジョンの空は創られたものだけど、俺の知識でも入っているのか、赤いベテルギウスにオリオン座が。あっちはハクチョウ座な気がする。適当かよ。冬夏まじっているし位置も全然違う。やっぱ適当だー。

 適当夜空だけど、くっついているリアムも、あっちでガーゴイルたちと呑みだした星屑宇宙人も、空に光る星々を見上げているから、気に入ってくれているみたい。

 しばらく温泉に浸かりながら、皆でゆったりした。

「そうだ。シオ様、僕の住まいに来て下さいな」

 そう言われたので、リアンについて行く。

 もう夜だ。普段なら、鬼ヶ城に帰って風呂入って寝る準備している時間だ。それなのに、リアンにホイホイついて行く俺は、なにかの違和感からの衝動に突き動かされている気がした。

「リアン……本当に、リアンだよな?」

 不安になって出した言葉は、思った以上に俺自身が納得できるものだった。リアンが、リアンじゃないように見えたから……。

「シオ様、こんな夜更けにに付いてきていいのですか?」

 ほらー。また一人称違うし。

「むう。リアンが誘ったくせに、どういうことだよ。リアンじゃないだろうが」

「……あまり言うつもりはなかったのです。はハイネ。アトラク・ハイネと申します」
「ああ、ハイネね」
「お気づきでした?」
「変な名前だなって思ってた。自己紹介も変だったし」

『リアン・UA・ハイネ』なんて、どう見ても変な名前だ。その後の自己紹介でも、「リアン」って言っていた。

「つまり、んだな?」
「ええ、私はハイネ。元より巨大な蜘蛛で、深淵に囚われておりました」

 ふむふむ、「私は蜘蛛」と曇りなき眼で言っていたハイネは、本当の本当に蜘蛛だと。

がリアンです。リアン・ウヌゴン。僕だって元は蜘蛛です。死んで彷徨って悪霊になりまして、今は囚われていたハイネに乗り移って活動してます」

 同じからだで二人分の自己紹介されるとこんがらがるなあ。二人とも口調が似ていて、どっちも蜘蛛っぽい言動するし。
 片方は悪霊だけど……。

「悪霊の割には明るいな」
「細かいこと気にせず色々やらかして退治されたので、その性質かと」

 殺されたんかーい。

「先代魔王にこき使われていたのですが、最期は勇者のたてにされまして」

 しかも、まおーん。いや魔王。先代ってことは今の魔王の父ちゃんなのか知らんけど、今代魔王と一緒にガチャ召喚してしまったのは運命だったかもな。

「待ってリアン、シオ様が悩んでいる。退治されたのか、たてにされたのかで矛盾があるでしょうが」
「ええー。説明は恥ずかしいです。自分で自分の黒歴史を暴露できますかできないでしょう」
「シオ様に失礼でしょうが」
「僕のシオ様はそんなことで僕を嫌わないはずです僕のシオ様だから」

 あ、ちょ、ま、こんがらがる、こんがらがっているよ二人とも。同じ口で二人分を喋るんじゃない。
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