ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

文字の大きさ
上 下
67 / 119
黄金竜の影響とダンジョン経営編

66、踊って☆星屑野郎

しおりを挟む
 第八【階層(毒森)】に来た。

 吸血鬼であるスタア・ピエイルの家を建ててあげるためだが、この森には元より城がある。城塞だが。吸血鬼はそこに居候中らしく、俺が訪問したら城のガーゴイル五人衆と演奏していた。

「なんだこれ。きらきら星なのにきらきら星じゃない」

 きらきら星かもしれないけど変曲きらきら星祭りくらいアップテンポなメインメロディを吸血鬼がピアノ演奏し、ガーゴイルたちが笛、タンバリン、鈴、カスタネットなどで陽気なビートを刻み、ホールの真ん中では骸骨スケルトンたちが手を取り合い踊っていた。
 骸骨たち、ホネホネ音頭みたいな踊りだ。社交ダンスではないな。
 その周りでティーカップ、ティーポット、モップ、チリトリ、バケツ、燭台、机やチェスト、ラジオに蓄音機までが適当に踊っているから滑稽なことこの上ない。

 あれだ。美女と野獣を思い出した。

 残念ながらメインで踊っているのは骸骨なので容姿が不明だけど、着ている服がドレスと貴族服っぽいので、なんかそんな感じ。投げやり。
 ぼへーと眺めていたら、端っこにいたリアンが気づいてくれた。

「シオ様、今晩は。いい夜ですね」
「リアン、この階層は夜だけど、外はまだ明るいから、こんにちはだな」
「そうなんですね? ここは日暮れが早いし、普段も暗き森で日が当たらないから、お日様を忘れてしまいますね」

 あれ? 蜘蛛って陽の光、大丈夫だっけ? ……ああ、朝見る蜘蛛は縁起が良いって聞くし、日中活動するのか。

「もしかして、骸骨たちが着ている服って、リアンが作ったの?」
「よくお分かりですね。スタアくんが演奏会に必要だって言うから作りました」

 やっぱりな。やたら仕立ての良い服を着た骸骨たち、リアンのセンスが光っているもの。だてに俺はリアンに服をいっぱい作ってもらってないんだぜ。
 リアン、ここに居るのも音楽を聴きに来たっていうより、自分が作った服を見に来たっぽいしな。

「そうだ、リアン。本革の鞄を買ってあげよう」
「え、急に、どうして」
「ふっ、下心ありで言ってるのさ」

 ちょっと格好つけて言ったけど、ただ単に無限ポシェットをまた作って欲しいだけだ。

「し、下心……! それってまさか……」

 顔を赤らめ、何かブツブツ呟くリアンの前に黒画面を展開。本革の鞄ページもだけど、カジュアルなバックも観るといいよ。色々と見せて、欲しいの選んでもらう。気分は姉ちゃんと選ぶカタログショッピングだ。
 いや、リアンて綺麗なお姉さん系だからさ。お兄さんなのは知っているけど、髪長いし、フレグランスでもしているのか花の匂いがするし、お姉さんみたいなんだ。

「ふいやああ……どれもこれも、いい……!」

 ほらほら蕩けた顔し始めたぞ。
 リアンはいつも一つに絞り切れないから、目移りしているものは俺が覚えて、あとでサッと買ってあげる。
 これぞ、できる弟ってもんよ。

「はうぅん、ありがとうございますぅ」

 夢見がちな乙女のような顔でお礼言われちゃったぞ。こんな姉が欲しい人生だった。

「いやはや、大蜘蛛殿にこんなメス顔させるとは、主様もヤりますネェ」

 演奏が終わったらしい吸血鬼が、なぜか苦笑いでこちらを見ている。

「メス顔?」
「あらら、理解してませんネ。このお顔」
「リアンは綺麗なお姉さんに見えるけどお兄さんだから……あ、まさかお前、リアンを狙ってんのか吸血鬼!」

 そうだ、こいつ吸血鬼。綺麗なおさんの血が好みの。リアンなんかジャストヒット性癖じゃないか!

 急いで血を買う。リアンが食べられたらいかん。その前に血を与えて満腹にしよう。

 えーと、〈モンスターのごはん〉から『吸血鬼グルメ血液パック』銀一枚から。けっこう高いな。

「顔写真を見て選べ」
「うっほ、いい男デス!」

 早速いいやつ見つけたみたいで何より。銀二枚もするイケメンじゃないか。まあ、いい。ささっと買って、手の平サイズの血液パックを吸血鬼に渡す。
 美味しそうにジュゴーっと飲んでいるから、これならリアンに手を出すことはないだろう。

 ……そういや、このホモ吸血鬼のこと何て呼べばいいんだ。自己紹介してなかった気がする。

「紹介し忘れてたな。俺はダンジョンマスターの塩板シオだ」
「シオSUNですねーよろしくデス☆」

 SUNて、太陽じゃねえわ。謎の呼び方だがこいつらしいから、まあ、いいや。

「よろしくな、星野郎」
「ぐへえ、まさかそんな呼び名でクルとは……!」

 腹抑えてうずくまったけど、これ、笑ってるっぽいな。そんなに面白かったかよ。

「屑野郎でもいいぞ。どっちにする?」
「に、二択しかないのデス?!」
「合体させて星屑野郎でもいい」
「ぎゃああああああ」

 のたうち回り始めた。そんなに喜んでもらえて嬉しい。今日からお前は星屑野郎だ☆

 住みたい家を聞いたら、家の外観を描いたスケッチを渡された。絵うまいな。水彩画だ。ゴシック様式の尖った尖塔が幾つもあり、壁は黒色で屋根が血の色。いかにも吸血鬼の館っぽいやつ。

「間取りは?」
「こっち見てクダサーイ」

 フリーハンドだが丁寧に色まで塗ってあって分かりやすい間取り図だ。

「地下に寝室が欲しいデス」
「棺桶で寝るのか」

 吸血鬼らしいっちゃらしい。

 いくら暗い森であっても、昼間はどうしても二階より上の部屋は日の光を浴びるだろう。こういう洋館だと大体の人は二階に寝室を設えると思うけど、吸血鬼なので陽が差さない地下か一階にしたいらしい。でもさすがに一階だと玄関開けたら一分で寝ぼけた吸血鬼と遭遇だ。

 地下がいいよな。館の探索が済んだら地下に降りて、そこで吸血鬼と対決なんて王道ではなかろうか。

 吸血鬼の館はシリーズがあって、この希望だとシリーズIIIが近いかな。これをベースに間取りをカスタマイズ。内装は本人の好みにして、大方できたところで見せる。

「いい感じデース☆ グランドピアノは玄関ホールに、棺桶ベッドにはお布団と枕クダサーイ」

 他にも楽器が欲しいとリクエストされた。グランドハープ、トランペット、バイオリン、バグパイプ、木琴、太鼓などなど大盤振る舞いだ。楽器って高い!

 そういやグランドピアノ、元からあるじゃないか。それ、どうしたん? ガーゴイルたちが持っている楽器も。

「んー、ある程度は創れるのデス」

 あやふやに答えやがるな。内緒か。内緒なんだな。ダンジョンマスターに内緒とはいい度胸だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

処理中です...