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黄金竜の影響とダンジョン経営編
51、遺体はハタチになってから
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謎魔王は放置して、今日も階層工事をといきたいところだけど、ダンマス湖の様子を見にきた。
魔クリスタルの件だ。
地底湖では無事に産卵まで漕ぎつけれたけど、ダンマス湖の養殖は芳しくない。
それなりに育っているように見える魔クリスタルだけに、藻スラが一向に見向きもしない原因が分からず、難儀している。
様子を見つつ首を捻っていると、見知らぬ……いや、知っているのだけど半獣姿から人間になっていることで認識が遅れたのだ。エスプーサとモルモがいた。
ひえ、食人鬼野郎たちだ。びくぷる。
「これは主様、お散歩……ではなさそうですね。我らに何か御用がおありでは?」
エスプーサ、長鞭をビシビシ、地面叩きながら近づいてくる。
「主様はあたいらの様子を伺いにいらしたのではねいですか? 低脳共の躾は済んでるよお。あいつら低脳だから忘れちまってたこともあったけど、ちょいと尻を叩いてやれば思い出したんでねい。今後も主様の役に立てる筈さ」
モルモって可愛い顔していながら見下し感半端ないよね。教鞭がヒュンヒュン唸っているのだけど、それで尻を叩いたのだろう。物理的に。
俺は話題を変えようと、魔クリスタルのこと、藻スラのことを話した。すると、エスプーサが、
「委細承知しました。これより藻スライムの調教に移ります」
「違うよ?! 藻スラ悪くないよ!?」
「ですが、ヤツが食わねば宝箱の中身が賄えないのでしょう? 我々の魔力補給にも必要です。問題しかありません。対処します」
そう言って藻スラを探しに行ってしまった。俺、藻スラに悪いことしたかもしれない。ごめん藻スラ……お前のこと大好きなのに、守ってやれそうにない。
だって食人鬼、怖いもん。
食人鬼だから、藻スラのことは食べないと信じてる。
そういえば、この人らの食事ってどうしたら?
ダンジョン内の人型モンスターは偽体で、藻スラ卵の青卵を食べることで魔力を補給して稼働している。
本体は魔界にあって本体が食事しているから、こちらでは食事をしなくていいはずだけど、食べること事態はできるし、食事を楽しむという嗜好は、そうそう止められないのだそうだ。
だから、魔界で好きだったものは、こちらでも食べたい衝動に駆られるとか。
そんなことを赤鬼が話していた。カワハギのみりん干しを食べながら。
そして食人鬼のお食事といえば……。
「はふん……主様のほっぺって柔らかそうだねい」
ギャー! モルモがこちらをおいしそうにみつめている!
「モルモっ、残念ながら俺は鬼だ。不味いぞ」
「そうかい? いい匂いするけどねい」
ギャー! ねらわれている!
「あ、あわ、あわわ」
「怯える主様は可愛いねい。食べないよお。安心してねい」
「安心できないよおお」
「ダンジョンで死んだ冒険者を貰えれば、それでいいからねい」
「え、うちのダンジョン滅多に人死に出ないぞ」
処刑も滅多に行わない。
「他のダンジョンで出た死体を買ってくれたら嬉しいねい」
「そんなことできんの?!」
────て、購入画面を隈なく探したらあったよ。 検索窓に『遺体』って入れても、なぜかエラーが出たから手動で探したさ。カテゴリーから〈モンスターのごはん〉で。
あなたは20歳以上ですかって確認が出る購入ページに、しれっと売っていた。
俺、最近やっとハタチになったばかりだから、知らなかった。こんな購入画面あったんだーそうなんだーほへー。
「必要な頻度はどのくらい?」
「買ってくれるのかい? 嬉しいよお! そりゃあ毎日食べたいけど、主様の為なら一週間に一回でも我慢できるかねえい……じゅる」
「毎日あげるから! うちの従業員やお客さんは齧らないで!」
「やったよお、言ってみるもんだねい。主様、太っ腹だねい!」
あとは好みを聞いて……子供がいいと言われたらちょっと入手が困難っぽいので、普通に成人した人間と言ってもらえて助かった。
ただし……。
「男……」
「ああ、女より断然、逞しい壮年の男性だねい」
「そ、そう、調達がんばるよ」
冒険者って逞しいし、壮年になっても強そうな男性が多いと思うし、イケルイケル。
エスプーサにも聞かないとな。
暫くして、移動陣が開いたと思ったら、エスプーサが藻スラを鞭でグルグルに縛って持ってきた。
で、藻スラ、ぐってりしている。
「生きてる?!」
「生きてます。生きてなくては聞き出せませんから。さあ、藻スライムのムゥよ、主様にも話すのです。なぜ、魔クリスタルを食べないのですか」
え、ムゥって名前なの? いつの間に名前が? 元から?
ムゥ、縛られながらも懸命に訴えるが……ごめん、何言っているか分からん。不甲斐ない主人で、ほんとごめん。
「エスプーサ、通訳を頼めるかな」
「承知仕りました。ムゥの言によれば、ここの魔クリスタルは美味しくないそうです」
「たったそれだけのことだった?」
もっといっぱい訴えていた気がするけど。たぶん、こうやって捕まったことに対する怒りとか、ご主人様のバカあたりは言っている気がする。
「もっと訳して宜しいのでしたら……『主様に何度も訴えたのに改善してくんないバカぁ。哀しい。泣いちゃう。でも我慢。はぁ、もっと塩味が効いた旨味あるまろやかでいてクリーミーな蕩けるものが食べたいなあ』だそうで」
やっぱバカ言われとるやん。めっちゃ味の要望しとるやん。さすがにここまで切なに訴えているとは気づかなかった。我慢させてごめんよ。
しかしすごく細かい要望だな。その味を出す為に何をしたらいいか、検討もつかない。
「分かったけど分からんなあ。それ、その味を出すのには、どうしたらいいの?」
「ふむふむ……『岩塩ダーくらいの濃さが好き』だそうです」
岩塩ダー。そいつは盲点だった。あれは塩の塊だ。魔クリスタルの育成には海水が不可欠と聞いてから鬼ヶ島を囲う海の水を採取したけれど、岩塩ダーという塩味そのものモンスターが、我が家にはいたじゃないか。彼に協力を頼もう。
「よし、岩塩ダーにも話を聞こう」
「お任せあれ。やつは固いが調教してみせましょう」
エスプーサは藻スラを俺に渡し、再度、移動陣で岩塩ダーを捕まえに行った。
すまぬ岩塩ダー。怖いかもしれんが、調教されてくれ。
はて、調教とは?
魔クリスタルの件だ。
地底湖では無事に産卵まで漕ぎつけれたけど、ダンマス湖の養殖は芳しくない。
それなりに育っているように見える魔クリスタルだけに、藻スラが一向に見向きもしない原因が分からず、難儀している。
様子を見つつ首を捻っていると、見知らぬ……いや、知っているのだけど半獣姿から人間になっていることで認識が遅れたのだ。エスプーサとモルモがいた。
ひえ、食人鬼野郎たちだ。びくぷる。
「これは主様、お散歩……ではなさそうですね。我らに何か御用がおありでは?」
エスプーサ、長鞭をビシビシ、地面叩きながら近づいてくる。
「主様はあたいらの様子を伺いにいらしたのではねいですか? 低脳共の躾は済んでるよお。あいつら低脳だから忘れちまってたこともあったけど、ちょいと尻を叩いてやれば思い出したんでねい。今後も主様の役に立てる筈さ」
モルモって可愛い顔していながら見下し感半端ないよね。教鞭がヒュンヒュン唸っているのだけど、それで尻を叩いたのだろう。物理的に。
俺は話題を変えようと、魔クリスタルのこと、藻スラのことを話した。すると、エスプーサが、
「委細承知しました。これより藻スライムの調教に移ります」
「違うよ?! 藻スラ悪くないよ!?」
「ですが、ヤツが食わねば宝箱の中身が賄えないのでしょう? 我々の魔力補給にも必要です。問題しかありません。対処します」
そう言って藻スラを探しに行ってしまった。俺、藻スラに悪いことしたかもしれない。ごめん藻スラ……お前のこと大好きなのに、守ってやれそうにない。
だって食人鬼、怖いもん。
食人鬼だから、藻スラのことは食べないと信じてる。
そういえば、この人らの食事ってどうしたら?
ダンジョン内の人型モンスターは偽体で、藻スラ卵の青卵を食べることで魔力を補給して稼働している。
本体は魔界にあって本体が食事しているから、こちらでは食事をしなくていいはずだけど、食べること事態はできるし、食事を楽しむという嗜好は、そうそう止められないのだそうだ。
だから、魔界で好きだったものは、こちらでも食べたい衝動に駆られるとか。
そんなことを赤鬼が話していた。カワハギのみりん干しを食べながら。
そして食人鬼のお食事といえば……。
「はふん……主様のほっぺって柔らかそうだねい」
ギャー! モルモがこちらをおいしそうにみつめている!
「モルモっ、残念ながら俺は鬼だ。不味いぞ」
「そうかい? いい匂いするけどねい」
ギャー! ねらわれている!
「あ、あわ、あわわ」
「怯える主様は可愛いねい。食べないよお。安心してねい」
「安心できないよおお」
「ダンジョンで死んだ冒険者を貰えれば、それでいいからねい」
「え、うちのダンジョン滅多に人死に出ないぞ」
処刑も滅多に行わない。
「他のダンジョンで出た死体を買ってくれたら嬉しいねい」
「そんなことできんの?!」
────て、購入画面を隈なく探したらあったよ。 検索窓に『遺体』って入れても、なぜかエラーが出たから手動で探したさ。カテゴリーから〈モンスターのごはん〉で。
あなたは20歳以上ですかって確認が出る購入ページに、しれっと売っていた。
俺、最近やっとハタチになったばかりだから、知らなかった。こんな購入画面あったんだーそうなんだーほへー。
「必要な頻度はどのくらい?」
「買ってくれるのかい? 嬉しいよお! そりゃあ毎日食べたいけど、主様の為なら一週間に一回でも我慢できるかねえい……じゅる」
「毎日あげるから! うちの従業員やお客さんは齧らないで!」
「やったよお、言ってみるもんだねい。主様、太っ腹だねい!」
あとは好みを聞いて……子供がいいと言われたらちょっと入手が困難っぽいので、普通に成人した人間と言ってもらえて助かった。
ただし……。
「男……」
「ああ、女より断然、逞しい壮年の男性だねい」
「そ、そう、調達がんばるよ」
冒険者って逞しいし、壮年になっても強そうな男性が多いと思うし、イケルイケル。
エスプーサにも聞かないとな。
暫くして、移動陣が開いたと思ったら、エスプーサが藻スラを鞭でグルグルに縛って持ってきた。
で、藻スラ、ぐってりしている。
「生きてる?!」
「生きてます。生きてなくては聞き出せませんから。さあ、藻スライムのムゥよ、主様にも話すのです。なぜ、魔クリスタルを食べないのですか」
え、ムゥって名前なの? いつの間に名前が? 元から?
ムゥ、縛られながらも懸命に訴えるが……ごめん、何言っているか分からん。不甲斐ない主人で、ほんとごめん。
「エスプーサ、通訳を頼めるかな」
「承知仕りました。ムゥの言によれば、ここの魔クリスタルは美味しくないそうです」
「たったそれだけのことだった?」
もっといっぱい訴えていた気がするけど。たぶん、こうやって捕まったことに対する怒りとか、ご主人様のバカあたりは言っている気がする。
「もっと訳して宜しいのでしたら……『主様に何度も訴えたのに改善してくんないバカぁ。哀しい。泣いちゃう。でも我慢。はぁ、もっと塩味が効いた旨味あるまろやかでいてクリーミーな蕩けるものが食べたいなあ』だそうで」
やっぱバカ言われとるやん。めっちゃ味の要望しとるやん。さすがにここまで切なに訴えているとは気づかなかった。我慢させてごめんよ。
しかしすごく細かい要望だな。その味を出す為に何をしたらいいか、検討もつかない。
「分かったけど分からんなあ。それ、その味を出すのには、どうしたらいいの?」
「ふむふむ……『岩塩ダーくらいの濃さが好き』だそうです」
岩塩ダー。そいつは盲点だった。あれは塩の塊だ。魔クリスタルの育成には海水が不可欠と聞いてから鬼ヶ島を囲う海の水を採取したけれど、岩塩ダーという塩味そのものモンスターが、我が家にはいたじゃないか。彼に協力を頼もう。
「よし、岩塩ダーにも話を聞こう」
「お任せあれ。やつは固いが調教してみせましょう」
エスプーサは藻スラを俺に渡し、再度、移動陣で岩塩ダーを捕まえに行った。
すまぬ岩塩ダー。怖いかもしれんが、調教されてくれ。
はて、調教とは?
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