ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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ゆるっとダンジョン構築編

34、建てよいずれはキャッスル

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 パートのおばちゃん天使たちはシフトを素早く決め、それぞれ配置についてくれた。早速、今日から働いてくれるという。ありがたい。

 俺は天使親子もとい、ジェイラルさんミアちゃん親子と淫魔お兄さんのメイさんを連れて、地図から転移した。

 着いたのは静かな湖畔の森の影。
 湖の向こうには【鬼ヶ城 レベル6】が、堂々とそびえている。

「ここは?」
「ダンマスルームだよ」
「えええっ、ダンジョン中枢じゃないですか!? いけません、私たちはダンジョンに派遣されただけで」
「赤鬼夫妻も住んでるから。ほら、あそこに見える【物見櫓 レベル10】な」

 もはや櫓ではなく、立派な住居と化している五重の塔である。五階建てなのである。
 どうやったらこんな短期間で、あの櫓だけレベルMAXにできるのかは、謎。

「この湖は魔クリスタルを増やす実験場にしているだけでさ、誰か住んでくれるなら賑やかになるよ。あっちの森には動物がいるくらい」

 動物は天卵から生まれたやつらで、飼育小屋を嫌って飛び出したのが森に棲みついた。子供が付近で遊んでも大丈夫。凶暴な動物はいない。むしろ、野ネズミやウサギ、イタチにテン、キツネにタヌキにネコチャアアンンなど、小さな生き物しかいない。
 馬や牛は離れたところの牧場に居る。

 よし、家を、コテージを建てよう。ファミリーサイズで。

 木をちょっと消して平らにしつつ、段々に縄張りを張る。何かの拍子で、湖の水が浸水しても困るしね。段をしっかり上げて水害に備え、メイさんご所望のウッドデッキつき家屋、【豪華コテージいずれはキャッスル レベル1】を買う。金五千枚也。

 前面ガラス張り、ロータリーから玄関まで階段とスロープが付き、ウッドデッキが一階をぐるりと囲い込んでいる。そこではBBQもできる仕様だ。
 自動扉の玄関に吹き抜けのエントランス、暖炉付きの広いリビングとシステムキッチン、ランドリールーム、トイレ、シャワールーム。どれも近代的でありながら森の中であるということの調和を忘れない、贅沢な木造建築となっている。

 二階は、今は主寝室と子供部屋しかないが、レベルが上がれば書斎や縫い物部屋、読書室にゲームルームなど、それ専用の部屋が増えるらしい。

 地下も、今は地下倉庫しかないが、レベルが上がればワインセラーやオーディオルーム、シアタールームなんかも出来るらしいぞ。

 いずれはキャッスルの文字通り、レベルMAXになったら城が建つと思われる。
 今から楽しみだな。

 ジェイラルさんを見やれば、口をあんぐり開けて佇んでいる。
 メイさんとミアちゃんは、きゃっきゃ喜んでいるから、つかみはオッケーだと思う。

「一週間に一度、家のメンテが入るけど、掃除したかったらしていいよ」

 鬼ヶ城や櫓、バッケン爺ちゃんの数寄屋風屋敷もそうだけど、一週間に一回、大掃除含む軽いメンテナンスがある。それは俺の最高極位値の魔力で賄われているので、毎日掃除しなくてもいいのだ。
 でも、急に掃除が必要になったり、掃除することが日課になっている人もいるだろ。そこは好きにしてもらえたらと思う。

「素敵な家ねえ。ありがとう、シオくん♡」
「いえいえ、希望のミニマム感がなくなって、すいません」
「何言ってるの。は、いいことなのよ♡」

 はーん。淫魔なメイさんが言うと意味深だなあ。

 隣のジェイラルさんを見つめない。確かにジェイラルさんは背が高いし、大きいと言えるけども、ジェイラルさんのアレも見つめない。舌なめずりしない。

 大きな家を見て欲しい。ダンマスからのお願い。

 いつかジェイラルさんは美味しくペロリされてしまうのだろうが、強く生きて欲しい。

 *

 天使族の皆さん、司令官ジェイラルを中心にしたパートタイムおばちゃんファイブには、温泉施設のスタッフをお任せした。

 一応、妖精紳士なカーディスも受付と案内担当でいるのだが、あいつ、女性客しか接客しないんだよね。男もする時あるけど、それは見目の良いイケメンにだけ。あとは放置だ。
 紳士とは。

 温泉施設には売店、食堂、フィットネスクラブもある。券売機を備え、モニターでAIが宣伝し、全自動で案内されるシステムだが、不慮の事故には対応できない。
 病人や怪我人、喧嘩や窃盗など、人災絡む事件には特に人手がいる。

 天使族をスタッフに加えたことで、徐々にだが客も増え、客の動線も整った気がする。
 真面目なジェイラルが、AIだけでは客に不案内なところを見つけ出し、臨機応変に対応してくれるからだ。

 ジェイラルは人を使うのがうまい。
 無骨な冒険者たちへ柔軟に対応してくれるのもそうだが、パートおばちゃん天使ファイブを適材適所に配置し、あの扱いにくい軟派で風流人なカーディスすらも、有用に使ってしまうのだ。

「あちらの、肉体美が麗しい拳闘士さんの、落し物とロッカーの鍵です。届けるついでに案内をお願いできますかね。カーディスさん」
「喜んで案内させてもらうよ。今夜は帰らない」
「夜にはパートの方々をお迎えに、ナルシスが通用門に来る予定ですが、カーディスさんにご紹介しましょうか?」
「ナルシス……あの、天使族の中でも美形と有名な……! 是非参加させてもらうよ(キリッ)」
「はい、では、あれとこれとそれと、あ、こちらも、すべて終わらせていただいたら」
「早急に、やり遂げるとも!」

 といった具合に。

 天界ではさぞや出来る人だったに違いない。一級天使とかいう称号もあるし。そう思って物のついでに聞いてみた。天界では偉い人だったのかと。

「いえいえ、私など、ずっと小部署をタライ回しにされていた窓際管理職でしたよ」

 どゆこと?

「あの人、大天使たちからやっかみを受けていたみたいね。元奥さんも、上司から押し付けられたアバズレよ。離婚してミアを引き取ったの正解だわ。クソ女に育てられたらクソに育つもの」

 と、この後もクソクソ言い放つメイさん。もう既にジェイラルの元奥さんの話を聞き出すほど仲良くなっていることに戦慄した。

 淫魔メイさんは隠微な雰囲気が強いけど、正義感溢れる司法の番人だ。
 淫魔の能力を使い、加害者の容疑を固めて追い詰めていく様は見事なものだった。
 特に性犯罪には厳しく、バッケン爺ちゃんが小一時間拘留された後、頬が痩せこけ萎びていたのが印象的だった。
 何をしたのだろう?

「うふふ♡ まだ自称未成年なシオくんには、ひ・み・つ♡」

 …………はい。
 大人になったら教えて下さい。
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