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ゆるっとダンジョン構築編
39、増殖して魔クリスタル
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魔クリスタル引いては藻スラ卵を増やす試みは、今尚、続いている。
あんなに沢山あった藻スラ卵なのに、もう半分にまで減っていた。モンスターをパワーアップあわよくば進化させるには、大量の藻スラ卵が必要ということだ。
早急に魔クリスタルの増殖が求められる。
「バッケン爺ちゃん、魔クリスタル増えそうだって?」
「そうなんじゃ。八咫目殿がアドバイスをくれてな」
バッケン爺ちゃんも八咫目も、【美人の湯】の裏に住んでいるから生息域が被って諍いでも起こすのではと心配したが、今のところ喧嘩するどころか大の仲良しっぽいので安心した。
魔クリスタルの増殖は、魔クリスタルというだけに、魔力を注げば増えるのではないかと、最初は安直に考えて枯らしてしまっていた。
魔力をあげすぎると、枯れるのだ。
微調整して、魔クリスタルに必要な魔力量を割り出す日々だったのだが、やっぱり枯れる。一向に目処が立たなくてやきもきしていたところ、八咫目がアドバイスをくれたそうな。
「曰く、海水と光と栄養が必要ということじゃった」
「ん? 淡水じゃないのか?」
「そうなんじゃよ。地底湖にあったから、てっきり真水を好むと思い込んでおったわい。それに、光のあまり差さぬ湖の底じゃ。そこまで光が重要とは思わなんだ。そして栄養、これは魔力であり魔素じゃな。魔力に含まれる素が浸透することで、光の魔力も活性化し新たなる養分を生むそうじゃ」
「ああ、光合成か」
「知っておるんかい!?」
いや普通に学校で習ったことだけど……この世界にはない言葉か?
「八咫目が言うには、光の養分に精霊力が加わり魔クリスタルが成長するとか。光は水を分解し空気を生み、これを魚が取り込み豊漁に繋がると……」
「あーと、光合成して生み出された養分、つまりデンプンに精霊力が乗って栄養ドリンクになるのか、魔クリスタルの。で、水を分解して空気……酸素だな。酸素を生み出し、魚がエラ呼吸することで酸素を取り込み」
「どーうして理解できとるのじゃああああ! しかも、わしより詳しいいいい」
「落ち着け爺ちゃん、俺の見解は大雑把だから。詳しい専門用語や化学反応式で証明するには、もっと学位が上の学校に行かないと」
「わしはモダンガ王国の最高学府を主席で卒業しとるわい」
…………ごめん。
世界が違いすぎた。文字通り。
「ちっ、どこの孫も才気走らせおって。嫌味じゃよ。お爺様の見解は古すぎますじゃないわい。お前こそ過程をすっ飛ばして誰にも理解できないことをしおってからに。検証を疎かにするとは、ほんに愚かじゃ。その愚かもんに、わしは勝てんのじゃがな!」
爺が孫ディスりを始めてしまった。今思ったのだけど、お孫さん、前世の記憶でもあるのでは? 結果を知っているから、先走るのでは?
とは聞けないが、いつか聞いてみよう。それこそ酒が入った席で、俺も一緒に呑みながら。
その後、八咫目のアドバイスに従い、地底湖とコテージのあるダンマス湖(いつの間にかそう呼ばれていた)に海水を混ぜた。
海水は、この島の周りにいっぱいある。なにせここ、絶海の孤島だからね。海までわざわざ行って汲んできたのだ。
どれぐらい混ぜればいいか分からないから、とにかく、いっぱい〈所持品〉に飲み込ませた。黒画面を海水に突っ込ませれば、楽々吸引だ。
海水を混ぜながら思う。
最初に生えていた魔クリスタルは、どうやって海水を取り入れたのだろうかと。
藻スラが産卵した時、既に湖の底には魔クリスタルがあったのだ。でも、この湖は海水じゃない。それなのに魔クリスタルは生えていた。不思議だ。
もしかして、魔クリスタルの根っこのところ、若しくは隠れた所に亀裂があり、海へ繋がっているとか? 地底湖探索しないと、そういうのは分からないだろうな。
湖の塩分濃度が上がった。潮水のにおいがしてきたところで、精霊力も加えるため、ガチャで当たった【水精霊】と【光精霊】に頼んで湖に精霊力を入れてもらう。というか、精霊たちが喜んで湖に入って泳ぎ出したのは微笑ましかった。
精霊って可愛いよな。
そう言えば、扉の精霊も可愛い。今もこの隠し部屋の扉に宿っているが、この子は何の精霊なのだろう?
俺がゆっくりと湖の中に魔力を注いでいたら、【木精霊】が遊びに来た。地底湖の周辺に芝生を養生しているらしい。日本庭園風のところに芝生か。斬新だな。
扉の精霊はニコニコ見ているだけ。いいのか? 和洋折衷と言えるかどうか微妙な庭園が出来ているぞ。
扉の精霊が特に何かしているところを見ていないが、扉を守っていて扉は石で出来ているから【石精霊】なのかもしれない。なんとなく。
色々と試行錯誤し、やがて、魔クリスタルの増殖実験が成果を見せた。湖底いっぱい、珊瑚礁のように魔クリスタルが生えている。
ダンマス湖の方も魔クリスタルは生えて来たけど、地底湖ほど育っていない。同じように育てたつもりでも、こんなに差が出るとはな……。
「ふふふふふふ、これぞ研究。つぶさに過程を観察し、検証を怠らず、結果に一喜一憂し実験を楽しむ好奇心……わし、生きてる!」
ちょっとバッケン爺ちゃんの精神が心配だけど、徹夜で観察してレポート書いていたし、研究者ってこんなもんかなと思う。
論文を仕上げたら、孫に、ざまぁするのじゃ! と意気込んでいるから、まだまだ死なないだろう。長生きしてくれ。
魔クリスタルが増えてきたので、藻スラに【魔野草 マンドラゴラ】を沢山あげておく。どれだけあげればいいか手探り状態だが、欲しがるだけあげておいた。
藻スラ、ぴょんぴょん跳ねる。ぽよんぽよん揺れるボディ。喜んでいるような気がする。
「たんと食え」
マンドラゴラは、見た目が独特の色をしているけど美味しいらしい。絶対、食べないぞ。人形みたいだから食欲も失せるし。
藻スラは美味しそうに食べている。じっと見ていたら、「おまえもくえ」みたいな仕草で差し出してきたので、丁重にお断りしておいた。
あんなに沢山あった藻スラ卵なのに、もう半分にまで減っていた。モンスターをパワーアップあわよくば進化させるには、大量の藻スラ卵が必要ということだ。
早急に魔クリスタルの増殖が求められる。
「バッケン爺ちゃん、魔クリスタル増えそうだって?」
「そうなんじゃ。八咫目殿がアドバイスをくれてな」
バッケン爺ちゃんも八咫目も、【美人の湯】の裏に住んでいるから生息域が被って諍いでも起こすのではと心配したが、今のところ喧嘩するどころか大の仲良しっぽいので安心した。
魔クリスタルの増殖は、魔クリスタルというだけに、魔力を注げば増えるのではないかと、最初は安直に考えて枯らしてしまっていた。
魔力をあげすぎると、枯れるのだ。
微調整して、魔クリスタルに必要な魔力量を割り出す日々だったのだが、やっぱり枯れる。一向に目処が立たなくてやきもきしていたところ、八咫目がアドバイスをくれたそうな。
「曰く、海水と光と栄養が必要ということじゃった」
「ん? 淡水じゃないのか?」
「そうなんじゃよ。地底湖にあったから、てっきり真水を好むと思い込んでおったわい。それに、光のあまり差さぬ湖の底じゃ。そこまで光が重要とは思わなんだ。そして栄養、これは魔力であり魔素じゃな。魔力に含まれる素が浸透することで、光の魔力も活性化し新たなる養分を生むそうじゃ」
「ああ、光合成か」
「知っておるんかい!?」
いや普通に学校で習ったことだけど……この世界にはない言葉か?
「八咫目が言うには、光の養分に精霊力が加わり魔クリスタルが成長するとか。光は水を分解し空気を生み、これを魚が取り込み豊漁に繋がると……」
「あーと、光合成して生み出された養分、つまりデンプンに精霊力が乗って栄養ドリンクになるのか、魔クリスタルの。で、水を分解して空気……酸素だな。酸素を生み出し、魚がエラ呼吸することで酸素を取り込み」
「どーうして理解できとるのじゃああああ! しかも、わしより詳しいいいい」
「落ち着け爺ちゃん、俺の見解は大雑把だから。詳しい専門用語や化学反応式で証明するには、もっと学位が上の学校に行かないと」
「わしはモダンガ王国の最高学府を主席で卒業しとるわい」
…………ごめん。
世界が違いすぎた。文字通り。
「ちっ、どこの孫も才気走らせおって。嫌味じゃよ。お爺様の見解は古すぎますじゃないわい。お前こそ過程をすっ飛ばして誰にも理解できないことをしおってからに。検証を疎かにするとは、ほんに愚かじゃ。その愚かもんに、わしは勝てんのじゃがな!」
爺が孫ディスりを始めてしまった。今思ったのだけど、お孫さん、前世の記憶でもあるのでは? 結果を知っているから、先走るのでは?
とは聞けないが、いつか聞いてみよう。それこそ酒が入った席で、俺も一緒に呑みながら。
その後、八咫目のアドバイスに従い、地底湖とコテージのあるダンマス湖(いつの間にかそう呼ばれていた)に海水を混ぜた。
海水は、この島の周りにいっぱいある。なにせここ、絶海の孤島だからね。海までわざわざ行って汲んできたのだ。
どれぐらい混ぜればいいか分からないから、とにかく、いっぱい〈所持品〉に飲み込ませた。黒画面を海水に突っ込ませれば、楽々吸引だ。
海水を混ぜながら思う。
最初に生えていた魔クリスタルは、どうやって海水を取り入れたのだろうかと。
藻スラが産卵した時、既に湖の底には魔クリスタルがあったのだ。でも、この湖は海水じゃない。それなのに魔クリスタルは生えていた。不思議だ。
もしかして、魔クリスタルの根っこのところ、若しくは隠れた所に亀裂があり、海へ繋がっているとか? 地底湖探索しないと、そういうのは分からないだろうな。
湖の塩分濃度が上がった。潮水のにおいがしてきたところで、精霊力も加えるため、ガチャで当たった【水精霊】と【光精霊】に頼んで湖に精霊力を入れてもらう。というか、精霊たちが喜んで湖に入って泳ぎ出したのは微笑ましかった。
精霊って可愛いよな。
そう言えば、扉の精霊も可愛い。今もこの隠し部屋の扉に宿っているが、この子は何の精霊なのだろう?
俺がゆっくりと湖の中に魔力を注いでいたら、【木精霊】が遊びに来た。地底湖の周辺に芝生を養生しているらしい。日本庭園風のところに芝生か。斬新だな。
扉の精霊はニコニコ見ているだけ。いいのか? 和洋折衷と言えるかどうか微妙な庭園が出来ているぞ。
扉の精霊が特に何かしているところを見ていないが、扉を守っていて扉は石で出来ているから【石精霊】なのかもしれない。なんとなく。
色々と試行錯誤し、やがて、魔クリスタルの増殖実験が成果を見せた。湖底いっぱい、珊瑚礁のように魔クリスタルが生えている。
ダンマス湖の方も魔クリスタルは生えて来たけど、地底湖ほど育っていない。同じように育てたつもりでも、こんなに差が出るとはな……。
「ふふふふふふ、これぞ研究。つぶさに過程を観察し、検証を怠らず、結果に一喜一憂し実験を楽しむ好奇心……わし、生きてる!」
ちょっとバッケン爺ちゃんの精神が心配だけど、徹夜で観察してレポート書いていたし、研究者ってこんなもんかなと思う。
論文を仕上げたら、孫に、ざまぁするのじゃ! と意気込んでいるから、まだまだ死なないだろう。長生きしてくれ。
魔クリスタルが増えてきたので、藻スラに【魔野草 マンドラゴラ】を沢山あげておく。どれだけあげればいいか手探り状態だが、欲しがるだけあげておいた。
藻スラ、ぴょんぴょん跳ねる。ぽよんぽよん揺れるボディ。喜んでいるような気がする。
「たんと食え」
マンドラゴラは、見た目が独特の色をしているけど美味しいらしい。絶対、食べないぞ。人形みたいだから食欲も失せるし。
藻スラは美味しそうに食べている。じっと見ていたら、「おまえもくえ」みたいな仕草で差し出してきたので、丁重にお断りしておいた。
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