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ゆるっとダンジョン構築編
【閑話】最高の時間【転生】
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毎日、活き活きとした顔をご飯時に見せてくれるバッケン爺ちゃん。マザーのつくる和風定食が気に入ったらしい。
揚げポテチや唐揚げも勧めたが、「胃がもたれるわい」と断られてしまう。ちえっ。赤鬼とハルネラさんは喜んで食べてくれるのに。
「ビールも付けてくれっす!」
「私はコーラをいただきます」
揚げ物には炭酸だよなーと、俺のコーラストックをハルネラさんと分ける。
「シオさん、ビールは?」
「俺、まだ成人してないから買えないんだ」
「え? シオさん、18歳では? モダンガ王国なら16歳で成人って聞きましたけど」
「んなこたぁない。お酒はハタチになってから。これ常識」
「ま、まじすかー」
大袈裟に驚いてみせる赤鬼。なぜかハルネラさんも驚いているな。
「シオさん、ちょっと高級なビールにしようか。プレモルで」
「だから酒はっ────て、プレモル?」
今のはモルツのCMの台詞では?
「世界が変わって、分かったことがある。私たちの生活にはスイッチが必要だ。……スイッチずっとやってないわね。マリカーが、やりたいわ」
ハルネラさんまで。スイッチやってたのか。
「俺も、世界が変わって分かったことがある。平凡な今日の中にこそ、最高の時間をつくれるんだ。……今世も酒つくるかな。シオさんがハタチになったら、呑ませてやるっすよ」
赤鬼の前世、杜氏だとでもいうのかあ。
「ぶっは! シオさんが混迷してるっすよハルネラ」
「からかいがいのある子ねえ」
「「最高の時間」」
二人してハモりやがった。もう、もう、なんだよーう。二人とも転生者かよ。
それから二人の前世と、前前世の話を聞いた。なんと、前前世が俺と同じ日本人で、俺と同じで高校卒業直後に異世界へ召喚されたらしい。
それで魔王を倒す旅に出たという。
「へえ、魔王。この世界にもいるかなあ」
「この世界にはいねえな。魔界にいる。俺の今の親父の上司だ」
「上司って(笑)」
てか、赤鬼や。言葉遣いが素になっているぞ。やっぱり、~っす喋りはキャラつくっていたのか。
「ふむ、バレたなら、しゃあねえ」
「そっちの方が懐かしくて好きよ」
「ハルも、前みてえに喋っていいんだぜ」
「ふふ、それは二人っきりの時に、とっておいて、ね♡」
あーはいはい、熱いねえ。真夏のようだ。
「それで、前前世の魔王退治は?」
「倒す前に、俺が一般人の子供に刺されて死んだ」
「わけわかんないよ?!」
「酷い話しよね。魔王、女魔王様だったんだけど、善政を敷く、良い魔王だったのよ。私たちは召喚した国に騙されてたってわけ」
「うわあ。この世界の愚かな国並に、愚かだったんだな」
で、ハルネラさんことハルさんがブチ切れて、赤鬼の前前世の魂を転生させた。ハルさん自身も転生して、同じ異世界の未来で再会するよう、世界の理を動かした、と。
「ハルさん、すごいな……!」
神を手のひらで転がしまくったっぽい。実際、望んだ通りに転生して、再会して、夫婦になったとか。
ハッピーエンドだ! やったあ!
あれ? でも、今世があるってことは、前世はもう……。
「前世は寿命だ。長生きしまくったから悔いはねえ」
「私より先に死んだくせに何をおっしゃるのやら」
「うわあ、ハルのその表情と口調、懐かしい!」
口角上がって笑ってるのに目が笑ってない表情な。ハルネラさん、どうどう、落ち着いて。コーラあげるから。
「ぷはぁー。この一杯のために生きてる」
「コーラ好きなんですね」
「ええ、転生してから、この味を再現するのに苦労したわ」
「ん? まさか、クラフトコーラ作れるの?!」
「ふふ、つくれるわよ。レシピあげようか? その前に、シオくんのためですもの、いくらでも手作りしてあげるわよ」
「わあ~い! ハルネラさん、ありがとお!」
「シオくんは素直で可愛いわねえ。18歳だっけ」
頭をヨシヨシしてくれるハルネラさんに、つい甘えてしまったが、これ、旦那の前でしちゃいけないやつじゃ……と、赤鬼を見たが、赤鬼は平然としていた。
むしろ、「シオさんは可愛いっすからねえ。魔力給餌してもらえなくなって残念なくらい」とか、ぶっちゃけている。
オイオイオイ魔力給餌のことは内緒にしとけって!
「あら、なんのことかしら」
ほら、ハルネラさんが興味持った。赤鬼、正直に俺とキスしたこと暴露しやがった。あいつ、アホなの? バカなの? 死にたいの?
「なんてこと……」
青ざめるハルネラさんに、笑顔の赤鬼。その対比が悩ましい俺。どうしよ。謝った方がいい?
「シオくんの初キスを無理やり奪うなんて……」
そっち?!
「シオくん、口直しに私とする?」
「あーいえいえ、そういうのは遠慮しときますです。いつか現れる好きな人のためにとっておきます」
「まあ、純粋! うちのダーリンがバカでごめんなさいね。死んでも治らないの」
実感こもってんな。二度も転生してりゃ、そりゃそうか。
赤鬼も、「うははは!」笑ってるし。
長生きカップルの余裕なのかねえ。
その後、赤鬼は本当に酒造りを始め、二年後の俺の成人祝いにと初蔵出しをしてくれたのだった。
──────────────
**豆知識**
シオくんは、成人年齢引き下げ(2022年4月)の法改正前に異世界トリップしております。
ちょっと高級なビールのCMは2021年3月からです。つまり、この年の春に異世界トリップしたということ。
**CM**
赤鬼とハルネラの前世と前前世は、「鬼神とエルフの新天地」(BL)が詳しいです。この作品はムーンラノベにあります。
もう一つ、「エルフに優しい この異世界で」にも、重要な脇役な感じで出てます。この作品はアルファポリスにもあるので、よかったらおかわりどうぞ。
揚げポテチや唐揚げも勧めたが、「胃がもたれるわい」と断られてしまう。ちえっ。赤鬼とハルネラさんは喜んで食べてくれるのに。
「ビールも付けてくれっす!」
「私はコーラをいただきます」
揚げ物には炭酸だよなーと、俺のコーラストックをハルネラさんと分ける。
「シオさん、ビールは?」
「俺、まだ成人してないから買えないんだ」
「え? シオさん、18歳では? モダンガ王国なら16歳で成人って聞きましたけど」
「んなこたぁない。お酒はハタチになってから。これ常識」
「ま、まじすかー」
大袈裟に驚いてみせる赤鬼。なぜかハルネラさんも驚いているな。
「シオさん、ちょっと高級なビールにしようか。プレモルで」
「だから酒はっ────て、プレモル?」
今のはモルツのCMの台詞では?
「世界が変わって、分かったことがある。私たちの生活にはスイッチが必要だ。……スイッチずっとやってないわね。マリカーが、やりたいわ」
ハルネラさんまで。スイッチやってたのか。
「俺も、世界が変わって分かったことがある。平凡な今日の中にこそ、最高の時間をつくれるんだ。……今世も酒つくるかな。シオさんがハタチになったら、呑ませてやるっすよ」
赤鬼の前世、杜氏だとでもいうのかあ。
「ぶっは! シオさんが混迷してるっすよハルネラ」
「からかいがいのある子ねえ」
「「最高の時間」」
二人してハモりやがった。もう、もう、なんだよーう。二人とも転生者かよ。
それから二人の前世と、前前世の話を聞いた。なんと、前前世が俺と同じ日本人で、俺と同じで高校卒業直後に異世界へ召喚されたらしい。
それで魔王を倒す旅に出たという。
「へえ、魔王。この世界にもいるかなあ」
「この世界にはいねえな。魔界にいる。俺の今の親父の上司だ」
「上司って(笑)」
てか、赤鬼や。言葉遣いが素になっているぞ。やっぱり、~っす喋りはキャラつくっていたのか。
「ふむ、バレたなら、しゃあねえ」
「そっちの方が懐かしくて好きよ」
「ハルも、前みてえに喋っていいんだぜ」
「ふふ、それは二人っきりの時に、とっておいて、ね♡」
あーはいはい、熱いねえ。真夏のようだ。
「それで、前前世の魔王退治は?」
「倒す前に、俺が一般人の子供に刺されて死んだ」
「わけわかんないよ?!」
「酷い話しよね。魔王、女魔王様だったんだけど、善政を敷く、良い魔王だったのよ。私たちは召喚した国に騙されてたってわけ」
「うわあ。この世界の愚かな国並に、愚かだったんだな」
で、ハルネラさんことハルさんがブチ切れて、赤鬼の前前世の魂を転生させた。ハルさん自身も転生して、同じ異世界の未来で再会するよう、世界の理を動かした、と。
「ハルさん、すごいな……!」
神を手のひらで転がしまくったっぽい。実際、望んだ通りに転生して、再会して、夫婦になったとか。
ハッピーエンドだ! やったあ!
あれ? でも、今世があるってことは、前世はもう……。
「前世は寿命だ。長生きしまくったから悔いはねえ」
「私より先に死んだくせに何をおっしゃるのやら」
「うわあ、ハルのその表情と口調、懐かしい!」
口角上がって笑ってるのに目が笑ってない表情な。ハルネラさん、どうどう、落ち着いて。コーラあげるから。
「ぷはぁー。この一杯のために生きてる」
「コーラ好きなんですね」
「ええ、転生してから、この味を再現するのに苦労したわ」
「ん? まさか、クラフトコーラ作れるの?!」
「ふふ、つくれるわよ。レシピあげようか? その前に、シオくんのためですもの、いくらでも手作りしてあげるわよ」
「わあ~い! ハルネラさん、ありがとお!」
「シオくんは素直で可愛いわねえ。18歳だっけ」
頭をヨシヨシしてくれるハルネラさんに、つい甘えてしまったが、これ、旦那の前でしちゃいけないやつじゃ……と、赤鬼を見たが、赤鬼は平然としていた。
むしろ、「シオさんは可愛いっすからねえ。魔力給餌してもらえなくなって残念なくらい」とか、ぶっちゃけている。
オイオイオイ魔力給餌のことは内緒にしとけって!
「あら、なんのことかしら」
ほら、ハルネラさんが興味持った。赤鬼、正直に俺とキスしたこと暴露しやがった。あいつ、アホなの? バカなの? 死にたいの?
「なんてこと……」
青ざめるハルネラさんに、笑顔の赤鬼。その対比が悩ましい俺。どうしよ。謝った方がいい?
「シオくんの初キスを無理やり奪うなんて……」
そっち?!
「シオくん、口直しに私とする?」
「あーいえいえ、そういうのは遠慮しときますです。いつか現れる好きな人のためにとっておきます」
「まあ、純粋! うちのダーリンがバカでごめんなさいね。死んでも治らないの」
実感こもってんな。二度も転生してりゃ、そりゃそうか。
赤鬼も、「うははは!」笑ってるし。
長生きカップルの余裕なのかねえ。
その後、赤鬼は本当に酒造りを始め、二年後の俺の成人祝いにと初蔵出しをしてくれたのだった。
──────────────
**豆知識**
シオくんは、成人年齢引き下げ(2022年4月)の法改正前に異世界トリップしております。
ちょっと高級なビールのCMは2021年3月からです。つまり、この年の春に異世界トリップしたということ。
**CM**
赤鬼とハルネラの前世と前前世は、「鬼神とエルフの新天地」(BL)が詳しいです。この作品はムーンラノベにあります。
もう一つ、「エルフに優しい この異世界で」にも、重要な脇役な感じで出てます。この作品はアルファポリスにもあるので、よかったらおかわりどうぞ。
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