ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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遠い未来のエンディング

変なやつばっかくるぴえん(上)**

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 その後のダンジョン​鬼ヶ島──────。

「俺の匂いに狂え」

 タオジン必殺ピーチスメルが火を噴く。というかピーチの香りが辺り一面に充満し、エフェクト的に桃花の花弁が舞い飛ぶ。

「な、何い?!───うおおおおマイ・ザバァイル、好っきゃねん!」
「ギャー! バカ寄るな変態!!」

 第十【階層(桃源郷)】、ピーチリング。ここは桃野郎専用の闘技場。

 蓮の花が咲き乱れる巨大な湖の上、天下一武道会場みたいな外観の建物が円状に並び、観客席は蓮の舟、その中心の闘技場は桃型である。

 その桃型闘技場に上がったらば、挑戦者なんぞ悉く返り討ちにするのが我らが桃野郎──大ボスだ。
 大半の冒険者がピーチスメルで狂った味方に襲われ試合終了だ。

 ザバァイルさんとやらはノーマルなのに、その場でアレされコレされたので可哀想だった。
 こういう時のために我がダンジョンでは『ホモ障害保険』をお勧めしている。
 この保険は強制BL被害に遭ったと認定されれば保険金が貰える他に、各種ケアが充実しているので冒険者に人気だ。

 たとえば、傷ついた心を癒せるよう温泉宿に無料宿泊、豪華三食昼寝付きプランとか。
 ダンジョン攻略する前、各自の冒険スタイルに合わせたプランに加入すると、いざとなった時に備えれるぞ。

 安い掛け捨てもあるが、長いこと滞在する冒険者の8割はロングプランを利用するね。
 ザバァイルさんはロングプラン認定され多額の保険金がおりた。癒しの藻スラ卵付きで。心の病にも効く緑卵だ。
 おだいじに。おもにしり。

 また、ある日のこと。

「くそうっ、レベルカンストしたのに勝てないなんて詐欺だ。世界中央政府に訴えてやるううぅぅ」
「ほんと詐欺よ。ここのダンジョン紹介してる雑誌もクソだわ編集部爆破してやるううぅぅ」
「編集より会社ごと訴訟に持ち込もう。我が父王に後ろ盾になってもらえばいいさ! HAHAHA☆」

 某国の有名な『勇者』たちが負け犬の遠吠えをしながらダンジョンから撤退した。
 人間の世界には『白魔王』とやらが現れ、ついでにヴァルキュリアの選定で『勇者』とやらが爆誕したらしい。

 ぶっちゃけその『白魔王』って、うちの弟なんだけどね。
 腹黒いやつだなって思ってたら、本当に魔王になっちゃった。
 名付け親が魔王なのが悪いな。

 そして『勇者』を追い返した桃野郎ことタオジンはというと、あいつ、詐欺呼ばわりされたというのに、ご満悦そうな歪んだ笑顔をこちらへ向けてくるのだ。
 悪い予感がする。

「邪魔者は追い払った。シオ、続きをするぞ」

 有無を言わさず俺の体を抱き上げ、再び寝台へと落とす破廉恥この桃皇子タオくん、俺の言い分も聞きなさい。

「さっきまでシていただろうが。もう嫌だ。体だって洗ったばかりなんだぞ」

 と、一応の口ごたえをしてみるが、腕に囲われ、その芳しい桃の匂いを嗅げば一瞬でくらくら。惰弱な理性など瞬殺だ。

「あうぅ……ん、んふ……ぁ、ぁあ、いい、いいっ、きもひいいよぉ」

 しかもこいつ初体験で俺を昇天させられなかったからか、あれから性技を磨きやがった。

「いい色に染まったな。こんなに尖らせて……けしからん乳首だ」
「ひあぁん……もぉ、いじんないでぇ、やら、やら、しゅごい、イっひゃう、イ、く……!」

 乳首、片方は指先でキュッキュと摘ままれ、もう片方は舌先で転がされ吸われて、しゃぶられてビンビンにされる。散々に胸を弄られてイってしまった。

 胸だけでイくなんて恥ずかしさの極み……。

 これだけで終わるわけもなく、股を開かされる。タオジンが入ってくる。

「んああぁぁ」
 合 体 !

 勇者御一行が来るまで抱かれていた体は、まだタオジンのものを覚えていて容易く飲み込んでしまう。

「ひいぃん!」
「激しいのが好きだろ? もっと俺に狂え」

 ピーチスメル使うなぁぁ!
 桃の芳しい香りで俺の理性崩壊。呂律の回らない言葉で、「タオジンへんたい ちろう なかだしだいすきやろおおおお」
 とりあえず詰っとく。

「シオに褒められた」

 褒めてねええええええ!

 なあ、俺たち、いったい何時になったら甘い台詞を囁きながらの優しいセックスできるんだろうな。

 え、そんな日はこない? なんてこったい。

 散々に攻められて俺ぐったり。

 でも、ぐってりばかりもしていられない。
 藻スラ卵で回復したら働きに出る。腰をさすりながら。
 くそう、毎日のようにタオが盛りやがるから俺の腰やべえぜ。

 赤鬼のところに転移した時のことだった。

「たのもおおぉぉうう!!」

 道場破りみたいな声を上げて赤鬼ドームの扉を全開にするやつに遭遇。
 モダンガ王国の色ボケもとい王子だ。確か第13くらいの王子。
 あの国、王子がいっぱいで、正直、何番目なのか忘れた。

「ウメちゃんを俺の嫁にください! お義父さん!」
「嫌だ」
「そこをなんとか」
「拒否る」
「ええー、こんなに頼んでるのにい」
「頼まれた覚えないから嫌だ。大体、梅春はまだ幼児だ」

 そうだよね。幼稚園があったら通っている年齢だ。幼児に懸想するなんて、この王子はショタコンだ。
 まあ、こいつ自身まだ10歳くらいなのだが。
 10歳でこの行動力……末恐ろしい。

「あ、ウメちゃんから連絡キタ。『パパ、おこってゆから、いつものとこで』だって! 舌っ足らずカワイイ尊い! では、そういうことでっ」
「待て! 親の目盗んで逢引するんじゃない!」
「盗んでませんよ目の前でやりとりしたじゃないですか。デートしてきますアデュー☆」

 最近の王子は携帯電話みたいなものを持っているのか。モダンガ王国は進んでいるなあ。

 しっかし、お茶目にウインクして去って行った王子メンタル強え。赤鬼憤怒。
 やめて王子これから赤鬼と仕事しなきゃいけないのに怒らせないでくれ。

「アイツらァ!」って、赤鬼まで追いかけて行っちゃったし。マジで仕事にならない。

 バッケン爺ちゃんのところへ行く。

「ヘイヘイホーウウワッチャアッ!」

 変な掛け声で薪を割るのはクリスだ。
 底辺魔導士だったクリスだが、バッケン爺ちゃんの特訓のおかげで上級魔導士の仲間入りを果たしたと思ったら筋肉ムキムキになった。
 何を言っているか理解が追いつかねえと思うが大丈夫だ。俺もよく分かってない。

「おお、ダンジョンマスター・シオちゃん。今日も可愛いな。ラブホ行こうよ」

 脳みそまで筋肉になったはずだが相変わらず下半身がクズだ。
 これで収納鞄を作らせたら人間の中では第一人者。今やクリス特製収納鞄は世界に誇るトップブランド。その創設者がこんなところで薪を割ってダンマスにセクハラしているとはな。

「タオに殺されるぞお前」

 簡潔に結論を述べたらクリスの顔色は悪くなった。タオの怖さを知っているのに俺にちょっかい出すの、もはや病気だと思うんだ。

「そんな、そんな、シオちゃん助けてよ。優しいシオちゃんなら庇ってくれるっしょ。お願い」

 やはりクズ男の定番台詞しか呻かないので放っておく。

 バッケン爺ちゃんの住む数寄屋を訪ねた。
 バッケン爺ちゃん、もうすぐ百歳らしいけど、どちゃくそ元気。この世界の魔導士は総じて長生きだという。
 でも、バッケン爺ちゃんの場合、不老の研究をこっそりしていて、どうもそれが効果あるっぽい。
 詳しいことを聞きたくて今日も話に来たわけだけど────。

「うちの殿下はここか?」

 オーバーロードが訪ねてきた。
 見た目、骸骨が立派なマントを装着した煌びやかな貴公子姿。しかしてその正体は────バッケン爺ちゃんの孫で魔導塔の長老レオナルト・マキュラス・リエットだ。

「ここにはおらんわい。お前の目は節穴か」
「ジジイに言われたくねえわ。早よくたばれ」

 ちょ、俺の前で睨み合い殺気バチバチしないでくれ。この二人は実の爺孫なのに、めちゃくちゃ仲が悪い。

「ナルト君、王子ならウメちゃんといるから送ってあげるよ」

 黒画面の地図で探せば、星空綺麗なスカイタワーでデート中だ。俺なら転移で送ってあげられる。

「ナルトじゃねえわ。誰が練り物だコラ、シオ。塩化ナトリウムのくせに、ダンマスだからっていい気になるなよ。ちっ、仕方ねえ、送ってくんな」

 うーん、ナルト君はやっぱ転生者だな。
 この世界にナルトの練り物ってないから。チクワもないんだぜ。泣いちゃう。寂しい時は通販で買っておでんにしちゃう。

「塩をバカにしちゃいけない。塩化ナトリウムの他にもマグネシウムもカルシウムも亜鉛も入ってるし、ミネラル成分が豊富なんだ。そんな塩が入った練り物はおでんにすると最高に美味しいんだからな。
 よし、送ってあげる」

 ナルト君に転移指定、スカイタワーまで、いってらっしゃい。
 転移で消えた瞬間、ナルト君がニッと笑ったのが見えた。
 微笑みの骸骨、プライスレス。

「ほんに、お主らの会話はサッパリじゃわい」

 バッケン爺ちゃんには呆れられたが、いつものことだ。
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