ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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ゆるっとダンジョン構築編

41、父きてパックンチョ

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 四階層と五階層を同時に創り、橙鬼のまとめた構想通りに工事を進めていた頃、父親がまたきた。

 ティリン・ファ皇国で宰相をして忙しいはずの黄金竜なのに、なぜ昼間に来たのやら。夜ならマザーとイチャラブのため、こっそりきて朝帰りも黙認していたが、昼間だということは公式訪問か?

 その割には、台所で一生懸命煮炊きしてくれているマザーの尻をペロンしたり、赤鬼の嫁ハルネラさんの太腿をなでなでしたりとセクハラ三昧だったので、赤鬼をキレさせたのだが。

「ふははは! 鬼なんざ一捻りよ!」

 あっさり赤鬼を撃沈させたので、代わりに俺が、【魔法使いたいだけ使い放題】で習得した黒鬼専用攻撃魔法陣を五百個ほど展開させ、向こうに聳える双子山までセクハラ親父を吹き飛ばした。

「セクハラ駄目ぜったい」を合言葉に。

 双子山は綺麗に焼失だ。その麓までこんがり焼いてしまった。
 尚、ダンマス湖その周辺の森は影響皆無である。きちんと計算して撃ったので。

 しかし、麓には綺麗なお花畑があったんだよな。天卵から出たやつ。ミアちゃんが気に入って、ジェイラルと淫魔のメイさんも誘ってピクニックに行ったことがある。
 いつも忙しくしているジェイラルとメイさん。親子の触れ合いが必要だろうと俺なりの慰労だったのだが、擬似親子三人はもうお前ら本当に親子になっちゃえよってくらい仲睦まじかった。

 そんな素敵な思い出を壊してしまったのだ。俺、反省。
 すべてエロエロセクハラ親父が悪い。

「おいおい、俺が人間だったら死んでたぜ。今の攻撃、チャワードがカスタマイズしたやつだな。やるなあ~はっはっは」

 笑いながら、かすり傷ひとつ負うことなく帰還した黄金色のドラゴン。それが俺の父親である。

 竜の翼を広げ、すこぶる巨大な尻尾を揺らし、俺自慢の日本庭園へと着地した。

 またかよ。また壊したぞ、あのトカゲ。遺憾の意。

「小遣いやるから」

 それならいい。にっこにこ。
 でもそれはそれで、セクハラはセクハラなのだ。マザーとハルネラさんにセクハラしたことは許さんので、お仕置を続行しようと爪を伸ばす。

 鬼能力【剣爪】である。

 俺の爪、伸ばすと鋭い剣みたいになるんだぜ。できたら刀がよかったです。と思ったからか、ちょっとビジュアルが刀寄りになった。要望が通った。やっほい。

 調子に乗って「黒くなれ」って思ったら黒くなった。

 鬼能力【黒刀爪】。たった今、爆誕。

「一回死んでみると人間の気持ちが分かると思う。てことで、死ぬ気で防御するといいぞ駄目親父」

 黒刀爪を突きつけて怒ってみる。あ、今の俺、格好よくない? これ中二病? 中二病かな。

「まあまあ、怒んなって。俺がドラゴンのままじゃ、分からせなんかできねえよ。
 でだ、息子よ。お前を揶揄うのは楽しくてしょうがないが、今は急いでいるんだ。ちょっと来てもらおうか」

 ドラゴンの巨体が迫ってきたので黒刀爪をかざしたが、気づいたらトカゲの口に飲まれていた。
 ええっ、嘘おぉ。早くも中二病終了のお知らせ。
 父親がドラゴンの場合は気をつけて反抗期しろ。じゃないと圧倒的暴力でねじ伏せられるぞ。

「びゃああああああ」

 俺パックンチョされている。竜の牙がすぐそこにある。竜の舌の感触、涎に息、キモイんだけど! 動物臭がするうう!

 黒刀爪を振り回したいけど、ここ狭い。あとキモイ。不快。気持ち悪さでのたうち回りたいくらいなのに、一ミリも動けないとはなにごとだ!

 今日の俺は着流しで、着物の裏に防護魔法陣が縫い込んであるから敵対心のあるものは弾くし俺の肌に傷一つ入れられないはず。でも、竜の動物的口臭は別物だったらしい。

 おええぇぇっ。動物園のにおい。獣臭やべえ。これなんの拷問だろう。

 臭い竜の口の中に閉じ込められたまま、お空をランデブーすること数分後、目的地に着いた。

「ぺっ」と口から吐き出される。

「くそおやじぃ……うえぇ……べとべとするううぅぅ」

 たった数分の出来事なのに、涎まみれの濡れ鼠な姿にされたぞ。頭の上から流れ落ちてくる粘っこい液体を、手で払う。ビシャッと床に粘液が落ちた。
 ひえぇ、脚を涎が伝っていく感触が気持ち悪い気色悪い。
 鋭い爪は仕舞う。危ないからね。
 着物の裾捲り、そのまま裾の布で粘っこい液体を拭く。ヌルヌルするぅぅキモイキモイキモイっっ!

「お前さあ……まったりクリーミィな味しやがってけしからんぞ。あと、その姿が卑猥だ。発禁ものじゃないか。男を誘わないようにしろよ、けしからん」

 親父の所為でこうなったのに、逆に叱られた。理不尽!

 人の姿に戻った父親は高身長で筋肉引き締まった漢らしい肉体を持つ超絶イケメンである。
 低身長小柄でポテトばかり食べているポテト腹な俺は軽く担がれ、どこかの城のどこかの風呂へ、ポイっと投げ入れられた。
 そしてざぶざぶ洗われる。

「いてっ、いてえわ、もう少し丁寧に洗え」
「我慢しろよ急いでんだ」
「急いでるんなら風呂入ってる場合じゃねえだろ」
「こんな、いかがわしいもん連れて桃城を歩けるか」
「なんだよ、いかがわしいって。こんな姿にしたのお前じゃん!」
「ああ、こんな可愛い姿に生んだの俺たちだなあ。まったく、本当に可愛い姿で産まれてきおって、このこのぉ!」
「うおあああああ」

 めったくそ力入れて洗われたぞ。理不尽!
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