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ゆるっとダンジョン構築編
24、妖精紳士とは
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温泉施設【泡の湯】を造った。
泡の湯は、入ると細かい気泡がシュワシュワ肌に纏わりつく二酸化炭素泉だ。
火山帯の日本よりヨーロッパの方が沢山のお湯が湧くため、特にドイツの温泉リゾート地では心臓病や動脈硬化に効くということで、人気の温泉だとか。
前に観たテレビで特集やっていたから間違いない。
他にも、肌がつるつるになる炭酸水素泉【美人の湯】、体ポカポカ冷え性よさらば塩化物泉【塩熱の湯】、貧血症に効く含鉄泉【黄金の湯】、草津の湯で有名な緑礬泉【緑翠の湯】、傷を癒す硫酸塩泉【銀星の湯】、あらゆる生活習慣病に効く硫黄泉【乳白の湯】、殺菌効果の高い酸性泉【玉肌の湯】、万病に効く放射能泉【ラドンの湯】、願い事が叶うという単純温泉【満願の湯】または【子宝の湯】。
以上、十種類+@が買えるようだ。
それぞれ金百枚で。お値打ちだね。
今後、階層が増えたら順次一つづつ設置してゆきたい。
そんな、ある日のことだった。
今日もダンジョン工事・造設・経営お疲れさーんと【泡の湯】への扉を開いたところ、
「やあ! 僕、ミッキー。君とお友達になりたいな。やは☆」
変なやつがいた。裸で。
いや、ここは温泉施設内、内風呂の入口だから裸でもいいのだけど、堂々とした態度でなぜか黒いステッキを持ち、某夢の国キャラの口真似をするのが怪しくて、つい凝視してしまう。
というかこの温泉施設、未オープンなのだけど。どうやって入ったのやら?
「えーと、ミッキー、ここはまだオープンしてなくて……」
「嘘だよ」
「え、何が? 俺、嘘言ってないぞ。ここは本当にまだ一般にお披露目してなくて……」
「それは知っている。違うよ、名前さ。僕が、あんな銭ゲバねずみと同じ名前なわけないじゃないか」
堂々と悪口言ったぞこいつ。
世界屈指の人気キャラクターになんてことを……!
「僕の名はカーディス。カーディス・フリンディア、お茶目な妖精紳士さ」
「えーと、俺は塩板シオ。ここの管理人。この施設はまだオープンしてないから、開業したらまた来て下さい。お帰りはあちらです」
「違うよ」
「え、また?」
「僕は客じゃあないんだ」
「あ、そういう……じゃあ、何者?」
「言っただろう、名乗っただろう、僕は妖精紳士。君と、友達になりにきたのさ」
それ、嘘だったんでは? と、返したかったけど、友達になりたそうに、こちらをじっと見つめて来たので、多分、本当に友達になりたいのだろうと、察した。
「それじゃあ、妖精紳士さん」
「ノーン! ノンノン、名乗ったはずだ。カーディス・フリンディアと」
「はい、あの、ではカーディスさん」
「カーディスでいいよ、シオくん」
「俺もシオでいいよ。カーディスは妖精?」
「そうとも! 分かるかね、この、知性溢れ、浪漫を求め、愛を乞う、憐れな妖精ガンコナー……その、系譜さ」
それは妖精なのか? とも思ったけど、本人が妖精だと言っているから妖精なのだろう。
たしかガンコナーって、軟派で怠惰な妖精だった気がする。
その通りだな。こいつ、カーディスってやつは口調が軽薄で、女にモテそうな金髪碧眼の優男。
怠惰は……。
「ふう……ここは……天国かなー……ここに棲みたいよ。いや、棲もっかなー……」
温泉に肩まで浸かり、のんべんだらりと全身のびのび伸ばしている。しかも、そこから動こうとしない。むしろ棲むらしい。
うちを棲息地にするってことだろうか? 妖精って棲み処を移動する生き物なのかなあ。知らんけど。
我が家に棲息する気なら、働いてもらわないと。
【泡の湯】をオープンしたらマザーに受付スタッフしてもらう予定だ。ダンジョンコア自らが施設スタッフという……。
人材が居ないにも程があるので、カーディスが良ければ、うちで働いて欲しい。ということをオブラートにも包まず真っ直ぐに伝えたら……。
「働くのは御免蒙るよ。働いたら負けだからね」
ニートみたいなこと言って断ってきたぞ。拙者、働きたくないでござるということだろう。
「温泉で、のんびりしながら客を案内してあげるよ」
「それは働いてくれるということじゃないか?」
「ノンノン。働くわけではないさ。温泉入って、翅を伸ばすのが目的だからねえ。だから、給料は要らないよ」
無償で働いてくれるらしい。
無償奉仕は余裕のある人の義務とか何とか、妖精なのに人間社会の福祉に精通したことをカーディスは言う。
某ランドやネズミのキャラクターを知っていることといい、こいつは何者なのだろう。あ、妖精だった。妖精なら仕方ないな。
何にせよ、このダンジョンに仲間が増えた。
「あ、そうそう、君のお父さんから伝言だ」
本当にこいつは何者なのだろう?
父からの伝言は、「その内、挨拶に行くからパンツ洗って待ってろ愛息子」だった。
わけわからん変態臭しかしない。
だいたい俺、褌派だし。
この日から、温泉地に妖精が棲むようになった。オープンした暁にはこき使ってやろうと思っていたのに、のらりくらりと躱され、働きたくないでござる病のやつとの付き合い方に悩むことになる。
ボランティアとは何だったのか。
そして、紳士とは……。
──────────────
カーディスはSFさんちのこです。出張に来てくれました。ありがとう。でも、だいぶ自前にカスタマイズしてしまいました。喋り方とか、変態臭を醸し出してしまった。ごめんなさい。
本来のカーディスさんの活躍を見たい人はSFさん(@SF30844166)のBL小説、「Changeling」を読んでね!
とっても紳士よ(笑)
泡の湯は、入ると細かい気泡がシュワシュワ肌に纏わりつく二酸化炭素泉だ。
火山帯の日本よりヨーロッパの方が沢山のお湯が湧くため、特にドイツの温泉リゾート地では心臓病や動脈硬化に効くということで、人気の温泉だとか。
前に観たテレビで特集やっていたから間違いない。
他にも、肌がつるつるになる炭酸水素泉【美人の湯】、体ポカポカ冷え性よさらば塩化物泉【塩熱の湯】、貧血症に効く含鉄泉【黄金の湯】、草津の湯で有名な緑礬泉【緑翠の湯】、傷を癒す硫酸塩泉【銀星の湯】、あらゆる生活習慣病に効く硫黄泉【乳白の湯】、殺菌効果の高い酸性泉【玉肌の湯】、万病に効く放射能泉【ラドンの湯】、願い事が叶うという単純温泉【満願の湯】または【子宝の湯】。
以上、十種類+@が買えるようだ。
それぞれ金百枚で。お値打ちだね。
今後、階層が増えたら順次一つづつ設置してゆきたい。
そんな、ある日のことだった。
今日もダンジョン工事・造設・経営お疲れさーんと【泡の湯】への扉を開いたところ、
「やあ! 僕、ミッキー。君とお友達になりたいな。やは☆」
変なやつがいた。裸で。
いや、ここは温泉施設内、内風呂の入口だから裸でもいいのだけど、堂々とした態度でなぜか黒いステッキを持ち、某夢の国キャラの口真似をするのが怪しくて、つい凝視してしまう。
というかこの温泉施設、未オープンなのだけど。どうやって入ったのやら?
「えーと、ミッキー、ここはまだオープンしてなくて……」
「嘘だよ」
「え、何が? 俺、嘘言ってないぞ。ここは本当にまだ一般にお披露目してなくて……」
「それは知っている。違うよ、名前さ。僕が、あんな銭ゲバねずみと同じ名前なわけないじゃないか」
堂々と悪口言ったぞこいつ。
世界屈指の人気キャラクターになんてことを……!
「僕の名はカーディス。カーディス・フリンディア、お茶目な妖精紳士さ」
「えーと、俺は塩板シオ。ここの管理人。この施設はまだオープンしてないから、開業したらまた来て下さい。お帰りはあちらです」
「違うよ」
「え、また?」
「僕は客じゃあないんだ」
「あ、そういう……じゃあ、何者?」
「言っただろう、名乗っただろう、僕は妖精紳士。君と、友達になりにきたのさ」
それ、嘘だったんでは? と、返したかったけど、友達になりたそうに、こちらをじっと見つめて来たので、多分、本当に友達になりたいのだろうと、察した。
「それじゃあ、妖精紳士さん」
「ノーン! ノンノン、名乗ったはずだ。カーディス・フリンディアと」
「はい、あの、ではカーディスさん」
「カーディスでいいよ、シオくん」
「俺もシオでいいよ。カーディスは妖精?」
「そうとも! 分かるかね、この、知性溢れ、浪漫を求め、愛を乞う、憐れな妖精ガンコナー……その、系譜さ」
それは妖精なのか? とも思ったけど、本人が妖精だと言っているから妖精なのだろう。
たしかガンコナーって、軟派で怠惰な妖精だった気がする。
その通りだな。こいつ、カーディスってやつは口調が軽薄で、女にモテそうな金髪碧眼の優男。
怠惰は……。
「ふう……ここは……天国かなー……ここに棲みたいよ。いや、棲もっかなー……」
温泉に肩まで浸かり、のんべんだらりと全身のびのび伸ばしている。しかも、そこから動こうとしない。むしろ棲むらしい。
うちを棲息地にするってことだろうか? 妖精って棲み処を移動する生き物なのかなあ。知らんけど。
我が家に棲息する気なら、働いてもらわないと。
【泡の湯】をオープンしたらマザーに受付スタッフしてもらう予定だ。ダンジョンコア自らが施設スタッフという……。
人材が居ないにも程があるので、カーディスが良ければ、うちで働いて欲しい。ということをオブラートにも包まず真っ直ぐに伝えたら……。
「働くのは御免蒙るよ。働いたら負けだからね」
ニートみたいなこと言って断ってきたぞ。拙者、働きたくないでござるということだろう。
「温泉で、のんびりしながら客を案内してあげるよ」
「それは働いてくれるということじゃないか?」
「ノンノン。働くわけではないさ。温泉入って、翅を伸ばすのが目的だからねえ。だから、給料は要らないよ」
無償で働いてくれるらしい。
無償奉仕は余裕のある人の義務とか何とか、妖精なのに人間社会の福祉に精通したことをカーディスは言う。
某ランドやネズミのキャラクターを知っていることといい、こいつは何者なのだろう。あ、妖精だった。妖精なら仕方ないな。
何にせよ、このダンジョンに仲間が増えた。
「あ、そうそう、君のお父さんから伝言だ」
本当にこいつは何者なのだろう?
父からの伝言は、「その内、挨拶に行くからパンツ洗って待ってろ愛息子」だった。
わけわからん変態臭しかしない。
だいたい俺、褌派だし。
この日から、温泉地に妖精が棲むようになった。オープンした暁にはこき使ってやろうと思っていたのに、のらりくらりと躱され、働きたくないでござる病のやつとの付き合い方に悩むことになる。
ボランティアとは何だったのか。
そして、紳士とは……。
──────────────
カーディスはSFさんちのこです。出張に来てくれました。ありがとう。でも、だいぶ自前にカスタマイズしてしまいました。喋り方とか、変態臭を醸し出してしまった。ごめんなさい。
本来のカーディスさんの活躍を見たい人はSFさん(@SF30844166)のBL小説、「Changeling」を読んでね!
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