22 / 119
ゆるっとダンジョン構築編
22、鬼だって風邪引く
しおりを挟む
湖から上がって来た紫藻スライムに思わず抱きついた。
おおおお、ぷよんぷよんボディだあ。俺の顔と上半身が埋まった。紫藻スラはけっこうでかいのだ。ウォータークッションみたいで気持ちがいい。
ただ、冷たいな。今、水の中から出たばかりだからかな。
「うぇっきし!」
くしゃみ出た。鼻水も。そういえば背筋がゾゾゾってしたんだった。肩も冷える。風邪引く前に帰ろう。
藻スラ卵ひと掬い分だけ持って、鬼ヶ城へ帰った。
そして夜、案の定、風邪を引いた俺。
「ううう、さびぃ」
「あらあら大変大変、シオちゃんが、シオちゃんが、こういう時はどうするんだっけ? あ、頭を冷やすのよね」
熱が出てしまった俺を前に、うろたえまくるマザーに申し訳なさが募る。人間だった頃の記憶があやふやだと言っていたけれど、何か局面に立てば自ずと思い出してくるものらしい。
俺を寝かせたら、テキパキと桶に水を汲んでタオルを冷やし、おでこに乗せてくれる。氷枕と氷嚢も作ってくれた。
これは嬉しい。
ひと眠りしようとしたところでバタバタと誰か駆けてくる音が廊下に響く。うるさいなあ。
「シッオさーん! 魔力給餌お願いしまーす!」
元気よく強請ってくるあいつがすごくウザイ。今日はもう魔力給餌しただろうが。
「これでも食らえ」
青藻スライムの卵を赤鬼に食わせる。
「うおっ、これ、うま……!」
みるみる顔を輝かせ、もう一個、もう一個と強請るお前がやっぱりウザイ。
「地底湖にいっぱい浮いてるから好きなだけ食え」
「マジすか。色んな色があるんすね。りょか。行ってきます!」
藻スラ卵の説明をし、赤鬼なら冷たい水も平気だろう風邪なんぞ引くまいと湖に浮いている卵の全回収を任せ、俺はやっと目を閉じる。
傍にはマザーの気配。
風邪は病気平癒効果のある緑藻スライムの卵を食べれば治るだろうけど、マザーの看病には代えがたい。
これまでは病気になったって親身に世話してくれる人はいなかった。施設の職員が確かに面倒は見てくれてはいたけれど、それは仕事の範疇だから。肉親からの無償の愛を感じたのは今が生まれて初めての経験だ。
なぜだろう……心がくすぐったくなるものなんだな……。
病気に罹った心細さを埋めてくれるマザーのぬくもりを感じながら、この日は意識を落とした。
翌朝の食事、マザー特製お粥さんが物凄くうまかった。こんなに良い思いが出来るのなら、今後も軽い病気程度で貴重な藻スラ卵に頼るのは控えようと思った。
風邪が治った俺は早速働いた。初行動で貰える魔天卵の回収をしたのだ。
なぜか風邪で伏していた間も魔天卵が貰えていたので、何に対しての魔天卵か〈行動一覧〉で履歴を確かめたところ、『風邪で一回休む』という休業手当だったっぽい。
すごろくかよ。
何にせよ、お見舞い金として貰えたわけだからありがたい。五個だけだけど。
魔天卵は、ある程度の数が溜まったら孵化させている。いちいち一個づつ孵化とか面倒だろ。
あと、一気に十個以上孵化させた場合、一つ良いものが出る気がしている。十連ガチャみたいな気分で。魔天卵は腐らないし、溜めておいて損はない。
レア狙うワクワク感も楽しみたい。赤鬼以上のレアは出る気がしないが。ダンジョンレベルが上がれば可能性も有りそうなので、やっぱりもっと冒険者が来て欲しいと、今度は〈日課トライ〉である『壁の補強工事をしよう』と『ダンジョンを拡張しよう』をやってみることにした。
まだこの世界に来て数週間だけど、着実にチャワードの手の平で踊らされているよな俺。
まあ、楽しいからいいや。
おおおお、ぷよんぷよんボディだあ。俺の顔と上半身が埋まった。紫藻スラはけっこうでかいのだ。ウォータークッションみたいで気持ちがいい。
ただ、冷たいな。今、水の中から出たばかりだからかな。
「うぇっきし!」
くしゃみ出た。鼻水も。そういえば背筋がゾゾゾってしたんだった。肩も冷える。風邪引く前に帰ろう。
藻スラ卵ひと掬い分だけ持って、鬼ヶ城へ帰った。
そして夜、案の定、風邪を引いた俺。
「ううう、さびぃ」
「あらあら大変大変、シオちゃんが、シオちゃんが、こういう時はどうするんだっけ? あ、頭を冷やすのよね」
熱が出てしまった俺を前に、うろたえまくるマザーに申し訳なさが募る。人間だった頃の記憶があやふやだと言っていたけれど、何か局面に立てば自ずと思い出してくるものらしい。
俺を寝かせたら、テキパキと桶に水を汲んでタオルを冷やし、おでこに乗せてくれる。氷枕と氷嚢も作ってくれた。
これは嬉しい。
ひと眠りしようとしたところでバタバタと誰か駆けてくる音が廊下に響く。うるさいなあ。
「シッオさーん! 魔力給餌お願いしまーす!」
元気よく強請ってくるあいつがすごくウザイ。今日はもう魔力給餌しただろうが。
「これでも食らえ」
青藻スライムの卵を赤鬼に食わせる。
「うおっ、これ、うま……!」
みるみる顔を輝かせ、もう一個、もう一個と強請るお前がやっぱりウザイ。
「地底湖にいっぱい浮いてるから好きなだけ食え」
「マジすか。色んな色があるんすね。りょか。行ってきます!」
藻スラ卵の説明をし、赤鬼なら冷たい水も平気だろう風邪なんぞ引くまいと湖に浮いている卵の全回収を任せ、俺はやっと目を閉じる。
傍にはマザーの気配。
風邪は病気平癒効果のある緑藻スライムの卵を食べれば治るだろうけど、マザーの看病には代えがたい。
これまでは病気になったって親身に世話してくれる人はいなかった。施設の職員が確かに面倒は見てくれてはいたけれど、それは仕事の範疇だから。肉親からの無償の愛を感じたのは今が生まれて初めての経験だ。
なぜだろう……心がくすぐったくなるものなんだな……。
病気に罹った心細さを埋めてくれるマザーのぬくもりを感じながら、この日は意識を落とした。
翌朝の食事、マザー特製お粥さんが物凄くうまかった。こんなに良い思いが出来るのなら、今後も軽い病気程度で貴重な藻スラ卵に頼るのは控えようと思った。
風邪が治った俺は早速働いた。初行動で貰える魔天卵の回収をしたのだ。
なぜか風邪で伏していた間も魔天卵が貰えていたので、何に対しての魔天卵か〈行動一覧〉で履歴を確かめたところ、『風邪で一回休む』という休業手当だったっぽい。
すごろくかよ。
何にせよ、お見舞い金として貰えたわけだからありがたい。五個だけだけど。
魔天卵は、ある程度の数が溜まったら孵化させている。いちいち一個づつ孵化とか面倒だろ。
あと、一気に十個以上孵化させた場合、一つ良いものが出る気がしている。十連ガチャみたいな気分で。魔天卵は腐らないし、溜めておいて損はない。
レア狙うワクワク感も楽しみたい。赤鬼以上のレアは出る気がしないが。ダンジョンレベルが上がれば可能性も有りそうなので、やっぱりもっと冒険者が来て欲しいと、今度は〈日課トライ〉である『壁の補強工事をしよう』と『ダンジョンを拡張しよう』をやってみることにした。
まだこの世界に来て数週間だけど、着実にチャワードの手の平で踊らされているよな俺。
まあ、楽しいからいいや。
1
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる