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ゆるっとダンジョン構築編
21、漂って産卵
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マザー手作りの弁当を食す。
最初は歪な塩むすびしか作れなかったマザーだけど、今日のおむすびは真ん丸で、しっかりずっしりと握られている。中の具は梅干しおかかチーズと昆布の佃煮。お出汁がふわりと効いて、しょっぱ過ぎず良い塩梅だ。
成人男性の拳ほどの大きさのおむすびにかじりついていたら、湖が光り出したのに気づいた。
湖を覗き込む。
光っているのは湖の中を漂う何か小さな物体だ。
「何だこれ、浮いてるの……藻スラじゃねえな、もっと小さい……」
五色の藻スラは相変わらず水中を浮遊していて、その小さな物体を生み出している。
藻スラの体からポコンと小さな物体が膨らんだと思ったら、それが水中にふわんと漂い出す。
直ぐまた小さな物体は生み出され水中へと放たれるその様は、まるで魚類等の産卵を思い浮かばせる。
「藻スラ出産してんの?」
赤藻スラは赤い浮遊物体を、青藻スラは青いの、黄藻スラは黄色の、緑藻スラは緑、紫藻スラはもちろん紫色の、卵を水中に排出している光景。
よく見たら卵が光っているのではなくて、藻スラ自体が光輝いているんだな。ポコポコと卵を生み出す度に光っているから、その光が水中で乱反射して卵が光輝いているように見える。
無数の小さな物体も、集まればそれは星屑のようで、宙に広がる天の川みたいに、湖の中で幻想的な光景を作り出していた。
「うおぉ、すげえ。こういうの、どっかで観た。テレビだったかなあ。珊瑚礁の出産シーンだ!」
そうだそうそう、思い出した。よいこの教育テレビあたりで観たことがある。珊瑚が卵産むやつ。
珊瑚って生き物なんだってところから驚いた覚えがある。更に卵まで生まれてしまったら、あいつら無機物だとは到底思えない。
何億という数の卵を産むけど、そこから立派な珊瑚礁になれるのはほんの一握りなんだそうだ。海の世界の生存競争パネェわ。
そんなことを思いながら施設の定番おやつである鬼饅頭を食いつつ観た珊瑚礁の出産シーンと、目の前で起こっている藻スラたちの産卵シーンは、とてもよく似ていた。
しばらく水中を漂った藻スラ卵は水面に浮く。これなら俺でも手で掬えるぞ。水は変わらず凍りそうなくらい冷たいが、我慢だ。
「うおぉぉ、つ、つめ、冷たいいいい!」
叫びながら卵回収。おむすびを包んでいた笹の葉に乗せる。ぷるんぷるんぷるるん、色とりどりのタピオカみたいで美味しそう。
黒い半透明の画面を開いて説明を求めてみる。〈地図〉の画面で俺のいる場所へピンチしてズーム。Google地図のように今居る場所が映った。
画面上の藻スライムの卵をタップ。
「えーと、『藻スライムの卵:甘くて美味しい』……じゃねえわ!」
美味しいしか言えんのかコイツ! ムカついてダブルタップしまくっていたら説明が二重三重にと飛び出した。
へ? こんな単純ことで説明が増えるとは思わなかったぞ。
『藻スライムの卵:マンドラゴラと魔クリスタルを食べた藻スライムが生み出す卵のこと』
いつの間にマンドラゴラ食ってたんだろこいつら……。
『藻スライムの卵:夏のある一定時期に一回しか産まない』
珍しい産卵シーンだったんだな。魔クリスタルにだって限りがあるし、次に同じ光景に出逢えるのは来年の夏だろうか。それまでに今回で減ってしまった魔クリスタルが戻ったらだけど。
『藻スライムの卵:幼生ではない』
赤ちゃんは入っていないのか。そりゃそうか、スライムは分裂で増殖するものな。
『赤藻スライムの卵:食べると体力増強効果が望める』
「お、ピンポイントで赤い卵のところタップしたら別説明が出たぞ」
『青藻スライムの卵:食べると魔力増量効果が望める』
魔力を……もしかしてこれ赤鬼に食べさせたらいいんじゃ?
『黄藻スライムの卵:食べると消毒解呪効果が望める』
消毒? 単語の上をタップしてみる。
『消毒解呪効果:毒に侵されている場合は解毒を、呪いにかかっている場合は解呪する』
「なるほど助かるな。医者のいない島だからなここは」
『緑藻スライムの卵:食べると病気平癒効果が望める』
更なる医者要らず。ありがたやありがたや。病気になったらどうしようと思っていたところだ。置き薬としてとっておこう。
『紫藻スライムの卵:食べると傷痍復元効果が望める』
傷痍復元って……傷を癒すだけではなくて?
難しそうでいて含みのある言葉を訝しみ、そこをタップ。
『傷痍復元効果:傷を完全に治し、欠損部分を再生する』
すごいのキタ!!!!
これは、これは、ゲームでいうポーション、万能薬! エリクサーは不老不死薬だったっけか? そこまではいかないにしても、完全回復薬じゃないか!
「すごいなお前!」
最初は歪な塩むすびしか作れなかったマザーだけど、今日のおむすびは真ん丸で、しっかりずっしりと握られている。中の具は梅干しおかかチーズと昆布の佃煮。お出汁がふわりと効いて、しょっぱ過ぎず良い塩梅だ。
成人男性の拳ほどの大きさのおむすびにかじりついていたら、湖が光り出したのに気づいた。
湖を覗き込む。
光っているのは湖の中を漂う何か小さな物体だ。
「何だこれ、浮いてるの……藻スラじゃねえな、もっと小さい……」
五色の藻スラは相変わらず水中を浮遊していて、その小さな物体を生み出している。
藻スラの体からポコンと小さな物体が膨らんだと思ったら、それが水中にふわんと漂い出す。
直ぐまた小さな物体は生み出され水中へと放たれるその様は、まるで魚類等の産卵を思い浮かばせる。
「藻スラ出産してんの?」
赤藻スラは赤い浮遊物体を、青藻スラは青いの、黄藻スラは黄色の、緑藻スラは緑、紫藻スラはもちろん紫色の、卵を水中に排出している光景。
よく見たら卵が光っているのではなくて、藻スラ自体が光輝いているんだな。ポコポコと卵を生み出す度に光っているから、その光が水中で乱反射して卵が光輝いているように見える。
無数の小さな物体も、集まればそれは星屑のようで、宙に広がる天の川みたいに、湖の中で幻想的な光景を作り出していた。
「うおぉ、すげえ。こういうの、どっかで観た。テレビだったかなあ。珊瑚礁の出産シーンだ!」
そうだそうそう、思い出した。よいこの教育テレビあたりで観たことがある。珊瑚が卵産むやつ。
珊瑚って生き物なんだってところから驚いた覚えがある。更に卵まで生まれてしまったら、あいつら無機物だとは到底思えない。
何億という数の卵を産むけど、そこから立派な珊瑚礁になれるのはほんの一握りなんだそうだ。海の世界の生存競争パネェわ。
そんなことを思いながら施設の定番おやつである鬼饅頭を食いつつ観た珊瑚礁の出産シーンと、目の前で起こっている藻スラたちの産卵シーンは、とてもよく似ていた。
しばらく水中を漂った藻スラ卵は水面に浮く。これなら俺でも手で掬えるぞ。水は変わらず凍りそうなくらい冷たいが、我慢だ。
「うおぉぉ、つ、つめ、冷たいいいい!」
叫びながら卵回収。おむすびを包んでいた笹の葉に乗せる。ぷるんぷるんぷるるん、色とりどりのタピオカみたいで美味しそう。
黒い半透明の画面を開いて説明を求めてみる。〈地図〉の画面で俺のいる場所へピンチしてズーム。Google地図のように今居る場所が映った。
画面上の藻スライムの卵をタップ。
「えーと、『藻スライムの卵:甘くて美味しい』……じゃねえわ!」
美味しいしか言えんのかコイツ! ムカついてダブルタップしまくっていたら説明が二重三重にと飛び出した。
へ? こんな単純ことで説明が増えるとは思わなかったぞ。
『藻スライムの卵:マンドラゴラと魔クリスタルを食べた藻スライムが生み出す卵のこと』
いつの間にマンドラゴラ食ってたんだろこいつら……。
『藻スライムの卵:夏のある一定時期に一回しか産まない』
珍しい産卵シーンだったんだな。魔クリスタルにだって限りがあるし、次に同じ光景に出逢えるのは来年の夏だろうか。それまでに今回で減ってしまった魔クリスタルが戻ったらだけど。
『藻スライムの卵:幼生ではない』
赤ちゃんは入っていないのか。そりゃそうか、スライムは分裂で増殖するものな。
『赤藻スライムの卵:食べると体力増強効果が望める』
「お、ピンポイントで赤い卵のところタップしたら別説明が出たぞ」
『青藻スライムの卵:食べると魔力増量効果が望める』
魔力を……もしかしてこれ赤鬼に食べさせたらいいんじゃ?
『黄藻スライムの卵:食べると消毒解呪効果が望める』
消毒? 単語の上をタップしてみる。
『消毒解呪効果:毒に侵されている場合は解毒を、呪いにかかっている場合は解呪する』
「なるほど助かるな。医者のいない島だからなここは」
『緑藻スライムの卵:食べると病気平癒効果が望める』
更なる医者要らず。ありがたやありがたや。病気になったらどうしようと思っていたところだ。置き薬としてとっておこう。
『紫藻スライムの卵:食べると傷痍復元効果が望める』
傷痍復元って……傷を癒すだけではなくて?
難しそうでいて含みのある言葉を訝しみ、そこをタップ。
『傷痍復元効果:傷を完全に治し、欠損部分を再生する』
すごいのキタ!!!!
これは、これは、ゲームでいうポーション、万能薬! エリクサーは不老不死薬だったっけか? そこまではいかないにしても、完全回復薬じゃないか!
「すごいなお前!」
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