ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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ゆるっとダンジョン構築編

19、嫁くれっす赤鬼

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 今日も魔天卵を回収する。

 初めて起こした行動によって魔天卵はどこかに現れるが、簡単な行動で出現した卵の中身はショボイ。

 黒き魔卵からはやたら野球道具が出るのは言わずもがな。最近は健康器具に特化してきた。フィットネスバイク・ぶら下がり健康器・ステッパー・足つぼマッサージ・美顔ローラーと、美容品の類も出て来るようになった。魔界公爵はどこへ向かっているのか謎。

 白き天卵からは木の板・煉瓦・屋根瓦など、やたら建材が出て来るようになった。建材は集めて動物たちの住む場所を作ってあげようと思う。

 〈日課トライ〉というのがあって、「一日で魔天卵○個集める」とか「一日で装飾を○つ買う」という指示に従った行動で、また卵が貰えるのだ。これで貰った天卵からは小動物が出て来る。
 これまでにも、小リス、小ウサギ、子猫にテンなど、やたら小さくて可愛い生き物をゲットし、今も庭を駆け回っている。

 野放し状態なんだよね。飼育小屋を作ってやらないとな。

 他にも〈日課トライ〉で貰えるのは、魔卵から【小鬼 ゴブリン】【魔野草 マンドラゴラ】【宝箱 ミミック】【縄 ローパー】といったモンスターや罠が。
 天卵からは先程も述べた小動物、草木花や鳥に昆虫。珍しいところで【空馬 レベル1】など、メルヘンな生き物が出たのは嬉しかった。

 さすがにもう赤鬼や櫓といったレアなものは出ないらしい。あれはやはり初回特典で、初めて天魔卵を割った時のみの、特別なものだったようだ。

「シオさーん!」

 赤鬼がこっち来る。このダンジョンで現在最高級品質の男が、両手ブンブン振って超ご機嫌笑顔で近づいてくる。

「ぎゃ、ぶ……!」

 いきなり俺に接吻するとはなにごとだァァ!

「美味しかったす。ごち☆」

 この変態がああぁ魔力給餌の為とはいえ、こうも毎日毎日男同士で口を合わせる(文字通り)なんてキモイこと、何故せにゃならんのか赤鬼め。
 悪びれなく、お茶目な態度で誤魔化しやがって!
 俺は毎日の給餌で間違いなく精神を擦り減らされているし、赤鬼、お前だって食欲が無かったら男とキスなんか嫌だろうがぁ! ということを叫んでみたらば。

「シオさん可愛いから平気っすね」

 超笑顔でサムズアップされた。解せん。

「でも、それはそれとして、やっぱ女の子の方がいい匂いするし孕ませたいって思いまっす。あ、嫁ください。雇い主として嫁の世話くらいして欲しいっす」

「アホタレェ! 嫁くらい自分で探して来いやぁ!」
「この職場環境でそれは無理っす。はよ女の子モンスターゲットしてくれっす」

 それが出来たら苦労せんのじゃわい。〈日課トライ〉で出るモンスターは低級なのばかりだし。赤鬼と釣り合いそうなのは、高級モンスター以上の強いやつだろう。

「いっそ女の子モンスターを雇うか……むぅ、高い」

 最初に目に付いた高級モンスター、アルラウネちゃんなんか金一万枚もする。無理だ。ほぼ全財産じゃねえか。

「お前の嫁は高すぎる。そうだ、今いる低級モンスターを進化させれば……」

 アルラウネはマンドラゴラの進化系だと説明書きがあるのを読んで、そう提案したのだけど。

「進化にどんだけ時間かかると思ってんすか。俺は今直ぐ欲しいんすよ」

 却下された。

「くぅ……じゃあ、天魔卵で激レア当たるの待ってくれ」

「進化より時間かかりそうっすね。ここは地道にダンジョンレベル上げるしかないっすかねえ」

 それしかないな。ダンジョンレベル上がるってことは天魔卵のレベルも上がるってことだと思うから、レアが出やすいだろう。その頃にはお金も貯まっているだろうし、赤鬼好みの女の子モンスターも買えそうだ。

 嫁を買う……なんか非人道的な響きだ。ダンジョンのシステム的には普通のことなんだけどさ。

「そんじゃシオさん、また明日も魔力給餌よろしくっす☆」

 はっ、その問題があった。

 気づいた時には赤鬼はトレーニングをしに櫓の方へと行ってしまっていた。櫓の倉庫には健康器具が一式揃っているから、そこはもうトレーニングルームになっているのだ。

 今、ダンジョン内には冒険者がいなくて赤鬼は暇鬼である。

 このダンジョンがある場所はけっこうなド田舎。というより絶海の孤島。来るだけで大冒険必死。こんな辺境の地なのに、前にきた冒険者たちはよく来てくれたなとは思うけど、たぶん彼らは新しいダンジョンの下見を命じられて来た人たちなのだろう。おそらく、冒険野郎たちの組合組織や国から、手当やら補償があったに違いない。

 他にも何人かの冒険者がやって来たけど、彼らからも本格的にダンジョン攻略しようとか、ダンジョン破壊しようなんていう意思は感じられなかった。

 まだまだ、このダンジョンは出来立てほやほや、壊す価値もない最下級ダンジョンという人間からの認識なのだ。
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