ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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ゆるっとダンジョン構築編

9、パンチしておやすむ

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「家って建築中? 俺の部屋つくってくれっすよ」

 だから赤鬼、お前は何でそんなにフレンドリーでマイペースなんだってばよ。

「お前の家はナイ! 部屋欲しかったら働けええいい」

「了解っす。ダンジョンに来る冒険者ぶち殺せばいいんすよね」

「ああああ軽く殺人予告すんなあぁ鬼だからか、鬼にこんなこと言っても仕方ないかもだけど、ダンジョンに来るのはお客様だから丁重におもてなしすんだ!」

「了解っす。で、ダンジョンは?」

 はっ。まだダンジョン創ってなかった。
 城を築城して、のんびり桜餅食っている場合じゃねえ。卵割っている場合でもねえ。

 黒画面を開いて地図をみる。
 地図の中心に鬼ヶ城・和風庭園・物置に物見櫓。その周り、随分と大きな空間が広がり、岩壁に当たったところで空間が途切れている。

 ダンジョンと書かれた矢印が出た。矢印をタップ。

「まだなにもない。ここにあなーたのだんじょんつくりくさい」と、明らかにチャワードからのおかしな日本語メッセージが。
 再度イラッとする。

「シオさん、画面を殴っても相手にダメージないっすよ」

 んなこたぁわかっとるわい。それでもパンチしなきゃ、やってられんのだ。パンチパンチ黒鬼パンチ。画面の向こうにチャワードのヘラヘラ笑った顔があるようでムカつくぜパンチ。

 ひとしきりノーダメージな画面を殴ってからダンジョン建造に取り掛かる。
 ダンジョンは一面毎に設置するものらしい。そのたった一面を買うだけで金一万枚が必要。今の俺の全財産だよ。

「さすがにここで全財産使い果たすのは嫌だ」
「そうね。堅実に儲けて、人気ダンジョンにしましょうね。シオちゃん」
「う……」

 マザーがニコニコ楽しそうに微笑んで、名札にある名前を呼ぶ。

 心が痛くなった。俺には本当の名前があるはずなんだ。おそらく両親が付けてくれたはずの。マザーが実母なら名前つけた本人のはずなのに、どうして、この名札の名前で呼ぶんだ?

 これも出生の秘密と同様、聞きづらくて、口を噤んでしまう俺とってもチキン。
 下手な倒置法を使い心の中で呟いても虚しいだけ……。

 よし、ダンジョンでも創ろうっと。

 ダンジョンを創る。一言ならば簡単な作業。実際にやるとなると、なかなか考えさせられる。

 いっぱい考えた結果、思考停止に陥ってしまった。考えても考えても考えがまとまらないのだ。

「というわけで、俺は寝る。寝ながら考える。ひとやすみひとやすみ」
「おやすみ~シオちゃん」

 再び、ちゃぶ台の食卓で桜餅を食べるマザーは快く手を振って俺を見送ってくれた。
 赤鬼も、ちゃっかり座布団で胡坐かいて桜餅を頬張っている。なんだ、お前も餡子好きか。

 俺は考え事をする時、寝てしまう癖があるのだ。
 頭の中で何か纏めようとするだろ。目を瞑るだろ。寝ちゃうんだよな。でもさ、起きた時はスッキリして考え事もまとまっていることが多いから、俺はこの現象を「一休さんのひとやすみ」と呼んでいる。
 一休さんは頓智を解くのにポクポクチーンするだろ。あれだ。俺もそれなんだ。

 説明をあれそれだけで済ませようとするところが、もう眠たい証拠。

 時間的にも、もう夜な気がする。外は【空セット 快晴】のおかげで昼間のように明るいから体感だけど。

 安眠部屋をつくるため、黒画面を開いて必要な物を買い漁る。安眠部屋こと俺の部屋は三階につくった。隣にはマザーの部屋。ついでに赤鬼の部屋も適当に。

 部屋の間は襖で区切る。廊下側は障子だ。床には畳を敷く。
 六畳一間、今日からここが俺の安眠部屋。

【快適睡眠セット】を購入。

 布団と蕎麦殻枕、それから長細い抱き枕。替えの敷布に布団カバーまで付いて大変お得な銅百枚。消費税が無いのが嬉しいね。
 付属の寝間着は浴衣だった。浴衣を着て、畳に布団を敷いて、いざ、おやすみぃ。

 ZZZZ​──────。
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