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ゆるっとダンジョン構築編
8、イケ鬼でてシオになる
しおりを挟むわくわく気分で地図を眺め、そうだ実際にどう配置されているのか、この目で確かめようと顔を上げた時、何かでかくて赤い、人っぽい者が視界に映った。
「へ? 誰?」
「あらあら、あれはレアよ。まさか【赤鬼 イケメン】が出るなんて…!」
赤いなと思ったらモンスター赤鬼だとは。
マザーの喜びようからして、相当な激レア感……!
なんとなく黒画面を向けたら、ステータス出た。
≪ステータス≫
――――――――――――――――
赤鬼【イケメン】
種族:鬼人族
職業:ダンジョン派遣モンスター
能力:鬼能力最高位値
称号:魔界公爵の息子
――――――――――――――――
赤鬼というだけあって皮膚は赤みを帯び髪も赤。額からクリスタルな角が二本突き出ている。
……あれ? あの鬼角かっこよくない? 俺の鬼角は黒色なのだけど、あそこまでスタイリッシュに前衛的でキラキラともシュッともしていないよ。この差なに?
劣等感で鼻白む俺。すん。
おまけに【赤鬼 イケメン】は背が高い。二メートル越えているよな完全に。そして引き締まって均整の取れたボディ。やだこいつ肉体までイケメン。股間のモノもご立派。フルチンだ。
赤鬼が真っ裸なことに気づいた俺、益々に鼻白む。
マザーは「きゃっ」て目を両手で隠しながらも指の間からガッツリ覗いている。
マザー……ファーザーのとでも比べているのかなあ。つい、下世話な想像をしてしまう。
そういや俺の父は、どこの誰なんだろうな?
「おい、お前、服着ろ」
マザーが見てるだろ。女性の前で裸族はいただけない。
「服持ってないです」と、赤鬼。
「はあ? 服持ってねえって、鬼の民族は非文明的なのか」
「いえ、普通に文明的に服着て暮らしてましたけど……なんで、ここに来たら脱げているのでしょう?」
知るかよ。そういう仕様なんだよ多分な。
「そうだ、丁度いいのがある。これ着ろよ」
渡したのは野球のユニフォームだ。物置に収納されているが、黒画面を開いて所持品のところを探したら、あったのだ。
服の画像をタップしたら手元に現れた。縞模様で格好いいデザインのユニフォームだ。
ユニフォームを受け取った赤鬼はおもむろにそれを着た。後ろ向くとか恥じらうとか、ないらしい。
着終わった立ち姿もイケメンだ。
胸前を開襟して着るんじゃない。無造作に前髪を掻き揚げる仕草も、すんな。これだからイケメンは……。
また鼻白みそうになったけど、気を取り直して自己紹介する。
「俺、塩板。よろしくな」
「じゃ、シオさんっすね」
さっきより気安くなってんなお前。ユニフォーム着たからだろうか。
なぜかシオさん呼ばわりされるし。それ名前じゃねえし。
そう、俺の苗字は塩板。名前は思い出せない。日本で暮らしていたから戸籍上の名前があったはずだけど、思い出せない。
おそらく、チャワードの野郎に名前を奪われた所為じゃないかと推測している。
この世界に来た時、真っ暗闇だった。その闇を晴らす為に「あなーたのなまえもらう」とか言ってただろチャワードあのエセ外人め。名前を奪う妖怪か。お前は湯婆婆かよ。
そう思った時だ。「あなーたのなまーえはシオにけってーい」と、あの呑気な声が聞こえたのは────。
「え?」と間抜けな声をさらしてから胸の違和感に気づく。
俺の左胸に『ダンジョン創造主 塩板シオ』と書かれた名札がぶら下がっていた。
「うふあぁぁぁぁ」
「シオさん、ちーっす。俺のことは赤鬼でいいっすよ」
俺の雄叫び無視かーい!
マイペースに挨拶返してくる赤鬼にちょいイラッとする。だって俺一人で頭パニックだ。胸にいきなり名札が現れて名前が塩板シオだあ?! ふっざけんなチャワードォォ!
心の中で叫んでもチャワードは謝りもせず。又、名札を消すこともしてくれなかった。前言撤回する気がないらしい。
俺は塩板シオになった。
ああああああああああ!!!!
両手で頭を挟んで伏臥上体反らしをして叫んだ。後、頭抱えた。
チャワード今度会ったら胸毛も毟ってやる……。
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