ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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ゆるっとダンジョン構築編

4、一分普請して鬼ヶ城

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 豊かな黒髪の清楚系美人。和服を着て、大和撫子な佇まいの女性が、母だと名乗る。

 どういうことだ? 俺の理想の母親像そのものの姿じゃないか────。

「このダンジョンはまだ何も無いけれど、あなたがマスターとなって創造できるの。さあ、まずは暮らしの拠点、ダンジョンマスターのお部屋、ダンマスルームを創りましょう」

 マザーが勝手にチュートリアルを始めた。

 俺の目前に「うわっ、なんだコレ」ブウゥゥンと無機質な音が響いて黒い画面が現れる。画面はゲーム画面でよくみるあれだ。四角い枠で、ちょっと角丸。四隅をファンタジックに装飾された黒半透明の板のようなものが空中に浮いている。

 そこには俺自身のステータスの他、『所持品・購入・装飾・地図・映像』といった大項目が並ぶ。項目全体が光の枠で囲まれていたので、そこを指でタップしたら詳細画面がまたブォォンンと手前に出てきた。

 まるでスマホ画面だなこりゃ……。

 そう思った通り、気になる単語をロングタップすれば説明書きがポップアップし、二本の指でピンチすれば画面を拡大縮小できるようだ。今はチュートリアル中だからか、俺が指で適当に遊んでいても勝手に文字が出てきて、次の操作方法を教えてくれる。文字は日本語だ。知らない異世界語じゃなくてよかった。

 て、あれ? 俺、ちょっと楽しくなってきてないか?

 チュートリアルを進めていくやり方が日本でやっていたオンラインゲームに似ているからか、操作するのが楽しい。

 オンゲーに似たチュートリアルは簡単に終わり、チャワードのハイテンションな文字が続く。

「おつかれ!  そうさおぼえたあなーたは、もうげーむますたーよ!  さっそく、すむいえをえらんでね☆ よい、だんますらいふを☆」

 読んだ途端イラッとしたのは気のせいじゃない、はずだ。

「チュートリアルつくったのお前かいチャワードォォ」

「神様はいつだって私たちを見守っていて下さるのよ」なんて、マザーが両手を組んでお祈りポーズしながら言う。

 その姿はまるで聖母マリアのように神々しい。マザーの場合、元がミラーボールだったからなのか、プリズムな燐光が放たれ後光が差し、普通に眩しい。

 いや、実際には眩しくないのだけど、何かそんな気分なのだ。

 俺はこれまた反射的に目をキュッと瞑りつつも薄目を開けて、買い物する画面をフリック。下の方まで読んでみる。買い物画面は大手通販サイトみたいだ。物品ごとにカテゴリ分け、リスト化されていて、たいへん見やすい。

「買えるものリスト、アイテム……ステージ・建物・インテリア・食事・生活用品……え、モンスター?」
「ダンジョンにはモンスター要るでしょ?」
「そ、そうですね……」

 まるでお味噌汁にはお味噌が必要でしょくらいの気軽さで言われてしまった。

 俺の後ろに立つマザー。俺の肩に手を添えながら、更に意見を述べてくる。

「ここ殺風景でしょ。早いところ我が家を建てて欲しいの」

「そ、そうですね……」

 としか言えない俺。なぜか敬語だ。実の母だと言われても実感が湧いていないからだろう。そこに気安さはない。友達の母ちゃんと話す感覚だな。

「どんな家がいいですか?」

 一緒に住むというのなら、母の意見も取り入れなければならないだろう。母だという実感はまだ湧いてないけど。

 家を買う時は伴侶の意見もきちんと聞いた方がいいと施設長も言っていたからな。住宅ローン組んでやっと一軒家を購入した後に奥さんからぶちぶち文句を言われて辟易していた施設長の言だ。

 元気かなあ。奥さんの尻に敷かれていた施設長。今日も怪獣という名の子供たちの相手をしているのかなあ。

「うふふ、優しい子ね。わたしの意見も聞いてくれるなんて……そうね、あなたの国にある伝統的なお城がいいわ」

「伝統的なお城って…………和城?」

 和城という単語を呟いた途端、画面に「おぅけぇーい☆」の文字。チャワードの気安いメッセージに気を取られている内に、気づいたら周囲で築城が始まっていた。

「はえ?」

 口を、あんぐり開けている間に縄が張り巡らされ、城の石垣や土台が組み上がっていく。

「え、え、ええ、ええええ?」

 更に疑問符を浮かべている束の間で​────基礎工事が完了したみたいだ。

 木の柱が立ち、梁も架けられた。白い壁が出来て、玉虫色の屋根瓦が敷かれる。窓格子を飾る破風飾りも華麗に、天守閣も凛々しく、れっきとした日本風の城がそこに建築されていた。

 この間、約一分。一夜城も真っ青なハイスピード普請だった。

「どうええええええ……!!」
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