ダンジョン鬼ヶ島には変なやつばっかくるぴえん

風巻ユウ

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ゆるっとダンジョン構築編

2、母親に認知されダンジョンもらう

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 歪みの向こうに闇が見える。真暗で何もない世界のようだ。

「こ、ここ、は?」

 見渡しても闇。闇、闇、真暗闇。さっきまで明るい昼間の市役所にいたのに、急に夜になって暗くなるなんてことはない、はずだ。普通に考えて。なのに、なんで暗いんだ。ここは何処だ……?

「ここねーまだ、なにもない。これから、つくってほしいの。おねがい。できる?」

 聞こえた声、さっきの外国人だ。直ぐ傍で声が聞こえるけれど、その姿は見当たらない。
 声は聞こえど姿は見えずって怖いのだけど……。

 しかも暗闇の向こうから「おねがい」と言われてもなあ……正直、困る。あと怖い。俺は意味不明な状況でビクビクするだけ。だってここ真っ暗で、何も無くて、本当に怖い。

「くらいのこわい? なにもないの、こわい? なら、あかりをともそう。ないものから、つくろう。あなーたのなまえもらう。それで、このやみをはらせる」

 え、何を言っているのか一ミリも理解できぬ。

 理解できぬまま頭に疑問符を浮かべた俺の前に、一筋の光の帯が現れた。急になんだ?

 一筋の光、その先を上に辿っていくと光源である物体が浮いていた。物体は丸い。クリスタルのようにピカピカ光っている。ミラーボールみたいだ。お洒落なミラーボール。カラオケ屋でこういうの見たことあるぞ。

「名前を認識しました。塩板……まぁ、あなたが……わたしの息子。やっと逢えましたね……!」

 しゃべったあぁぁ、ミラーボールが喋った……! しかも息子と認知された。俺には母ちゃんいないはずだけんども?!

 俺は児童養護施設育ちだ。赤ん坊の頃から乳児も受け入れてくれる施設に居た。

 両親の話は聞いたことがない。天涯孤独だと思っていた。それが急に……母ちゃんだって? まさか俺は、あの無機質な物体から生まれたとでもいうのか? いやいや、それはないだろ。さすがにそれはない。だって俺、人間。あのミラーボールが何と言おうと俺は人間である。

「にんげん、じゃなーいよ」

 と、この声は青い目した外国人からのものだ。光に炙り出され、その姿を見せたそいつは、青い目に金髪、鷲鼻で揉み上げ太い、どこからどうみても、やっぱりゲルマンかヴァイキングな風貌だった。げんこつ飴を野生の手掴みで食っていたやつそのものってこった。

「俺が人間じゃないって、どういうこった? てか、お前、なんなんだよ。観光客じゃないのかよ。なんで市役所にいたんだ。試食してたんだ。言っとくけど手掴みで物食うの非常識だからな日本じゃ。つか、ここ何処だ。そこのミラーボールも何だ。しゃべるし気味悪い。お前らいったい、何なんだよ……!」

 理解できないことばかりが起こっていたからか、言葉がめちゃくちゃだ。言いながらイライラが募っていく。最終的に八つ当たりした。でかい図体のそいつ、外国人観光客っぽいそいつの腕をぺしぺし叩く。
 腕毛すごいなこいつ。腕毛まで金髪だ。

「あん。ぼうりょくはんたーい。マナーいはん、ごめんなさい。それは、あやまる。ゆるして。でもね、あなーたをさがしてたの。みつけて、うれしかったの。ここに、はやくつれてきたかった。マザーちゃんにもあわせてあげたくて、チャワードがんばった」

「チャワード? それがお前の名前か?」

「そう。チャワード」

 にこっと笑う外国人もといチャワードは、とても愛嬌のある顔だ。怒っていたけど気が削がれるくらいには、いい笑顔をしていた。

 けど、それとこれとは別だ。俺は今起きている状況の説明をチャワードに求めた。
 ミラーボールには話しかけ難い。逆にチャワードには話しかけ易い。大仰な仕草がコミカルな動きに見えるからだろうか。何にせよ親しみやすいキャラだなチャワード。

「チャワード、かみさま。このせかいの、かみさま。あなーたには、ここのダンジョンまかせる」

「ダンジョン? 神様だあ?」

「そう、チャワードかみさま。ここダンジョン。まだなにもないダンジョン。これから、あなーたがつくるダンジョン」

 ここがダンジョンだって? チャワードが神様ってのは突拍子がなさすぎて信じていない。

 取り敢えず、周りを見渡す。何も無い。マザーと呼ばれたミラーボール以外は暗闇だ。

 ダンジョンと聞いて思い出すのは日本のゲームだ。ファンタジーな世界で勇者になって、魔王倒す前にダンジョンでレベル上げするあれだ。RPGってやつだ。

「俺がダンジョンつくるって? 冗談も大概にしろよ。えーと、自称神様? 俺、まだ勤務中なんだ。早く役所に戻してくれ」

「あ、もどる、むり。あなーた、もう、にんげんじゃない。あっちのせかい、にんげんのせかい。モンスターいないでしょ?」

「ああん? なんだよ、その言い方だと、まるで俺がモンスターになったみたいじゃ……」

 その時、気づいた。チャーワードが自身の頭上を指差していることに。

 更にトントンと、指先で叩かれたところに違和感。そこは頭頂部。本来なら髪の毛があり、旋毛があるところだ。毛があるとはいえ、そこは防御力の低い頭の上。トントンされたら頭蓋骨に響く何かが感じ取れるはずだ。けど、それがない。何も響かない。むしろ、そこにある何かに頭皮が守られているような……。

「え、あ、ああああ??」

 頭の上にを手をやった。手指に触れたのは硬い、先が尖がった何かだ。

「何これ何これ何これぇぇええ?!」
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